2021.7.2@新木場 USEN STUDIO COAST 旅鳥小唄ツアー2021 ライブレポート

笑顔の中に隠した辛辣なメッセージ。笑う裏に熱漲る!!

細美武士(the HIATUS/MONOEYES/ELLEGARDEN)とTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)が2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、被災地を中心とした弾き語りでのライブの中で、自然発生的に活動を開始したアコースティックスタイルのバンドthe LOW-ATUS。 あれから10年の歳月が経過。 今年6月にthe LOW-ATUSはアルバム『旅鳥小唄 / Songbirds of Passage』をリリース。 それに伴い全国ツアー『the LOW-ATUS「旅鳥小唄ツアー2021」』をスタートさせた。 ここに紹介するのは、7月2日(金)に新木場 USEN STUDIO COASTで行なわれたツアーの模様になる。 彼らの息吹が、少しでも伝われば幸いだ。

演奏は、TOSHI-LOWの吹くブルースハープの音色と、哀愁を帯びた音へ寄り添うように細美武士が爪弾くアコギの音が重なり、始まった。 冒頭を飾ったのが、アルバムと同じく『通り雨』。 TOSHI-LOWの温かい歌声へ、細美武士も穏やかな演奏や歌声を重ねだす。 とてもゆったりとした、2人の心の温もりを感じさせる演奏面の幕開けだ。 TOSHI-LOWの吹くブルースハープの音色が、心に優しく染み渡る。 2人は、愛しい人や、大切な人たちへ想いを告げるように言葉を紡いでゆく。 2人の歌声が重なったときに生まれた温かい声の温度。 サビ歌で2人の感情と歌声に熱が籠もった瞬間の熱量は、胸を揺さぶる感動も与えてくれた。

軽快にギターの音が流れだす。 フロアから生まれた手拍子に気持ちを乗せながら、2人は「とりあえずビールを空けて、その次はハイボールでも」と『ロウエイタスのテーマ』を歌いだした。 心地好く気分を上げながら、アコギを掻き鳴らし歌う様は、歌に酔う様にも見えていたように、DRUNKERな2人にとても似合う楽曲だ。 和気あいあいと歌い奏でながらも、その曲には、しっかりシリアスでシニカルなメッセージも込めている。 ふざけていそうに見せながらも、世の中の不条理を、2人は歌に込めた想いで聞き手の胸へと辛辣に突き刺してゆく。 まさに、これぞthe LOW-ATUSらしい冴えた攻め方。 次第に熱と力が籠もる2人の歌声。 そのエナジーあふれた姿が、らしいじゃない!!

気ままなトークの中、話の矛先がやばくなったところで演奏へ。 次に披露したのが、『思草』。 ノスタルジックな香り漂う楽曲を、TOSHI-LOWが若かりし頃にお世話になった、今は亡き人へ想いを馳せるように歌っていた。 そんなTOSHI-LOWを見つめながらギターを弾き、歌声を重ねてゆく細美武士。 哀愁を抱いた歌が、今宵は日本酒を傾けていくよう胸にジンワリと染み込んでゆく。 一人の歌唄いとして、想いを素直に吐露するように歌うTOSHI-LOW。 その声が、胸を揺らす。 いつのまにか2人の男気あふれる歌声を、涙で心を少し濡らしながら聞いていた。 なんて胸をジワリと揺さぶる歌だ。 ほんと、お酒と想い出をツマミに聞きたい気分だ。

できるだけ肩の力を抜いて笑って帰ってもらえたらな」と語ったあとに、穏やかな旋律に乗せ細美武士が優しく歌いだしたのは『サボテン』。 でも、力強くギターをストロークしたとたん、秘めた情熱を吐き出すように楽曲が、歌声が熱を帯びだした。 2人が「ずっと笑ってやってこうぜ」と歌うその言葉は、the LOW-ATUSの活動の軸となる想い。 自分たちが笑うことで、まわりにいる人たちも、少しの間だけでも現実を忘れ無邪気に笑えていれるなら、そんな素敵なことはない。 滾る感情のままに歌う2人の声に、誰もが心に笑顔の種を植えるような気持ちでじっと耳を、心を傾けていた。

