男女ツインボーカルの4人組バンド、フィルフリークが東京・恵比寿LIQUIDROOMでワンマンライブを開催した。

テレビ朝日主催の勝ち抜き対バンイベント『ROAD TO EX 2019』で優勝して以降、紆余曲折を経ながらも、着実にステップアップを重ねてきたフィルフリーク。ツアー最終公演となったこの恵比寿LIQUIDROOMは、4年前に同企画のセミファイナルが行なわれた会場であり、“ワンマンライブで帰ってきたい!”と長く目標に掲げていた会場でもある。

ステージのスクリーンに映っていたアナログ時計や歯車がカタカタと音を立てて回転し始め、2014年のバンド結成までを遡るオープニングムービーが流れ出す。そして、広瀬とうき(Vo&Gt)、ゆっこ(Key&Vo)、小竹巧(Gt)、ツカダユウキ(Ba)、サポートの本多響平(Dr/irienchy)と、白地の衣装で合わせた5人が登場。

“君がいなくても 別に僕は死にやしないけど それでも君が俯いてるのと 顔を上げ前を見てるのじゃ この歌の詩が変わる”と胸中を吐露する『アナザーストーリー』から、ライブは勢いよくスタートした。ファンの間では周知のとおり、事故で左腕を骨折し、2022年11月末〜2023年10月末の約1年、フィルフリークのギタリストを離脱せざるを得なかった小竹のことを踏まえて広瀬が書いた、エールとも言える熱く感動的な楽曲だ。逆境を乗り越えて今ここに凛と立っている彼らの姿が美しかったのはもちろん、バンドの息ぴったりな演奏も素晴らしく、いきなり心が引き込まれてしまう。

理想的なテンションのままに繋いだ『NAMI』の間奏では、広瀬が「僕の大切な友達を紹介します」と笑顔で宣言。ゆっこ、ツカダ、本多を順に呼び上げたのに続いて、「骨折から復活しました!」と小竹の名を力強く叫び、全快を印象づける華麗でメロディアスなギターソロが高らかに鳴り響いたシーンもたまらない。

『0024』ツアーファイナル、恵比寿LIQUIDROOM。今日は来てくれて本当にどうもありがとうございます。いろいろあった数年間でした。そりゃそうだよね、人生だから。それでも音楽が好きで、メンバーが好きで、やめることができなかった俺らの歌を!

広瀬の言葉で『雨天でも結構』になだれ込み、5人のパフォーマンスはさらに熱を帯びていった。過去最大キャパのワンマン、バンドの新たな挑戦に対しての抑え切れない衝動を爆発させるかのように。8ビートで駆けるアンサンブルが気持ちいい『非素数ガール』になれば、フロアから自然と手拍子も湧く。

私が“せーの!”と言ったら、ピースで“YEAH! YEAH!”と返してください」などと、ゆっこがオーディエンスに楽しみ方をレクチャーした『KOIがハジマル』は、フィルフリークの魅力である男女ツインボーカルがハンドマイクで躍動。ポップでラブリーな2人の掛け合いが冴えわたり、場内もグッと明るい雰囲気に。

一体感がどんどん増す中、この日のために作ってきたという新曲『シアワセモード』を投下。ここでもゆっこが考案した振り付けを積極的に教え、広瀬とのボーイミーツガールな歌の世界観でチャーミングに聴かせる。小竹の爽快なカッティングギター、ツカダのダンサブルなベースラインも輝きを放ち、初披露とは思えないほどの盛り上がりを見せた。

中盤の『恋人を終わらせよう』からは一転、切なくもエモーショナルなミディアム曲を連発。「これが自分たちらしさなのかもしれないと思った曲です。泣きながら笑えることがいちばん正しいんだなって」と始めた『結婚前夜』では、そう話した広瀬が歌詞を飛ばし、ゆっこも緊張でピアノを間違えてしまい、演奏をやり直す場面があったけれど、ミスで和やかムードが生まれる&観客の爆笑を誘うくだりを含めて、フィルフリークらしさがわかりやすく見えた瞬間だった気がする。

