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大勢の人たちが両手を雄々しく掲げ騒ぐ景色が胸を熱くさせる。この熱狂、ぜひ佐渡の地まで運び、佐渡島でロックフェスティバルの開催へ繋げてほしい。ヘヴィメタルは何時だって海を渡り、何処までだって鳴り響くのだから。
3月10日の“佐渡の日”に初開催された「佐渡トキロックフェスティバル」。その第二弾となる「佐渡トキロックフェスティバル VOL.2『SEX MACHINEGUNS VS THE冠』~THE WAY TO THE GOLDEN METAL ISLAND~もつ焼でん ROCKS#2」が、12月18(日)SHIBUYA CYCLONEを舞台に行われた。出演したのが、前回に引き続き、SEX MACHINEGUNSとTHE冠。その前に、オープニングアクトとして佐渡島からやってきたおじさんロックバンドのボーフラとSAKURAIが演奏。そのうえで、ライブは本編にバトンタッチされた。
THE冠
「拳上げられますかー!!」。THE冠のライブは、冠徹弥が響かせる絶叫を合図に『帰ってきたヘビーメタル』からスタート。「拳を上げろ!!」「声出せ!!」と煽る冠徹弥。ゆったりと流れる重厚な音が、彼の声を合図に一気に速度を増した。「帰ってきたヘビーメタル」とハイトーンでシャウトする冠徹弥。途中からは、かぶっていた鉄兜を取り、より戦闘態勢へ。冠徹弥の「Oh~OhOh」と歌う声に向け、フロア中から突き上がる多くの拳と声。冒頭から、いい感じでフロア中が熱を帯びだした。
続く『傷だらけのヘビーメタル』では、演奏に合わせて拳を振り上げ、ヘドバンしてゆく様も。『傷だらけのヘビーメタル』は、歌謡メタル風の楽曲。シャウトするメタル要素もしっかり組み込みながら、少しいなたい感じも覚える歌にも自然と耳が惹かれていた。途中、ブレイクポイントでは、フロア中の人たちの沸き立つ歓声が響いていた。後半、重厚な音や冠徹弥のパワフルな歌に乗せ拳を突き上げる様も、この場によく似合う景色。メタル魂を熱情した声で伝える、その姿が魅力的だ。
「つべこべ言わずに飛べ!!」の声に続いて飛び出したのが『ただ単に』。冠徹弥の煽りに刺激を受けたフロア中の人たちが、拳を振り上げ大きく身体を揺さぶるか、同じく拳を突き上げながら飛び跳ねる。飛ぶ、飛ばないではない。魂を注ぎながら拳を高く突き上げれば、十分飛び跳ねたと言える。大事なのは、熱情する魂だ。中では、「佐渡 佐渡 ウォーオー」の声に合わせ、佐渡島を模様した腕のポーズも組み込み、ともに熱狂する様も誕生。出演者たちが、イベントの趣旨を大事に表現してゆく様も嬉しい。
このイベントの仕掛け人が、佐渡島出身。そんな主催者への思いを代弁するように。冠徹弥自身も佐渡島へ行ったことがあるからこそ、ふたたび行きたいという思いを胸に、「佐渡に帰れたらいいね」と口にしたうえで『帰郷』を歌う。ただし、ノスタルジーに浸るような歌ではない、激烈なリフが胸を熱く揺さぶる激熱なメタルナンバー 。むしろ、そうでないとTHE冠らしくないだろう。冠徹弥の声に合わせ、フロア中から上がり続ける拳・拳・拳。この景色が、感情をバーニングさせる。
「僕の喉は、みんなの声で開かれるんです。徹弥の喉は声で開かれる」と語る声へ答えるように、フロア中から沸き上がる歓声。その声をパワーに、THE冠が轟かせたのが『エビバディ炎』。変幻する激しいリフと歌声をシンクロしながら歌う様も刺激的だ。メンバーの煽り声に合わせ、フロア中から突き上がる拳。誰もが気持ちを燃えたぎらせたる、それこそがヘヴィメタルのライブだ。
ここで冠徹弥は、ヘヴィメタルを歌い続けることへの強い意志を、あえて揶揄するよう自虐的に伝えだした。むしろ、コミカルな語りも巧みに織りまぜ、だからヘヴィメタルをやっていて良かったという思いを冠徹弥は伝えていた。楽曲は、哀愁を帯びた『哀罠メタル』へ。ストーリーテラーとなった冠徹弥が、シャウトも交えながら次々と言葉をぶつけ、ヘヴィメタルを称賛してゆく。フロアでも、ずっと頭を振る人から拳を突き上げる人たちまで、それぞれが自由にメタル魂を舞台の上にぶつけ、このライブを謳歌していた。
美しいギターの旋律に乗せ、冠徹弥が神々しい声で歌いだしたのが『糞野郎』だ。美しいギターの音色とヴォーカルのセッションは、演奏が轟きだすのを合図に糞熱いヘヴィメタルな演奏に進化。沸き立つ気持ちのままに雄々しく歌い上げる冠徹弥の姿が熱い。「糞野郎!」と高音で連呼する様も、気持ちを激しく騒がせた。
ライブも佳境へ。「さらけだしてけ、楽しんでけ!」の言葉が嬉しい。これこそが日本流のヘヴィメタル・サウンドと示すように、THE冠は『日本のヘビーメタル』を熱唱。ゴリゴリな音を轟かせ暴走する演奏の上で、冠徹弥は雄々しく声を張り上げ、場内に熱狂と突き上げた拳で一体化してゆく景色を作りあげ、これこそが日本に於けるヘヴィメタルだとその神髄を突きつけていった。間奏では、万歳三唱をコール&レスポンスとして組み込み、これもまた日本のヘヴィメタル・スタイルだと示していた。
最後にTHE冠は『担がれた冠』を轟かせ、この空間を盛大で激熱な祭りの景色に染めあげた。メンバーらの煽りを受け、ずっと突き上がり続けた拳。いつしか誰もが両拳を突き上げていた。そう、祭りは全身を使ってワッショイ騒いでこそ。冠徹弥も飛び跳ねれば、その姿に刺激を受けた観客たちも飛び跳ねる。熱情した魂を一つにしてこそヘヴィメタルのライブ。いや、THE冠流に言うならヘビーメタルのライブだ。後半、冠徹弥の声に合わせ、フロア中の人たちが叫んでいた姿も胸に熱く響いていた。
THE冠《SET LIST》
- 1.帰ってきたヘビーメタル
- 2.傷だらけのヘビーメタル
- 3.ただ単に
- 4.帰郷
- 5.エビバディ炎
- 6.哀罠メタル
- 7.糞野郎
- 8.日本のヘビーメタル
- 9.担がれた冠
コウメ太夫のフロア中から爆笑響く、これぞ、テレビでは流せないシニカルなエンターテイメントと言うべき優れた芸を挟み、ライブはSEX MACHINEGUNSへ。
撮影:佐藤早苗
TEXT:長澤智典