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ヘヴィメタルの悪魔と口づけを交わしたSiriusの雄々しくも攻撃的な姿に熱狂せずにいられない。
Siriusが、2ndEP『Phoenix』を手にリリース記念のワンマン公演『Phoenix -Burning Through Limits-』をSHIBUYA CYCLONEで行ったのが、5月5日のことだった。チケットをSold Outさせたライブ自体は、場内の熱気を含め、Siriusの勢いを示すに相応しい内容だった。ただ、あのときのライブは、ドラムのAmiが手術後間もないという理由もあり、本人の出演はアンコールのみにとどまっていた。あの頃からメンバーの中には、「この5人で再び、この場で、この日のライブを改めて行いたい」思いが強くあった。そのうえで決めたのが、9月21日にSHIBUYA CYCLONEで行った「Sirius 2nd EP「Phoenix」RELEASE ONE-MAN LIVE Phoenix ~Burning for Revenge~」だった。リベンジ公演と題しつつも、セットリストも変え、あのとき以上に楽曲を増やし、今のSiriusの一番リアルな姿を映し出したライブにもしていた。


どんな状況下へ追い込まれようとも、不屈の魂を燃え滾らせ、彼女たちは何度だって不死鳥のように炎を撒き散らしながら羽ばたき続ける。その生き様を示すように、Amiのドラム演奏を合図に、Siriusは音の翼を大きく広げ、『Fly High』を合図に力強く羽ばたきだした。2本のギターのハモる音が胸を騒がせる。観客たちを挑発するように歌うMiwaの歌声が、気持ちを奮い立てる。場内中から突き上がる数多くの拳が、彼女たちを求める思いの声として見えてきた。さぁ、5人と一緒に熱狂という空間を目指して、高く、強く舞い上がれ。頭を振り乱してギターを鳴らすあにゃ。ギターの菫とベースのみさが顔を突き合わせて演奏をする姿も印象的だった。
手数の多いAmiのドラムプレイを合図に、あにゃ、菫、みさ、それぞれの演奏にスポットを当てた上で、Miwaが「もっと声出せ!」と観客たちを煽りだす。Siriusは、攻撃的な音にさらに磨きをかけて観客たちを攻めだした。身体を突き刺す重厚な音を武器に、『Playing Games』を演奏。ギターソロを繰り出すあにゃの背中にみさが寄り添い演奏をする姿も、嬉しいインパクトだ。フロントに4人が居並び歌と音を突き刺す。勇ましいその姿が気持ちを熱く揺さぶる。
『朝月夜』では、激しく頭を振りながら演奏を繰り出すメンバーらの姿があった。挑発する激しい演奏の上でエモーショナルに歌うMiwaの声が、気持ちを高揚させる。序盤から彼女たち、観客たちの気持ちを休ませるどころか、ずっと熱く掻き立ててゆく。
MCでは、5月に行った公演時に抱いていた不安な思いを懐かしむように語っていた。同時に、燃えていこうと観客たちに熱い誘いの声をかけていた。

その意志を示すように、Amiのパワフルなドラムの演奏から幕を開けた『Reflection in the Darkness』でも5人は、Miwaとメンバーたちのかけあいも含め、ノイズにも似たリフを次々と繰り出し、観客たちの理性をぶっ壊していく。破顔した姿でギターソロを弾くあにゃ、対象的にクールな表情でギターソロを重ねてゆく菫。そのコントラストも魅力だ。
力強いMiwaの歌声を引き金に、Siriusは勇壮でメロディアスな『TRIGGER』を突きつけた。あにゃと菫が寄り添いながらアイコンタクトしてゆく姿も、興奮へと導く引き金になる嬉しい要素。Miwaが銃を撃つ仕草を真似、客席でも同じ動きをする人たちも。さぁ、その音で未来を撃ち抜いてゆけ!!

