柏木広樹が招いた音楽の家。ここでは、楽しいことがいろいろ起きていた。

チェリスト・プロデューサー・作編曲家として多方面で活躍する柏木広樹が、7月2日(土)、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールを舞台に「くすりの福太郎presents 柏木広樹 20th Anniversary チェロ・コンサート “Made in musicasa 2022”」を開催した。この日は、主役の柏木広樹(Vc)を中心に、光田健一(Pf)、天野清継(Gt)、大島俊一(Key)、コモブチキイチロウ(Ba)、斎藤たかし(Dr)が演奏陣として参加。スペシャルゲストで、葉加瀬太郎(Vn)、西村由紀江(Pf)も出演した。「musicasa(ムジカーザ)=音楽の家」をコンセプトに行われた当日の公演の模様を、ここにお伝えしたい。

この日は、第一部をアコースティックなスタイルで、第二部をバンドスタイルで構成。ただし、第一部の幕開けは、この日出演する全メンバーで挨拶しようとバンドスタイルで演奏。届けたのが、『子犬のショーロ ~子犬のワルツより~』。一歩一歩ゆっくりと歩みを進めるように鳴り響くピアノの音色。やがて、子犬が庭中を駆け回るような力強い演奏を始めたのを合図に、駆け回る子犬の後を追いかけるように演奏陣が華やかな音を一斉に奏でだす。じっとなどしていられない。とにかく駆け回りたくてしょうがない。子犬の気持ちを音で現すように、演奏陣が心弾む音を掛け合いしていく。途中に挟んだソロ回しのコーナーでは、各プレイヤーが、はしゃぐ子犬の気持ちになって軽やかな演奏を披露。柏木広樹が招いた音楽の家。ここでは、楽しいことがいろいろ起きそうだ。

続くチェロの独奏曲『2022』は、黒澤楽器店CMにも起用された『2011』に対してのアンサーソング。重厚な音色の中へ優しさを覚えるのは、柏木広樹自身の性格が反映してのこと。穏やかな音色が、次第に躍動していく。その音へ導かれるように、勇気や元気という力が身体中に漲りだす。柏木広樹はチェロの演奏のみで、会場を埋め尽くした人たちの気持ちを高めてくれた。

柏木広樹が光田健一と、共に活動している二人旅によるブロックへ。柏木がMCで光田について語った「すべての音楽をファンタジーにする」という言葉が、とても印象深い。2人は、エンニオ・モリコーネが手がけた映画「ニュー・シネマ・パラダイス」のテーマ曲『ニュー・シネマ・パラダイス』を演奏。2人の奏でる旋律が重なりだした途端、目の前には長閑で雄大な景観が広がりだした。作品をご覧になっている方は、あの田舎の景色が脳裏に広がっていたのではないだろうか。たとえ作品を知らない方でも、2人の少し哀愁も帯びた音色に触れ、しばし、現実を忘れた時の中へ身を浸らせていたと想像する。

続く『My Treasure』は、光田健一が19歳のときに作った楽曲。チェロも、ピアノの音色も、共に力強く躍動。楽曲が持つ“若いエナジー”に刺激を受けたのか、2人も身体中から湧き出るパワーを解き放つように演奏していた。ときに穏やかな表情も見せながら。互いの感情をぶつけ、高めあうように熱情した演奏を2人は届けてくれた。

ゲストで、葉加瀬太郎と西村由紀江が登場。数年前からトリオとしての活動も始めた3人は、音大時代から共に時間を過ごした仲。毎夏、八ヶ岳音楽堂で行われている「葉加瀬太郎 サマーリゾート・コンサート」でも共演している。ここからは、気心知れた3人による演奏へ。

最初に奏でたのが、「富美菊酒造テーマソング」にも起用中、富山の小さな造り酒屋「富美菊酒造」で醸造した日本酒「羽根屋」をモチーフに作りあげた『羽根屋』。キラキラした輝きを放つ演奏が、ゆっくりと、でも強い存在感を持って音を重ねながら、熟成してゆくように紡がれる。ヴァイオリンとチェロが織りなす演奏は、米と菌が互いに刺激しながら熟成してゆくようだ。ポコポコと発酵してゆく様をピアノの音色が表現。良質な音の刺激を折り重ねながら、演奏は成熟してゆく。その様が、3人の演奏を通して見えてきた。なんて、まろやかで、味わい深い楽曲だろう。

第一部の最後を飾ったのは、NHKトリオによる『TODAY for TOMORROW』。3人の奏でる美しい音色が、次第に明るく、輝きを増してゆく。爽やかな楽曲なのに、心が踊るのは、3人が音を重ね合わせることを楽しんでいたからだ。3人の笑顔が音に乗せて心へ届けば、その音を受け取った人たちの気持ちにも晴れた光が差してゆく。このトリオの演奏へ、もっともっと夢中になっていたい。

第二部は、バンド編成で表現。演奏が始まると同時に、会場中へ爽やかな夏の風を運ぶようにラテンのリズムが軽快に鳴り響きだした。柏木広樹を筆頭に6人のメンバーたちが、『JIPCASA FELIZ航海記』の3曲をメドレースタイルで演奏。ときにソロ回しも加えながら、曲が表情を変えるたびに、心地好い演奏に力強さが増してゆく。嬉しかったのが、彼らの演奏が、頭の中へ常夏の楽園のような景色を次々と描きだしてくれたこと。まさにリゾートミュージック。そう呼びたくなる演奏に触れながら、しばし現実を忘れた時間の中へ心地好く浸っていた。

