2020.12.19@恵比寿The Garden Hall

1st ALBUM Release Tour『MATOUSIC』at THANKS ライブレポート

最近ではKinKi Kidsへの楽曲提供などでも注目を集める、ロサンゼルス生まれ京都在住のシンガーソングライター、竹内アンナ。そんな彼女が1stアルバム『MATOUSIC』リリースツアーの追加公演を、12月19日(土)に恵比寿The Garden Hallで行なった。

新型コロナウイルスの猛威が未だ収まらない状況ながら、会場には感染対策を徹底した上でたくさんの観客が詰めかけた。エントランスで素敵なオリジナルマスクが配布されたり、竹内が本番直前の影アナを自ら務めたりと、おもてなしも十分。開演に向けて、こちらの気持ちをいい塩梅に高めてくれる。

開演時刻になると、鈴の音やビートを織り交ぜたSEに乗せ、マイクスタンドにギター、アンプなどがシンプルに置かれたステージへ、竹内アンナが手拍子をしながら元気に登場。そして「手拍子はそのままで」と早速オーディエンスを味方につけ、アコギ弾き語りの『B.M.B』でライブがスタートした。先日行なわれた初の配信ワンマンライブはバンド編成だったが、この日はソロで挑み、またフレッシュに楽しめるのが嬉しい。ボッサ調のアプローチで、まずは恵比寿The Garden Hallをさわやかなムードに満たしてみせた。

「3月から予定していた『MATOUSIC』ツアーの延期・中止を経て、ようやくこの追加公演でアルバムの1つの完成というか、終着点を迎えることができました。今日はみんなでいっしょにライブを作っていけたらいいなと思ってます」と話したあとは、「懐かしい曲を」と竹内が15歳のときに手がけデビューE.Pにも収録されている『Ordinary days』へ。英詞で歌うやわらかなボーカルが映え、アコギのストロークも心地いい。さらに、奔放なギターソロやスキャットでラテンの風を感じさせた『Midnight Step』と、序盤は装飾を少なめに、原点と言える歌とアコギのみで等身大の自分を堂々と見せていく。

ワイルドで痛快なフレーズのイントロを加え、場をグッと温めてから始まったのは、デビュー曲の『ALRIGHT』。ポジティブなメッセージと高揚感あふれるナンバーによって、観客のボルテージがどんどん上がる。その熱気がわかりやすく見て取れるのがすごい。つまり、ライブ運びが抜群にうまいということ。演奏後には、発せない歓声をも込めたような大きな拍手が辺りに鳴り響いた。

エレキギターに持ち替えてブルースの薫りを漂わせながら甘く愛おしいトーンで聴かせた『TEL me』以降は、演奏スタイルがじわじわと変化。『伝えなきゃ、届かなきゃ、君に聞こえなきゃ。』になれば、サンプラーとルーパーを駆使してドラムのビートなどがサウンドに加わり、リズミカルなエレキの音に合わせて、客席のハンドクラップも一段と熱を帯び出す。

「もっと力を貸してほしいので、よかったら立ちませんか?」と呼びかけ、ルーパーでアコギを重ねた『TOKYO NITE』では、ラップパートの途中でギターを急ストップさせてオーディエンスの手拍子だけにしたり、間奏はシンセの音色でダンサブルなノリをもたらしたりと、遊び心もハイブリッド感もたっぷり。4つ打ちのビートがよりエレクトロ色を強めた『SUNKISSed GIRL』でのサンプラー使いはもはやDJさながらで、ちょっとしたダンスまで披露するなど、次々に新しい景色を作り上げてみせた。このライブを通して、竹内アンナの成長の軌跡がしっかりと伝わってくる。

「第一部ラストの曲です」と告げられた『Free! Free! Free!』の頃には、観客のほとんどが座席の前に立って気持ちよさそうに身体を揺らしている。ラップを混ぜて歌い、ギターをスウィンギーに弾き倒すのみならず、自分の声にエフェクトをかけてループさせたり、サンプラーを自在に使いこなしたりしながら楽しく展開するステージングは、まさに新世代のエンタテイナー。その凄みにうっとり見惚れるうち、第一部があっという間に終わっていた。

空気の入れ替えも兼ねた20分間のインターバルを経て、第二部が開幕。衣装を着替えた竹内があらためて挨拶したところで、彼女のツアーメンバーやレコーディングなどでおなじみの谷川正憲(UNCHAIN)をスペシャルゲストとして舞台に呼び込む。そして、同郷の京都の話題を含めて和みトークを聞かせたのち、谷川がソロで演奏する流れへ。竹内の未来へ捧ぐような曲でもある『You & I』は、伸びやかで美しいハイトーンボイスと“君という遥かな希望 僕というちっぽけな場所”といった歌詞が沁みる、アコギの弾き語りながら圧倒的なパフォーマンスで、会場のファンを大いに魅了した。

