己龍 生配信公演 『螢火之夢~第二夜~』ライブレポート
己龍が見せた、一夜の夏の夢宴!
夏の季節を彩るに相応しいデジタルシングル『螢』をリリースした己龍。同楽曲を奏でるのに似合う時期に、その音色を大勢の人たちの耳に、目に、記憶として閉じ込めようと、8月30日(日)にYouTube上にある己龍チャンネルを通し無料ライブ配信公演「螢火ノ夢~第二夜~」が開催された。
「螢火ノ夢~第一夜~」は、夏の始まりを告げる7月上旬に実施。異常気象が起こるのが当たり前となった今の日本に於いては、7月上旬でも肌寒ければ、8月末時期でも猛暑のように、暦通りの夏とはほど遠い。だが、季節を愛でる己龍らしく、彼らは『螢』という楽曲を軸に、ライブを通して「夏」という季節の匂いを示してくれた。
ライブは、艶やかな夏の風景を描くように『情ノ華』から幕を開けた。演奏が進むごとに、蕾が次第に花咲くように楽曲も華やかさと高揚を増してゆく。サビを感情的に歌い上げるヴォーカル黒崎眞弥の声に美しさと艶めきを感じれば、間奏で声を張り上げ煽るギターの酒井参輝の感情剥き出しの姿が、『情ノ華』を支える茎や枝葉にある棘のような存在にも見えてた。
遠海准司のタイトなドラム演奏を合図に、楽曲は『天照』へ。演奏が進むごとに、気持ちが嬉しく昂る。魂を揺さぶるといえば良いだろうか。塞いでいた感情が『天照』へ導かれ心開けば、光を求め一気に天へ向かって飛び立つ、そんな嬉しい開放感と高揚を覚えずにはいられなかった。騒ぐ気持ちを抑えられない。どんどん心が光に包まれてゆく。
続く『朱花艶閃』では、激情した気持ちを、重く激しい音に変え叩きつけていく。間奏では、ベースの一色日和とドラムの准司、そしてギターの九条武政へと続く、感情剥き出しのソロ演奏も登場。眞弥が、参輝が絶叫しながら、絶頂を求めてゆく。
トリッキーなリズムビートの上で、眞弥が手にした扇子を舞い踊らせる。次々と転調しながら色を塗り替える演奏が、とても刺激的だ。まるでジェットコースターのように緩急を巧みに付けながら、己龍は『朔宵』を通し、1曲の中で刺激的かつ身体を騒がせる様々な音の景色を次々と映し出す。艶やかでメロウな歌なのに、楽曲がとてもアバンギャルドで刺激的。その不思議なバランスの中にいると、気持ちが酩酊してゆくようだ。
人が狂気へ導かれるとき、そこには、心を自由にしたときに生まれる無邪気な童心が顔を覗かせてゆく。『閃光』に触れながら、正気の中にいながらも、狂気してゆく気持ちに心が染まりだした。サビはとても艶やかでメロディアスなのに、そこへ至るまでの過程がとても破天荒。だけど、それこそが人が狂喜しているときの姿なのかも知れない。
鋭利かつ高速なギターリフをスリリングに突き刺す『手纏ノ端無キガ如シ』の登場だ。相手の感情を射抜くようにせまる激しくも抑揚を抱いた演奏が、気持ちを昂らせ、熱狂という坩堝へ落としてゆく。理性を消し去り、剥きだした感情のみを突きつけるように彼らは演奏していた。激しさの中にも、胸を擽る歌を組み込んでいたのも、彼らが本質的にメロディメイカーだからだろう。
武政のギターを合図に、楽曲は暴れ祭るように『贄ノ筵』へ。観客たちを入れたライブであれば、フロア中の人たちが激しく首を振る光景がそこには生まれていただろう。たとえそこが無人の場だろうと、己龍は画面の先で熱狂にひれ伏している大勢の人たちに向け、もっと来いよと煽り続けていた。どんな環境だろうと姿勢を変えないその姿が、己龍らしさ。
この空間に生まれた荒ぶる熱へ、スリリングな刺激を加味するように『野箆坊』を演奏。サビはキャッチーなつかみを持ちながらも、その前後の表情がとてもエキセントリック。その落差が、この楽曲に強く引き寄せるられる魅力を形作っていた。
「百鬼夜行、我等に続け」 眞弥の言葉を合図に、熱狂と共にこのまま絶叫しながら絶頂へ向かって行進だ。己龍は、カメラレンズの先にいる人たちと共に、勇む気持ちで熱狂の先の世界まで行進しようと『百鬼夜行』を突きつけた。
今宵の己龍は、あえて激しさの中にも艶やかさや歌心の生きた曲たちばかりを並べてきた。ただ熱狂するのではなく、そこに心をキュッと揺さぶる淡い風情を忍ばせ、灼熱の宴に心地好く酔う様を作りあげていった。それこそが、ひと夏に生まれた夢と興奮と高揚に満ちた夏祭りだと言うように。
熱狂を肌に感じながらも、その火照りを優しく肌へ塗り込むように、己龍は最後に『螢』を演奏。この日の宴が、一夜(ひとよ)の儚い幻だったと語るように、彼らは『螢』を歌い奏でてゆく。それが、夢の中へ揺蕩いながら見えた宴の景色でも構わない。たとえ現実から離れていようと…いや、現実を忘れさせる歓喜と狂喜を己龍は与えてくれたからこそ、夏の一夜(いちや)に観た夢の景色を、胸の奥のフィルムにずっと映しておきたかった。
己龍は、今後もオンラインライブ配信という形でライブを届け続けてゆく。ぜひ、その日程をチェックし、これからも己龍のライブに視線を注いでいただきたい。
PHOTO: 中路敦子
TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 1.情ノ華
- 2.天照
- 3.朱花艶閃
- 4.朔宵
- 5.閃光
- 6.手纏ノ端無キガ如シ
- 7.贄ノ筵
- 8.野箆坊
- 9.百鬼夜行
- 10.螢
己龍
『螢』デジタルリリース 2020.7.5配信開始
iTunes Storeをはじめ各配信サイトで好評配信中
https://linkco.re/328Z4Au6
無観客生配信公演配信チケット発売中
無観客生配信公演「月嘩睡敲~二〇二〇~」
2020年9月25日(金)19:00配信開始
[チケット販売期間] 2020年9月17日(木)16:00~9月28日(月)19:00
【チケット料金】
ファンクラブ会員:1,980円(税込)
一般発売:2,980円(税込)
※別途ZAIKO利用手数料・決済手数料(お支払方法による)がかかります。
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