続く『エミリの小さな包丁』では、優しい温かい音色を通し、観客たちを包み込むように6人は奏でていた。その演奏は、まるで本を読み聞かせているような耳触りの良さを覚えていた。曲の表情を変えるたびに、いろんな景色や思いを聞き手に与えてゆく。そういう演奏に触れていられたことが本当に嬉しい。

次に披露したのが、ドラッグストアチェーン「くすりの福太郎」のマスコットキャラクターをイメージして制作したという『ふくちゃん(仮題)』。この楽曲でもメンバーたちは、犬のふくちゃんがわちゃわちゃはしゃぐ様を音として表現。ただ、華やかで楽しいだけではなく、その中へ力強く躍動する姿や穏やかな表情も加え、そのキャラクターが持ついろんな魅力を見せてきた。ふくちゃんは、きっとこんな面も持っているんだろうなと想像させる。聞き手のイマジネーションを掻き立てる演奏なのも、嬉しい聞きどころだった。

続く、ゆったりとした演奏に乗せて届けた『Heart to Heart』も、盲導犬をテーマとした、心を穏やかにする楽曲。「癒される」といったほうが正しいだろうか。この曲に触れている間、ずっと安らぎを覚えていた。この曲でも柏木広樹は、現実を消し去り、心を癒すひとときを与えてくれた。

ここからは、ライブらしい気持ちを騒がせるブロックだ。『SMASH!』の演奏にあわせ、客席中から熱い手拍子が起きた。最後に演奏した『La〜LaYa』も含め、この2曲では、ラテン要素を持ったエネルギッシュな楽曲を通して、観客たちと一緒に熱を交わす関係を築きあげていった。柏木広樹に至っては、椅子から立ち上がり、大きなチェロを抱えて演奏。『La〜La〜Ya』ではメンバーたちが歌声を場内に響かせれば、大きく振り上げた手の動きに合わせ、客席でもたくさんの人たちが高く上げた手を左右に振りながら、一緒に熱い思いを分かち合っていた。心騒ぎ、ときめき、はしゃぎたくなる。そんなひとときを味わえたことが本当に嬉しかった。

やまない拍手を受け、ふたたび舞台にメンバーが登場。ゲストプレイヤーの葉加瀬太郎も加わり、最後に情熱的なラテンナンバーの『CACADOR』を演奏。 柏木広樹と葉加瀬太郎の激しい演奏が刺激しあうことで、楽曲はどんどん熱を帯びてゆく。セッションするような2人の演奏を、他のメンバーたちもエモーショナルな演奏で煽ることから、楽曲はどんどん熱情してゆく。本編終盤に作り上げた盛り上がりは、アンコールでさらに勢いを増し、この日のコンサートの印象を、見ている人たち一人一人の心に熱く焼き付けていった。

心地好さを覚えながら音に身を浸していたら、最後には興奮を覚え、楽しさの虜になっていた。そんな素敵な一夜を柏木広樹は届けてくれた。

PHOTO:横井明彦
TEXT:長澤智典

柏木広樹 使用楽器・機材紹介(1)

柏木広樹

この公演の模様はストリーミング・ライブ配信中!

くすりの福太郎presents
柏木広樹 20th Anniversary チェロ・コンサート “Made in musicasa 2022”

▼オンライン視聴券ご購入はコチラ▼
https://eplus.jp/sf/detail/0075580004-P0030062


視聴可能期間:2022年7月30日(土)~2022年8月6日(土) 23:59
料金:視聴券 3,500円

柏木広樹 インストアトークイベント開催!

日時:2022.8.13(土) 13:00スタート
入場無料/抽選予約制 ※応募条件あり
会場:クロサワバイオリン池袋店

チェリストとしてコンサート、ライブのため日本全国を飛び回り、映画音楽への参加やテレビ出演等マルチに活躍する柏木広樹さんを迎えインストアイベントを開催。チェロを変幻自在に操り、自らを“チェロ芸人”と称して笑顔が溢れる音楽を目指す柏木さんをお招きしてのトークライブをぜひお楽しみください。

お申し込み・詳細はこちら
https://www.kurosawaviolin.com/news/20220726/56156/

柏木広樹 & 光田健一 “二人旅” デュオ結成10周年記念ツアー開催!

柏木広樹 (Vc) & 光田健一 (Pf,Vo) "二人旅"
10周年記念ツアー2022『MAJESTIC』

8月1日(月)【長崎】長崎県美術館
8月3日(水)【熊本】Restaurant&Live Bar CIB
8月4日(木)【鹿児島】Live Heaven
8月6日(土)【宮崎】Salle Mandjar
8月7日(日)【福岡】大名MKホール
8月9日(火)【大分】BRICK BLOCK
9月4日(日)【東京】スペース Do
9月12日(月)【名古屋】Live DOXY
9月13日(火)【岡山】城下公会堂

▼ツアー情報はコチラ▼
https://hirokikashiwagi.com/futaritabi2022


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