切なさを覚えるピアノと弦楽の演奏に乗せ、ミドルでメロウな『烏鷺』をMiwaがオペラ歌手のように抑揚したおおらかな声で歌いだす。そこへ楽器陣の演奏が加わるのを合図に、楽曲は、再び唸りを上げて駆けだした。この曲では、気持ちの揺れが見えるMiwaの抑揚した歌声の魅力を味わえたのが嬉しい。一見、攻撃的な音を突き刺すバンドに思われがちだが、歌心を何よりも大切にしているバンドであることを、この曲が示していた。
演奏を終え、メンバーらが次々とステージ袖へ消える中、一人残ったAmiがエクストリームでエレクトロな楽曲に乗せ、どでかい音を鳴らしだす。Amiのドラムソロのコーナーだ。スケールの大きな楽曲へ、彼女の手数の多いドラムの音が激しい表情を描き加える。巧みに表情を変化してゆく楽曲に合わせた感情豊かなプレイも、Amiの持ち味だ。むしろ、その表現力が、Siriusを単なるメタルバンドの範疇に止めない存在にしている。

短いブレイク後、Amiがドラムを叩くのを合図に、演奏は『EDEN』へ。この曲では、力強く跳ねたAmiの演奏とは裏腹に、竿隊はMiwaの歌声を生かすように感情を控えめにした演奏をしてゆく。でも、間奏では2本のギターが寄り添う演奏を繰り広げるなど、しっかりと見せ場を作りだす。『EDEN』、とてもスケールの大きい歌曲だ。この曲を通して、改めて彼女たちの器の深さを実感した。
続く『Anesthesia』でもSiriusはシンフォニックでハードロック然としたサウンドをベースに、Miwaが朗々と歌いあげる姿を見せていた。プログレッシブな要素とメロディアスな魅力をクロスオーバーしながら、彼女たちは独自の世界観を描きだしてゆく。


次に披露したのが、「みんな燃えていこうぜ」と気持ちを鼓舞する新曲の『Burning Warriors』。まるでLAメタルのような、気持ちを熱く燃えたぎらせる楽曲だ。Miwaの「燃えろ!!」の声へ煽られるように、場内のあちこちで拳が高く突き上がる。間奏では、2本のギター陣のハモる演奏も登場。Miwaの声を煽るあにゃと菫のかけ声も、この曲を燃え滾らせる嬉しい要素だ。

エモい歌から幕を開ける『ZEAL』が始まった途端、2本のギターが嘶いた。菫と肩を組んで歌うMiwa。曲が進むごとにメロウさとエモさが増してゆく。みさがフロントに出てベースを唸らせれば、あにゃと菫が顔を寄せ合い演奏を繰り出す。身体を揺さぶりながら雄々しき様で歌うMiwaの姿も強烈なインパクトを放っていた。
2本のギターのハモリから始まった『ADAMAS』でも、Amiの叩き出す高速なビートに乗せて、楽器陣がソリッドな音を次々と繰り出す。菫とあにゃのかけ声も、この曲に勇ましさを描き加える嬉しい要素だ。荒々しく駆ける演奏の上で、高らかに歌いあげるMiwaの姿も気持ちを奮い立てる。

フロントにはみさの姿が。彼女は雄大な楽曲に乗せ、得意の指弾きで野太いベース音を次々と繰り出してゆく。楽曲にベースの演奏でくっきりとした表情を描き出すようだ。途中からスラップを繰り出し、みさは演奏に跳ねた表情を描き加えていった。
立て続けに、あにゃと菫による2本のギターが寄り添うギターソロのコーナーへ。常にユニゾンでプレイしながら、ときに上手くハモらせたり、ソロを交わしあうなど、それぞれの持ち味もしっかりと提示してゆく。ライトハンド奏法から速弾きまで、ユニゾンしたプレイを見せながらも、個々の色も2人はしっかりと見せていった。
ライブも、後半戦へ。メロハーな要素を全面に押し出した『Mh’ithrha』では、Miwaがときにがなりながら、この場に激しくも甘美な世界を描きだす。笑顔でプレイし続けるAmiとあにゃの表情も印象的だ。巧みに緩急を付けつつ、一瞬のブレイクから一気に攻撃性を増すように演奏が荒々しく駆けだす様にも胸を熱くした。

2本のギターの雄大なユニゾンの演奏へリズム隊が加わるのを合図に、楽曲は一気に駆けだした。『夢見草』でもSiriusは、メロハーな要素を魅力に、歌心で観客たちの気持ちを揺さぶりだす。この曲では、菫とみさ、菫とMiwaが背中合わせで演奏を繰り出す様も見せていた。その横で、無邪気に飛び跳ねながら演奏をするあにゃの姿に彼女らしさを覚えていた。
続く『Stardust way』では、美しくも雄大な景観を描き出す楽曲に乗せて、Miwaが手を揺らしながら愛らしい声で歌えば、フロアでもたくさんの手が上がり、演奏に合わせて揺れ続けていた。歌に酔う。歌を彩る演奏に、同じように心が酔いしれる。これぞロックバラードというべき歌心に満ちた楽曲を通して、Siriusは観客たちの心を暖かな思いで満たしていった。

