ジェフ・ベックのトリビュートライブは、孤高の天才ギタリストへの愛と敬意が伝わる、この日限りの素晴らしい公演となった。

2023年5月にロイヤル・アルバート・ホールで開催された追悼コンサート『A Tribute to Jeff Beck』の日本版。ジェフ・ベック・バンドのアンサンブルに乗せてギターを奏でるのは、Char、布袋寅泰、松本孝弘だ。集まった約9,000人のファンへ向け、初競演を果たす3人のギタリストが、それぞれの想いを胸にジェフの名曲を届ける。

1番手は、今回のホストを務めるChar。冒頭のインスト曲『Led Boots』からいきなりストラトキャスターが豪快に唸る鮮やかな滑り出しで、直系と言っていいほど影響を受けたジェフのサウンドを、そしてスピリットを、自身の解釈も含めて活き活きと表現していく。アーミングやボトルネック奏法を駆使したり、ほかのパートとユニゾンしたりしつつ、ジェフ・ベック・バンドのロンダ・スミス(Ba)、アニカ・ニールズ(Dr)、ゲイリー・ハズバンド(Key)とコミュニケーションを取り、圧倒的な声量を持つジミー・ホール(Vo)を迎え入れて『Morning Dew』『Wild Thing』を聴かせるなど、とても楽しそうにギターを弾く姿が印象深かった。「いちおう連れてきてるんで」と、Charがジェフの写真をオーディエンスに見せる粋なシーンも。

続いて、松本孝弘が登場すると、ゴールドトップのレスポールでおもむろに弾き始めたイントロから大歓声が湧く。まず選んだ曲は、過去にB’zのライブで披露したこともある、スティーヴィー・ワンダー作曲の『Cause We’ve Ended As Lovers』(邦題:『哀しみの恋人達』)。ジェフへの厚いリスペクトが伝わってくる忠実な演奏となっており、有明アリーナの広い空間を覆い尽くす切ない泣きのギター、まるで歌っているかのようなその響きに惚れ惚れしてしまう。同じくインストの『Too Much to Lose』では、ハードロッキンなアプローチや美しいチョーキングも際立つ。フュージョン色の濃いメロウな2曲を終え、松本は「どうもありがとうございました!」(彼のMCは全編でこれだけ)とステージを去った。

中盤は再びCharがバンドを率いて、ジェフ・ベック・グループ時代の曲に加え、ヤードバーズの代表曲『Train Kept A-Rollin’』、ジミ・ヘンドリックスのカバー『Little Wing』もエネルギッシュにプレイ。

最後に現れた布袋寅泰は、3人の中で唯一、2000年以降の曲より『Hammerhead』をチョイス。トレードマークと言える白黒の幾何学模様が施されたZodiac NEOを手に、ワウが鋭く効いたブルージーかつロックなサウンドで会場を沸かせる。「ジェフはこんなに素敵な時間を我々にプレゼントしてくれました。きっと天国で自分の曲を弾くギタリストたちを見ながら、“(そのフレーズは)違うよ、俺のトリックに全部ハマってる”と笑っているかもしれません。でも、彼から教わったスピリットをみなさんといっしょに楽しみたいと思って、今日はここに集まってます」というイベントをまとめるようなMC、テレキャスターの歌心あふれるクリーントーンが存分に映えていた『People Get Ready』も豊かな余韻を残す。

本編の締め括りは、Charと布袋によるギターバトル。「僕、群馬のCharと呼ばれてまして。この方は戸越銀座のジェフ・ベックと呼ばれていました」と布袋が紹介したり、「今日はジェフが与えてくれた機会だと思っています。ジェフ、サンキュー!」とCharが喜びを示したりと、和やかなムードも漂う中、味のあるメロディを熱く掻き鳴らし合ったシャッフルナンバー『Freeway Jam』、クライマックスにふさわしい超絶テクニカルな『Blue Wind』(邦題:『蒼き風』)の強力インストをアグレッシブに畳みかけた。

アンコールでは、バンドメンバーのソロ回しも交えて、Charがファンキーな『Jeff’s Boogie』を投下。そしていよいよ、Char、布袋、松本が初めてステージに揃い、ラストの『Going Down』へ。日本のスーパーギタリストが三者三様の音色をパワフルに解き放ち、時に背中合わせで弾いたりもするなど、少年に戻ったかのような笑顔のパフォーマンスが、観ていてなんとも心地いい。

極上のセッションに手拍子を送るオーディエンスも幸せそうで、プレミアムなライブは大盛況のうちに幕を閉じた。Char、布袋、松本のジェフ・ベックに対するリスペクトを堪能できたことが感慨深く、今回の公演がジェフを知るきっかけになったリスナーもいるはず。非常に意義のあるイベントだったと思う。

取材・文:田山雄士

《SET LIST》
  1. 1.Led Boots
  2. 2.Beck’s Bolero
  3. 3.Rice Pudding
  4. 4.Morning Dew
  5. 5.Wild Thing
  6. 6.Cause We’ve Ended As Lovers
  7. 7.Too Much to Lose
  8. 8.Superstition
  9. 9.Jailhouse Rock
  10. 10.Train Kept A-Rollin’
  11. 11.All Shook Up
  12. 12.Little Wing
  13. 13.Hammerhead
  14. 14.People Get Ready
  15. 15.Freeway Jam
  16. 16.Blue Wind
  17. <ENCORE>
  18. EN1.Jeff’s Boogie
  19. EN2.Going Down

演奏楽曲・使用ギター紹介

A Tribute to Jeff Beck by Char with HOTEI and Tak Matsumoto

WOWOWでの放送&配信が決定!

2月11日に有明アリーナで一夜限り開催された本公演の模様がWOWOWオンデマンドにて配信中!

詳細はこちら
https://www.wowow.co.jp/music/jeffbeck/


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