思い思われあう輝く関係を、これから何年何十年も消すことなく、お互いを照らし続けていこう。
今年俳優デビュー満10年を迎えた大原櫻子が、5月に行ったライブハウスツアー「10(天)まで届け!!」に続き、 10月に名古屋・大阪・東京・福岡を舞台にした“Zeppツアー2023「大原櫻子10(点)灯式」”を敢行した。同ツアーの中から、Zepp Hanedaで行われた公演の模様をお届けしたい。
厳かなSEに乗せメンバーが、そして、大原櫻子が舞台へ姿を現した。その間、舞台の上の灯り(明かり)が、点いたり消えたりを10回繰り返していた。それは、大原櫻子のデビュー10周年と、「10(点)灯式」をかけてのこと。その演出が、さりげなくも心憎い。
アコギを手にした大原櫻子が、白いスポットライトに照らされながら「いきなり歌いだしたり いきなりキスをしたり」と、弾き語りで『ちっぽけな愛のうた』を歌いだした。まるで、目の前30cmの距離で優しく歌いかけられているような感覚だ。彼女の肌の温もりまで伝わってきたように感じられたのが嬉しい。思いを零すように歌う声へ寄り添う演奏。その音色が少しずつ色を放つのにあわせ、大原櫻子の歌声にも次第に熱が加わりだす。側で寄り添っていた歌が、いつの間にか眼前へと迫るどころか、心の中へ声の手を伸ばし、優しくハートを撫でてゆく。それくらい彼女の歌声が、この曲に込めた愛しい人への思いが、生々しく‥いや、強い存在感を持って迫っていた。終盤に見せた伸びやかな彼女の歌声にも、気持ちがキュッと押されていた。
ここから一気に眩しい輝きを放つように、大原櫻子は手にしたタオルを振り上げ、明るく元気に、力強く『Hello My Fave』を歌いだす。強い光を放つ歌声に気持ちが前へ前へと押される。フロア中でも、ときおり飛び跳ねながら歌う彼女にあわせ、大勢の人たちが手にしたペンライトやタオルを振りながら飛び跳ねる。後半には、フロア中の人たちが腕を振り上げ、高らかに声を張り上げて大原櫻子の歌声と掛け合う様も誕生。この一体化した、いや、一緒に熱を脹らませてゆく関係がとても心地よい。
「みなさん、拳上げる準備は出来てますかー」。演奏は、止まることなく『透ケルトン』へ。エレキギターを手にした大原櫻子は小刻みにストロークをしながら、気持ちを思いきり解き放つように声を張り上げて歌っていた。掻き鳴らすギターに乗せ、心の内側に渦巻く感情を、彼女は胸を撃ち抜く歌の音符という弾丸に変えて放っていた。大原櫻子に向けてたくさんの眩い輝き(ペンライトの光)が、カラフルな色を浮かべながら波のように押し寄せる。
フロア中から飛び交う声援。その中の、女性の叫んだ「大好きー!!」の声も印象的だった。この日はカメラも多数用意。いつか、どんな形かわからないが、この日の模様を観られると思えたら楽しみが倍増した気分だ。
次のブロックは胸をドキドキ騒がせるカラフルでポップなロックンロールナンバーの『ポッピンラブ!』からスタート。大原櫻子の心が色づくのにあわせ、演奏も軽快に走れば、この空間をウキウキとした風が走り抜ける。フロア中の人たちも彼女の鳴らすタンバリンの動きに合わせ、腕を振り上げてエールを送るなど、気持ちをラブな色に染め上げてゆく。曲が進むごとに心が華やかに色付きだす。それって、恋したときの気持ちがどんどんときめきだすのと一緒じゃないだろうか!?