その後も、彼氏がいる人を好きになってしまったときに作った『Lala』、広瀬が亡くなった祖父への想いを赤裸々に歌う『我儘なところがあなた譲りだな』、来てくれた人たちへ感謝を伝えようとするバンドの気概と場内に轟く大きなシンガロングが眩しかった『Remain』など、言語化が難しいであろう複雑なテーマを、ストーリー性豊かに、決してありきたりではない形でリアルに描きつつ、ドラマティックなアレンジに仕上げた、歌詞が聴き取りやすくメロディも親しみやすい、これぞフィルフリークというナンバーの畳みかけに心揺さぶられるばかり。

ツアータイトルの『0024』は、1日が24時間であること、その繰り返しが日常であることを示したものだったようで、“時の経過”を感じさせる曲がセットリストに揃っていた。この一年、ライブ活動が満足にできないぶん、懸命に制作してきた曲も多く、メンバーも演奏しながらさまざまな想いが駆け巡っていたに違いない。ブルーの照明と疾走するサウンドで清々しく届けた『アオカゼ』のあと、バンドの意思を汲んで広瀬が語り出す。

どうしても諦められない夢があって、バンドをやっています。武道館でやること、ドームツアーをやること、もっとたくさんの人に観てもらうこと。中でもいちばんの夢は、支えてくれているスタッフやいっしょに夢を見てくれているメンバー、フィルフリークの音楽を好きと言ってくれて会場まで足を運んでくれるあなたを、僕らの作る曲で幸せにすることです

スタッフには億万長者になってもらいたい。メンバーにはフィルフリークだけで生活できるようにさせたいし、何歳になってもバンドをやっていたい。そういう夢があるからこそ、もっともっと売れたい。“ソールドしなかったリキッド、観に行ったんだよ”って、ソールドしたリキッドで言ってほしい!」と、悔しさを滲ませつつも再挑戦したい気持ち、前を向く姿勢を窺わせた広瀬。

これからもたくさん迷って、たくさん失敗して……それでも仲良くバンドを続けていきます。目の前にいるあなたも、誰ひとり失わずにいたいので、いっしょに歩いてください!」と思いの丈を振り絞り、ラストを飾ったのは代表曲『サイドストーリー』。5人が持てる力すべてを注いだ、生きざまがビシビシ伝わってくる気迫十分な演奏で、自分たちの未来を明るく照らし、フィルフリークの特別なワンマンライブは幕を閉じた。

終演後には、新企画「フィルフリ感謝祭 -骨折中に助けてくれた人全員集合編-」の開催を発表。3月24日(日)に下北沢シャングリラで行なわれる本イベントは、その名のとおり、小竹がアクシデントに見舞われた際、サポートメンバーとしてバンドを支えた仲間たちが一挙に駆けつける。参加アクトは、フィルフリークをはじめ、あるゆえ、ORCALAND、Faulieu.、Broken my toybox、シロとクロ、irienchy、RIRIKO BAND、HIGH BONE MUSCLEコピーバンドの計9組(会場BGMはフィルフリークの元ギタリストの三上大鳳が担当)。この日限りのハッピーで賑やかなライブになるはずなので、ぜひ足を運んでみてほしい。

取材・文:田山雄士
Photo:スエヨシリョウタ( @sueyoshiryouta )

《SET LIST》
  1. 1.アナザーストーリー
  2. 2.NAMI
  3. 3.雨天でも結構
  4. 4.非素数ガール
  5. 5.KOIがハジマル
  6. 6.シアワセモード
  7. 7.ほんね、
  8. 8.恋人を終わらせよう
  9. 9.結婚前夜
  10. 10.ホワイトストロベリー
  11. 11.Lala
  12. 12.ドラマ終わりに
  13. 13.我儘なところがあなた譲りだな
  14. 14.キニ知ラズ
  15. 15.Remain
  16. 16.アオカゼ
  17. 17.サイドストーリー

広瀬とうき(Vocal/Guitar)使用楽器・機材紹介

フィルフリーク

フィルフリ感謝祭 -骨折中に助けてくれた人全員集合編-

フィルフリ感謝祭
-骨折中に助けてくれた人全員集合編-

2024.3.24(SUN)
下北沢シャングリラ
OPEN 14:00/START 14:30

【チケット】前売り/¥4,000- 当日/¥4,800- (D代別)

【Act】フィルフリーク / あるゆえ / ORCALAND / Faulieu. / Broken my toybox / シロとクロ / irienchy / RIRIKO BAND / HIGH BONE MUSCLEコピーバンド

https://eplus.jp/sf/detail/4029660001-P0030001


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