2020.10.13 コンセプトワンマンライブ「かたちのないばけもの」ライブレポート

四畳半の世界から心が蘇生する物語。

2ndフルアルバム『ANATOMIES』を手に2月より始まったHalo at 四畳半の全国ツアー「Halo at 四畳半 ワンマンツアー2020 “無垢なる祈りの宿し方”」が、初日の札幌公演以降、すべて中止に。ツアーのファイナル公演として発表。その後、振替公演日として告知した10月13日(火)Zepp DiverCityでの公演を、彼らは形を変え、コンセプトワンマンライブ「かたちのないばけもの」と題し、無観客&生配信ライブとして行うと発表した。

この日は、「渡井翔汰(Vo/Gu)がコロナ禍の中で書き下ろした小説「かたちのないばけもの」を基にライブと映像を交えて展開していく、この日のためだけに企画されたスペシャルライブ」(Webより抜粋)になる。事前に「『絵本のような物語性の強い世界観』『生放送ならではの力強いライブ感』を同時に表現する内容」と語っていたように、それがどんな形で描き出されるのか、とても興味深く思えていた。ここからは、当日のライブの模様をお伝えしたい。

画面に映し出されたのは、ガスマスクを装着した姿で椅子に座った渡井翔汰の姿。カメラが彼の動きを追いかける。椅子から立ち上がった渡井翔汰が向かったのは、メンバーたちが待つ舞台の上…。

~第一章~

画面は暗転。カチッカチッと響く時計の音に導かれ、「かたちのないばけもの」の物語を紐解く、序章となるイラスト映像が流れだす。彼が、かたちのないばけものを認識した日からの歩み。隣国にて誕生したばけものが巨大化し、この国に上陸したことを告げるニュース。何時しかそのばけものが猛威を奮い、人の命を奪おうと、彼にはすべて画面の向こうの出来事でしかなかった。だが、彼の身近にもばけものが影響を及ぼしたとき、彼は感じてしまった、本当のばけものは何処に住み着いていたのかを…。

画面は、ライブ映像へと切り替わる。Halo at 四畳半は歌いかけた、「心に棲みついたナラクが こちらを羨んで見つめている」と。躍動する楽曲の上で、彼らは気持ちを馳せるように歌い奏でていた。自分なりの答えを探そうと。いや、自分たちの中で一つの答えは見えているのかも知れない。ただ、それを確かなものとして証明するためにもと、4人は気持ちを確かめあうように歌い奏でていた。4人が顔を突き合わせ演奏していたのも、互いに「かたちのないばけもの」の本性を確かめ、その先へと導く答えを分かち合おうとしていたから??

楽曲が勢いを持って駆けだした。いろんな言葉に左右され迷走しがちな人生という道の上に、自分たちだけのオリジナルな道を描き出すように、Halo at 四畳半は『疾走』を歌い奏でていた。沸き立つ気持ちを、互いの息吹を感じながら、4人は音のレールの上を触れ合うように走り続けていた。

晴れた風を、眩しい光を降り注ぐように…。Halo at 四畳半は、輝きを導くように『フィラメント』を演奏。どんな状況下でも、自分次第で不安の向こう側へ進むことは出来る。彼らは奈落の底で、未来へ向かう道標となる光を携えようとしていた。

~第二章~

ふたたび画面はイラスト動画へ。ばけものが現れてから二ヶ月後の日々を、彼の視点を通し客観的に語られてゆく。人と人との接触を禁止する社会。季節の移ろいと共に心疲弊していく彼。姿形のないばけものは、人の心に巣くうあらゆる感情を食いつくし、何時しかその命さえ食らい尽くそうとしていた。「心を食べられた」人は、まるで意志を失くした存在に堕ちていた。そして…夜が訪れた。。。

耳をつんざくノイズ音が響き渡る。すべてをなぎ倒すように、Halo at 四畳半は破壊力満載でアバンギャルドな『百鬼夜行』を演奏。挑発するように歌う渡井翔汰。彼の歌声は、荒らげた心の叫びなのか、それとも人を救いへと導く心の声なのか。彼らは、剥きだした感情を叩きつけるように、強烈な演奏を画面の先で眺めている人たちへ突きつける。もしや僕らが目にしていたのは、この物語を語りかけるHalo at 四畳半というばけものの姿?!