エレピとストリングスの音色が広がりだすのにあわせて流れ出したのが、『マイ フェイバリット ジュエル』。アコギを手にした大原櫻子は、目の前の一人一人へ語りかけるように、その声に輝きをまぶしながら歌いかけてきた。背景には、ジュエル代わりの無数の光の輝きが眩しく煌めいている。照明などを用いた演出も曲を彩る要素にしながら、彼女はこの場にロマンチックな、でも少し切ない感情も差し色にしながら歌を届けていた。
ギターを置いた大原櫻子は、歌詞に綴った思いへぐっと気持ちを溶け込ませ、胸に郷愁を抱きながら、ミドルメロウな『Grape』を歌いだした。曲が進むごとに少しずつ歌声へ力を加え、小さな思いへしっかりと熱を注ぎ込む。歌詞にあわせ、あの頃の自分を思い返しながら思いを巡らせていたのは、彼女の歌声が過ぎ去った真っ直ぐな青春時代の思いを連れ戻してくれたからかも知れない。大原櫻子の歌声を心の宝箱を開く鍵にしながら、胸をキュッと潤す切ない思いに今は浸っていたい。
「いつの間にか 微睡んでた 夜風と揺れるタクシー」。アコギの演奏に乗せ、いや、爪弾く音色へ寄り添うように、大原櫻子は愛おしさを胸に、自分の悲しい胸の内にも触れながら、切々と『星の日』を歌いだした。途中からいろんな楽器の音が加わるとはいえ、極力シンプルな音の上で、秘めた思いを一つ一つ心の中からたぐり寄せては、儚い声に乗せて歌っていく。曲が進むにつれ次第にスケールを増す演奏。いや、大原櫻子の歌声が生々しく気持ちを解き放つごとに、その思いへ寄り添うように演奏陣が色を加えていた。
MCを挟み届けたのが、最新ミニアルバム『スポットライト』に収録した『どうして』。最新作に収録した曲たちには、一人一人異なる女性の心模様や人生物語を描き出している。彼女は、主人公の女性の気持ちへ寄り添い、より深くその思いへ自身の感情を重ねあわせていく。恋にもがき葛藤するヒロインの痛い心模様へ、大原櫻子はリアリティを持った色を描き加えるように歌っていた。
続く『寂しいの色』も、そう。ダウナーでドープなエレクトロ音も組み込んだ楽曲の上で、自問自答するようにもがき、切なさに浸る女性へ向け、少しでも心に花を咲かせられるようにと歌っていた。色を落とした蒼い空間の中、大原櫻子は主人公の気持ちの奥へ奥へと身を落とし、終わりなき葛藤を繰り返す女性の心情に自身を染め上げ、届かぬ思いを抱いた女性の胸の内を、寂しい心模様へ少しずつ色を塗り重ねるように歌っていた。
この日のライブは、来年ソロデビュー10周年を迎えることから、最新作からの楽曲はもちろん、9年間の日々の中から1年ごとに1曲ずつ選び出して歌っていたことも語ってくれた。
次に披露したのが、このツアーのために作った新曲の『I want CHU』。“CHU”の言葉もインパクトを放つように、演奏が始まった途端に恋にときめく思いが心の中で膨らみだし、カラフルに染まりだす。いや、トキメキとドキドキした感情が一瞬で点灯する。観客たちも、初見にも関わらず楽しく身体を揺らしていた。
10月という季節に似合う曲として届けたのが、『オレンジのハッピーハロウィン』。大原櫻子が鳴らすタンバリンの音にあわせてクラップをする人や、腕を揺らす人たちが続々登場。中には、ペンライトの色をオレンジに変え、この空間を大きなカボチャ色に染め上げる人たちも。後半には、彼女と一緒に「TRICK OR TREAT」や「HAPPY HAPPY HALLOWEEN」と歌声を交わす場面も登場。大原櫻子もみんなもかわいいモンスターに変貌し、楽しい宴を作りあげていた。歌のやりとり一つでも、ささやき声から大声まで、共に声を交わし歌いあげることを笑顔で楽しんでいた。「TRICK OR TREAT」「HAPPY HAPPY HALLOWEEN」、みんなで一体化していける最高の呪文じゃないか。
スケール大きな演奏に乗せ、ガーリーなポップシンガーに歌声の色を染め上げた大原櫻子が、心を晴れ渡らせるように『ツキアカリ』を歌っていた。ちょっぴりセンチな思いを抱いた楽曲とはいえ、彼女が感情を解き放つようにおおらかに歌うからこそ、一緒に気持ちのギアを少しずつ上げながら、楽しさの夜風をどんどん取り込んでいた。