ライブも最後のブロックへ。Miwaが野太い声を奮い立てれば、2本のギター陣が勇壮な音を突きつけた。Siriusは『Fake you』を突き刺すような声で歌い、すでに熱情した観客たちの感情をさらに挑発し続ける。Miwaが声を唸らせるたびに気持ちが奮い立ち、高く拳を突き上げずにいれない。とても貫禄のある楽曲だ。ときにふてぶてしい様も見せるMiwaの雄々しき姿が、この場にいる人たちを熱狂の渦へガンガンに巻き込んでゆく。

続く、温かい歌始まりの『Daffodil』でも、Miwaが「いくよ!」と叫ぶ声を合図に、大勢の観客たちが声を張り上げて騒ぎだす。熱狂する観客たちの姿を笑顔で見つめるあにゃ。対照的に菫は、けっしてクールな表情を崩すことはない。Amiもみさも、身体を揺さぶり演奏を繰り出す。フロントで強い存在感を放つMiwaも、雄々しき様で観客たちを挑発し続ける。
『TRIDENT』では、菫とみさが寄り添って演奏を行えば、Miwaがあにゃの肩を組んで歌う。凄まじい攻撃的な演奏の上で、雄々しくも気高き様でエモーショナルに歌い上げるMiwaの貫禄のある姿に、熱狂しながらもずっと心が引き寄せられていた。


最後にSiriusは『Phoenix』を叩きつけ、この空間をヘドバンの嵐が巻き起こる景色に染め上げた。台の上に左足を乗せ、挑む様で演奏を繰り出すみさの姿もインパクト強く瞼を刺激する。この曲ではメンバーたちも髪の毛を振り乱して演奏。身体を貫く鋭利な音の数々を突きつける彼女たち。5人が作りあげた燃え盛る演奏に向け、観客たちも拳を熱狂の翼にして羽ばたき続けていた。

アンコールは、攻撃的なリフを高速で叩きつける『Maria』からスタート。徹底して攻めた姿勢で音を繰り出す楽器陣。その上でMiwaが、感情を揺さぶる歌心を持ったエモい声を高らかに響かせる。激しさと歌心がひとつに溶け合った、まさにSiriusらしい楽曲だ。

そのうえで彼女たちは、メロハーな『LUCIFER』を叩きつけ、気持ちも身体もエモく激しく揺さぶりだす。無数の拳が突き上がる、その様が圧巻だ。この曲では竿隊の3人が横一列に寄り添い、演奏をする場面も見せていた。ヘヴィメタルの悪魔と口づけを交わした彼女たちの雄々しくも攻撃的な姿に熱狂せずにいられない。そして…。

最後にSiriusは歌曲の『Polaris』を演奏。Siriusが始まったときから今も、彼女たちはこの世界で一番眩しく輝く存在を目指してきた。挑戦の旅は、今も続いている。その輝きを手にするため、Siriusはいくつもの試練を乗り越えて逞しさを増してきた。いつまでも『Polaris』は、彼女たちの強い意志を示した歌として輝き続け、その思いに共鳴した人たちを仲間として招き入れてゆくだろう。全曲を披露したライブの最後に始まりの歌を奏で、自分たちの信念は何も変わっていないし、揺るがないという姿勢を見せてきたのが嬉しかった。いや、そこがSiriusらしかった。

TEXT:長澤智典
《SETLIST》
- 1.Fly High
- 2.Playing Games
- 3.朝月夜
- 4.Reflection in the Darkness
- 5.TRIGGER
- 6.烏鷺
- ~ドラムソロ~
- 7.EDEN
- 8.Anesthesia
- 9.Burning Warriors
- 10.ZEAL
- 11.ADAMAS
- ~ベースソロ~
- ~ギターソロ~
- 12.Mh’ithrha
- 13.夢見草
- 14.Stardust way
- 15.Fake you
- 16.Daffodil
- 17.TRIDENT
- 18.Phoenix
- -ENCORE-
- EN1.Maria
- EN2.LUCIFER
- EN3.Polaris