彼らは歌いかける、そいつはお前の心のレプリカなんだと。極力余計な音を排除、シンプルな演奏の上で、彼らは伝えたい感情を抽出するように『レプリカ』に乗せ、切々と。でも込み上がる気持ちのままに歌い奏でていた。後半に入り、演奏は一気に激情し、ドラマを描き出す。歪み渡るノイズ音と哀切な歌声が重なるたびに、胸が苦しくなる。でも、今はその痛みに寄り添っていたい。

心の中へ巣くうばけものへ声をかけるように、アコギとエレキの音を交錯させながら、静かなる衝動をゆっくりと膨らませるように、Halo at 四畳半は『月と獣』を演奏していた。

欠けた存在を探すように、Halo at 四畳半は『マグとメル』を歌っていた。壮麗な旋律の連なりに心を預け、音の滴たちが次第に輝きに変わってゆく様を眺めながら、ふたたび欠けた存在が、消えた意志が、新たな命として生まれることへ喜びを覚えるように、彼らは歌い、脈動する音の画を描きだしていた。

~第三章~

イラスト画は、彼の視点で語りだす。接触禁止令の解除。でも、ばけものも、人影も、すぐには戻らぬ日々が過ぎてゆく。同じく、悔い荒された心も、なかなか元のように蘇生するのは難しい状態だった。ある日、ばけものと共存してゆくために国が出した政令。それによって少しずつ活気を取り戻しだした彼の生きる世界。でも、そこには新しいルールを身につけた人たちによって再構築され、以前と同じではない、新しい街や人が生まれようとしていた。

再び命を生み出すように、新しい世界を構築し直すよう、Halo at 四畳半は『リバース・デイ』を通し、触れた人たちの心へ新しい希望の光を差してゆく。同時にその歌は、過去に消えてしまった人たちへの鎮魂歌のようにも響いていた。いろんな犠牲を背負いながらも、人は未来を描きださねばならない。それが、時を生きる我々の運命。Halo at 四畳半は、実態の不鮮明な未来を必死につかもうと声を上げていた。それでも「行こうぜ!!」と叫び声を上げながら、歩む道を選び、未来という日々を踏みしめようとしていた。

「まだ何もきっと潰えちゃいない」と、渡井翔汰は叫ぶ。祈りを捧げるように彼らは想いを演奏に乗せ、空へと響かせる。歌声や演奏が次第に躍動してゆくのも、昂る気持ちが強い祈りとなって重なり続けた姿。すさんだ感情さえもすべて光へ変えるように、彼らは『イノセント・プレイ』を強く祈るように歌い奏でていた。

4人の中央に置かれた、たくさんの花を活けた花瓶。キラキラと輝きを放つ音へ導かれ、Halo at 四畳半は『花飾りのうた』を歌いだした。絶望や奈落の底から這い上がった人たちが、一度存在を消した人たちが、ふたたび「生」を呼び戻し、みずからの人生を新たに花咲かせようとしていた。そんな人生の機微を、ふたたび生を謳歌する様を、Halo at 四畳半は『花飾りのうた』を通して歌っていた。

~最終章~

2020年10月13日、今…。かたちのないばけものが現れてから半年以上の月日が経過した。渡井翔汰は語る、「たくさんのかたちのないものを奪われてしまった」と。「たくさん持っていたはずの望みが絶えてしまったような日々」に向けての想いを、彼は絶望へ打ちひしがれていた自分の姿も重ねながら語れば、彼の心のすべてをばけものが奪ったからこそ気付けたことも、話していた。彼らのまわりにいた、たくさんの人たちの存在。「音楽は、人間は、僕一人でも、あなた一人でも存在することができなくて、まわりに誰かがいてくれることで存在が在ることに気付けた。仲間がいることで、自分という生きる存在を感じれた」ことを、見ている「あなた」に向け、渡井翔汰は、Halo at 四畳半は想いを届けていた。

最後にHalo at 四畳半は、「蘇生していく」と『蘇生』を届けてくれた。舞台の上では目隠しされた女性が、生きる意味を求め、その喜びを知るように踊っていた。けっして心は息絶えることはない。その人の気持ちの有り様で、心は何度だって蘇生してゆく。それを気付く一つのきっかけが音楽であれたら、それがHalo at 四畳半の生きるための歌であったなら…そんなことを感じ、考えながら、この日のライブに触れていた。

TEXT:長澤智典
Photo:オチアイユカ @sadvacation5

《SET LIST》
  1. ~第一章~
  2. ナラク
  3. 疾走
  4. フィラメント
  5. ~第二章~
  6. 百鬼夜行
  7. レプリカ
  8. 月と獣
  9. マグとメル
  10. ~第三章~
  11. リバース・デイ
  12. イノセント・プレイ
  13. 花飾りのうた
  14. ~最終章~
  15. 蘇生
Halo at 四畳半

スペースシャワーTVにて特別番組が決定!

活動休止前最後のワンマンライブ「Good night,Good youth.」の模様と、当日の密着映像、貴重な後日インタビューを60分に凝縮してお届けします!

Halo at 四畳半 Live & Documentary ~Good night,Good youth.〜
放送日程:7/25(日) 23:00~24:00
http://sstv.jp/haloat4johan


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