『Carnival!』の演奏にあわせ、ゲストで埼玉西武ライオンズの公式パフォーマンスチームであるbluelegendsのメンバーが登場。4人のキュートなダンサーたちと一緒に、大原櫻子自身も感情を超カラフルな色に染め上げ、この空間を、眩しいカーニバル会場に塗り上げていく。歌詞の一節ではないが、ほんと楽しんだ者勝ちだ。今は、彼女と一緒に身体を揺らし、心地よくクラップをしながらアガり続けていたい。さぁ、この勢いでこの空間を、この日世界中で一番華やかで楽しいカーニバルの会場に染め上げようか。
この勢いへ、爽やかな歌のシャワーを降り注ぐように、大原櫻子は『JUMP』を歌唱。彼女がステップを踏みながら飛び跳ねるたびに、一緒に身体を上へと揺らす人たちも登場。この曲を歌っているとき、大原櫻子の背中に小さな二つの白い翼が見えていた。その翼をはためかせ、彼女はこの場で軽やかに歌声を羽ばたかせていた。その羽ばたきにあわせ、振り上げた腕を翼変わりにしながら、みんなも心を天へと羽ばたかせていた。最後にジャンプでシメるところも最高だ。
「もっともっと燃えたいかー!!」。最後に大原櫻子は『My Way』の演奏にあわせ、その場でピョンピョン飛び跳ねては、手にしたタオルを大きく振り回し、自らもとことんまで盛り上がる勢いで歌っていた。ヒール姿など気にせずに舞台の上で飛び跳ねる彼女の姿が、とてもチャーミングだ。大原櫻子も、場内中の人たちも、タオルやペンライト、腕を振り回しながらピョンピョン飛び跳ねる。楽しいに限界はない。あるのは、笑顔だけ。そう、この笑顔、くしゃくしゃになるまで歪ませようよ。フロア中をカラフルな色が揺れる様は、まるで地上に咲き続ける花火のようにも見えていた。
アンコールは、アコギを手にした大原櫻子が「あまいあまいあまい~… 夢 見た」と歌いだす『bitter sweet cinéma』からスタート。彼女はこの空間に、いろんな感情のグラデーションを持った声を放っていた。「あまいあまい~」や「ながいながい~」と繰り返す歌声に、気持ちかズーッと引き寄せられる。身体は揺れながらも、心は舞台の上の大原櫻子の感情的な歌声の行方をずっと追いかけていた。いや、ずーっとずーっと引き寄せられ、引きつけられていた。
「この10年、光と影のある10年でした」と語りながら、大原櫻子は同じように日々頑張っている人たちに言葉を通してエールを送っていた。同時に、色々な人たちの言葉に励まされていた日々だったことをしみじみと語りながら、この先も一緒に歩んでいこうと呼びかけてくれた。
最後に届けた『大好き』では、観客たちの向けたペンライトやスマホの光に照らされながら歌唱。大原櫻子も大好きなみんなへ向けて、大好きな気持ちを歌声の光に変えて照らしていた。互いに思い、思われあう光が重なりあうことで、その輝きは、どんな闇の中だろうと、求めるべき道をしっかりと照らしていく。たくさんの思い、思われあう輝きに包まれたこの会場にいるだけで、ほっこりと温かい気持ちになれる。誰かを大好きになる思いほど、消せない輝きはない。その思い思われあう輝く関係を、これから何年、何十年も消すことなく、お互いを照らし続けていこうじゃないか。
Photo:ほりたよしか
TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 1.ちっぽけな愛のうた
- 2.Hello My Fave
- 3.透ケルトン
- 4.ポッピンラブ!
- 5.マイ ファイバリット ジュエル
- 6.Grape
- 7.星の日
- 8.どうして
- 9.寂しいの色
- 10.I want CHU
- 11.オレンジのハッピーハロウィン
- 12.ツキアカリ
- 13.Carnival!
- 14.JUMP
- 15.My Way
- -ENCORE-
- EN1.bitter sweet cinéma
- EN2.大好き
大原櫻子
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