アルバム『旅鳥小唄 / Songbirds of Passage』のLP盤のジャケットに込めたメッセージについて語ったあとに届けたのが、「こんな晴れた日には」と、細美武士が想い出の景色を思い返すように歌にした『空蝉』だ。 少しノスタルジックな想いを胸に、地元で楽しんだ夏祭りなど、あの頃に刻んだ風景を思い返しながら細美武士は朗々と歌いあげていた。 ジワジワと胸に染み渡る演奏だ。 セピア色の景色へ、少しずつ鮮やかな色を塗り重ねるように2人は歌い奏でてゆく。 『空蝉』が持つ哀愁という香りが、胸をキュッとくすぐる。今は、ただただ2人の歌に浸っていたい。 そして、あの頃に想いを馳せながら少しセンチな気持ちに溺れていたい。

2人が顔を見合せ、ブルーズなセッションを交わすように歌い始めたのが、『ダンシングクイーン』。 若かりし頃の荒ぶる気持ちを思い返すように、TOSHI-LOWが雄々しく歌いだす。 そこへ重ねる細美武士の歌声が、さらに雄々しきスパイスを振りかける。 歌を通して若かりし頃の無鉄砲な自分を揺り戻しながら、ふたたび気持ちへ荒ぶる熱を注ぎ込むように2人は雄々しく歌っていた。 低音の効いた2人の歌声が気持ちを熱く掻き立てる。 今も2人は、あの頃の自分が描いた夢の続きを描き続けているのだろうか!?

「ただの暇つぶしですませりゃいいよ」と、TOSHI-LOWが高らかに歌いだした。 彼は、心の中に眠っていた熱情をひきずり出すようおおらかに『丸氷』を歌っていた。 TOSHI-LOWの雄大な歌声へ寄り添うように歌声を重ねる細美武士。 すべてを包み込むようなスケールの大きい歌と演奏に包まれながら、何時しか2人の雄々しき姿に視線が釘付けになっていた。

「卑怯な奴らのことが嫌いで」と声を上げたあとに、2人は『オーオーオー』を力強く歌いだした。 とてもシリアスでシニカルなメッセージを、2人は胸の内から沸き上がる熱情した想いに乗せ、言葉のひと言ひと言を理不尽な奴らへぶつけるように。 声を上げられない世の中の人たちをけしかけるように、雄々しく歌っていた。 the LOW-ATUSは振り上げた拳を歌に変え、グサリと刺してゆく。 これこそが、the LOW-ATUSらしい想いの突きつけ方だ。

ゲストで、MONOEYESのスコット・マーフィーが登場。 彼が哀愁味漂う演歌調の演奏に乗せ口上を述べたところで、2人は思いきり哀愁と郷愁を重ね合わせ『みかん』を熱々と歌いあげてゆく。 コミカルそうに見せて、とてもシリアスで辛辣なメッセージを込めた歌だ。 2人は、腐ったみかんの悲哀を朗々と歌っていた。 腐ったみかんと共に自らも腐るのか、それとも…。 音源と同じように、最後に笑って歌を終えるところまで表現しているところも、小憎らしいじゃない。

最後にthe LOW-ATUSは、優しく、暖かく、微笑ましい様も見せながら、「ぼんやりと浮かんだ笑顔みつめてる」と『君の声』を歌唱。 これまでのはちゃめちゃなライブの印象さえ、この曲でハートウォーミングな様へ塗り替えるようにthe LOW-ATUSは歌い奏でていた。 これがthe LOW-ATUSの掛けた魔法? きっとそうなのかも知れない。 一つ確かに言えるのは、ずっとにやにやしながらこの日のライブを楽しんでいたということ。 きっと、それで良かったんだと思う。

止まない熱い拍手を受け、2人はふたたび舞台へ。 最後にthe LOW-ATUSが歌ったのが、「どんな旅にも終わりがあるように きっと僕らも別れがくるけれども」と歌いだした『いつも通り』。 2人の野太いハモリ声が、とても胸に心地好く響いていた。 誰もが最後の最後まで2人の歌声と演奏に気分よく身を、心を預けながら、2人の絆を持った暖かい歌声にずっと酔いしれていた。

取材・文:長澤智典
ライブ撮影:石井麻木
機材撮影:小野寺将也


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