ライブレポート

今を生きる、声が聞こえる。

来年10周年に突入するandrop
ワンマンライブツアーファイナル2Days “代官山UNIT”

イチゼロ年代が終わろうとしている。

 世の中の物事は10年区切りで変化していく。 何故だろうか。 音楽の歴史においても10年で区切られ、90年代、2000年代を体現するバンドは確かにいくつかあり、そのバンドの音楽によって確立された日本のミュージックシーンがある。

 2009年末に突如1枚のアルバムを持って世の中に姿を現したのがandropだった。 歌詞カードも写真や情報も一切無いシンプルな紙ジャケに包まれたanewという1stアルバムは間違いなく日本の10(イチゼロ)年代の音楽の一つの始まりを持っていた。 そして彼らが初めてワンマンライブを行ったのが今回のツアーファイナルとなった”代官山UNIT”だ。

 初日の1曲目「Voice」のMVは冒頭、彼らのスタートとなったUNITから始まり沢山のファンによって次のステージへ導かれていくストーリーになっており今回のツアーファイナルも「帰ってきたよ」と言わんばかりの演出にファンの気持ちだけではなくメンバー自身にも高鳴る物があったに違いない。 これまで東京国際フォーラムや代々木第一体育館、日比谷野外大音楽堂といった大型の会場で映像・照明を駆使してアーティスティックで圧倒的な演出力を魅せる反面、今回のような全国のライブハウスをまわり、ゼロ距離でファンに応えるツアーも大切にすることでバンドそのものの地力を築いてきた。

初日で披露された「Boohoo」2日目の「Sunny day」といった超攻撃的でアッパーなチューンでは表情豊かにグルーヴを生み出すベースの前田、全身でギターをかき鳴らす姿とは裏腹に緻密なエフェクトと鍵盤やシンセまで扱う佐藤、その土壌を太く支え安心感のあるドラムの伊藤の楽器隊がどこまでも観客を唸らせる。

 そしてボーカル内澤の澄んだファルセットが響く「MeMe」「Ao」のような楽曲はandrop唯一無二のものだ(―ライブにおける「Ao」や「Pray」でのコールアンドレスポンスもファルセットなのは内澤流!メンズにとっては難題だ!―)。

 音源に対する再現性の高さはデビュー当時から度肝を抜かれる。

 2Daysともあって「ShowWindow」「Q.E.D」(*初日)、「Merrow」「Sensei」(*2日目) など各アルバムから幅広く選曲されており、どのアルバムのどの楽曲を切り取ってもその多彩な音楽性と楽曲の持つメッセージ性の数々はその時のandropがどう思って生きてきたのかを語るようにライブで再現されていく。 それでも「僕らのライブで悲しい思いをする人がいないように、隣で辛そうな人がいたら声をかけてあげて下さい」と満員のライブハウスに話しかける内澤の姿は9年前から変わらないのだ。

 機材にフィーチャーしてみよう。 まずメンバー弦楽器隊はデビュー当時から全てビンテージのギター、ベースであることが特徴的だ。

 ボーカル内澤の現在のメインは’57年製ストラトキャスター、ハードテイルの’59年製も使用。 内澤のギタープレイは現代で言うジョン・メイヤーやトム・ミッシュのようにギターボーカルとしてはテクニカルなアプローチが多く、元々はギタリストだったことを頷かせる。

 ギターの佐藤は’67年製のテレキャスター、2004年製テレもスタンバイ、’91年製のギブソンSGを曲によって使い分けていた。 ギャリっと硬質なリフが攻めるテレキャス、ギブソンSGは骨太なドライブサウンドがカッコよく、ディレイ、ピッチシフターやワウペダルによる効果が楽曲を色付けている。

 ベースの前田は’60年製のジャズベース、’65-66年製のジャズベースもスタンバイされていた。 ライブでは恒例となっている「Boohoo」や「Sunny day」の前田のソロから楽曲に入る場面で観客は高まり大きな盛り上がりを見せた。 各々の楽器が年相応以上に弾き込まれており塗装剥げなどリアルなダメージによる風格がハンパない。楽器好きにはたまらない。

 ドラムの伊藤が使用しているのはCANOPUS、キックはBirchシリーズの22×18インチ、タム、フロアがネオビンテージシリーズM1-EXの12,16インチ。スネアもCANOPUSのBB1465となっている。ビンテージも所有しているが主にレコーディングで使用しており、伊藤曰く「最近の楽器は何を選んでも優秀でどう使おうか悩んでしまう、楽器がくれるインスピレーションがあるので色んな楽器を使いたい」と語ってくれた。 同期(打ち込み)と生演奏とを往き来しandropの楽曲のタイム感をしっかりと捉える伊藤のドラムは内包した熱さをキープして適確に進行方向を整えている。 「久しぶりに四人でいる時間が多くて、濃くて楽しいツアーだった」「たまには打ち上げに行こう」とMCの時だけその熱さが抑えきれずこぼれ出る姿がファンにとってはたまらない。

ライブであっても惜しみなくビンテージな楽器を使いこなして、現代の音楽を演奏するのはandropの一つのアイコンとなっている。

 そして本誌だからこそ楽器面から見えるデビュー当時とここ数年のandropで感じる違いの一つ「アコースティックサウンド」に対する取り組みをフォーカスしたい。 ロックバンドとしてファンをロックアウトするバンドの強さはエレキギター、ベース、ドラム、打ち込みやシンセといったサウンドによるものが主だったが、アルバム「Period」以降、「Shout」「Ghost」「BGM」といった楽曲に含まれるアコースティックギターやピアノ、ストリングスサウンドが増え、今回のライブでも「Hanabi」「tokei」のような言葉や楽器そのものの「温度」を大切にした楽曲が際立っている。 支えてきてくれたファンの声をそのまま返すように肌に感じる温度のある楽器を使うライブが増えた。今回は出番がなかったが内澤が使用しているマーティンのアコースティックサウンドなどもその温かさを感じさせてくれる一つの要因だと感じている。「あなたの心に光が見出せますように」と語りかけた内澤の言葉、ライブ両日で披露された「Hikari」がまさにそれを象徴していた。 デジタル社会な今だからこそアナログな楽器のもつ温かさは一人でも多くの人に感じて頂きたい。 そして、andropのライブで心動かされた際には是非、楽器屋へ立ち寄り「音楽」を始めてみて欲しいものだ。

・・・イチゼロ年代。現代の多くの人が抱える「生きづらさ」や「伝わらない事の苦しさ」を彼らもまた感じていただろうし、多くの人に受け入れられる事が全てでは無くなった今の音楽シーンに「普遍」「変化」という矛盾した二面性を持ち、白でも無く黒でも無いグレーな存在であったとしても、それこそが今を生きている人間の価値観であることを、彼らはファーストアルバムの時から語りかけてくれているのでは無いかと思う。 だからこそandropの楽曲にはいつだって今を生きている音が聴こえるのだ。

 イチゼロ年代が終わり、20年代が始まろうとしている。 12月に発売されるNEWアルバム、そして10周年を迎えるandropに「音楽」で出会える事が楽しみでならない。

取材・文:日下部拓哉
ライブ撮影:橋本塁(SOUND SHOOTER)

androp

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