「明日は自動車免許の卒検があって、あさっては大学の卒論の締め切りがあるんですけど、できる気がしてきました!」と、竹内も自身の課題を打ち明けつつ、谷川のステージを絶賛。続いてもUNCHAINの楽曲で、竹内がリクエストしたブラックミュージック風味あふれる『Underground Love』を今度はセッションで聴かせ、2人の素晴らしいハーモニーとアコギワークにしばし時を忘れて酔いしれる。

ハンドマイクでほろ苦くロマンティックに歌った『If you and I were,』、カントリータッチのアレンジも効いていたラブソング『Striking gold』と、以降は竹内のナンバーに戻り、谷川のアコギ&コーラスと共に、最新作となる4th EP『at FOUR』の収録曲も演奏されていく。

アコギのファンキーな弾きっぷりも絶妙だった『RIDE ON WEEKEND』で谷川がステージを降りると、終盤は竹内が再びソロでじっくりと新曲を届けた。「2人だからできることがあって、1人だからできることもあります」という言葉どおり、すぐさまガラッと異なる雰囲気で楽しませてくれるあたりが頼もしい。

「今年は特にいろいろなことがあって、ホンマに時間の流れが早くて。だからこそ、進んだり止まったりしたし、壁にぶつかってしまったりもしたけれど、私は好きなものにいっぱい出会えた1年で、落ち込んだときにそれがいい意味での逃げ場所になってくれたというか。“これがあれば、私は大丈夫や”って存在がたくさんできたのは、自分にとってすごく財産やったなと思います。この瞬間にも、みんなのおかげで出会えました。ありがとう」と、2020年を振り返りつつ、ファンに感謝を伝える竹内。

「私の音楽がみんなの背中をドーンと押すことはできんかもしれんけど、お守りやおまじないみたいな存在であれたらいいなと思ってます。みんなもきっといろんな“好き”があるはずやから、その好きをこれからも信じて。好きなものであふれる素敵な毎日を過ごせますように」――そんな言葉に続けて、寄り添う感じでやさしく歌われた『Love Your Love』。“信じた「好き」はちゃんと本物だから 大丈夫”“誰かの「好き」をあなたも否定したりはしないでね”“ほら今だってこの歌に 出会ってくれてありがとう”のラインが心地よく胸を打つ。本編ラストは高校時代に作った『Sunny day』を、陽だまりにも似た温かい歌とギターで聴かせて、場内がこの日いちばんの拍手で沸いた。

大きいアンコールに応えての1曲目は、TLCのカバー『No Scrubs』。ラップに初挑戦した楽曲を流暢な英詞で届けたあとは、谷川をあらためて迎え入れ、自分らしく生きることを清々しく綴った『I My Me Myself』を披露。コール&レスポンスの部分では「心の中でいっしょに歌ってください!」と誘いかけ、会場全体をハッピーな空気で包み込んだ。

「明日何があるかわからないからこそ、今いっぱいみんなに伝えたいと思います。今日は来てくれてホンマにホンマにホンマに……ありがとうございました!」と、この日の感謝をもう一度告げた竹内。最後の最後はコロナの被害が甚大な中、いっそう心に響く『ペチュニアの花』を1人で味わい深く奏で、記憶に残るツアーを締めくくった。

2時間強の熱演を通して、聴き手が日常で身にまとえるような音楽“MATOUSIC”を見事に表現した竹内アンナ。ツアーを無事完走し、次にやってみたいことがきっとたくさん出てきているはずだから、来年の動きにも注目していきたいと思う。

取材・文:田山雄士
ライブ撮影:ヤマダマサヒロ
機材撮影:小野寺将也

《SET LIST》
  1. <一部>
  2. 1.B.M.B
  3. 2.Ordinary days
  4. 3.Midnight Step
  5. 4.ALRIGHT
  6. 5.TEL me
  7. 6.伝えなきゃ、届かなきゃ、君に聞こえなきゃ。
  8. 7.TOKYO NITE
  9. 8.SUNKISSed GIRL
  10. 9.Free! Free! Free!
  11. <二部>
  12. 1.You & I
  13. 2.Underground Love
  14. 3.If you and I were,
  15. 4.Striking gold
  16. 5.RIDE ON WEEKEND
  17. 6.+imagination
  18. 7.Love Your Love
  19. 8.Sunny day
  20. <ENCORE>
  21. 1.No Scrubs(TLC Cover)
  22. 2.I My Me Myself
  23. 3.ペチュニアの花
竹内アンナ

初のビルボードライブツアーが決定!

デビュー5周年を迎えた竹内アンナが自身初のビルボードライブツアーが決定!
東京、大阪、横浜の3ヵ所を巡るこのツアー、バックバンドはネオソウルやジャズをルーツとしたインターナショナルなグループ「パジャマで海なんかいかない」ことPAJAUMIが務めます。

<竹内アンナ Billboard Live Tour 2024>
2024/3/1(金) ビルボードライブ東京
2024/3/8(金) ビルボードライブ大阪
2024/3/20(水・祝) ビルボードライブ横浜

チケット情報等詳細はこちら
https://takeuchianna.com/news/#104709


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