オリアンティは野太い音の衝撃を持って観客たちを酔わせていった。

オリアンティが「日本独自のベスト選曲で贈る2日間のエクスクルーシヴ・ステージ」を開催。ここでは、TRiDENTをOAに迎えた、9月21日にZepp Diver Cityで行われた公演の模様をお伝えしたい。

オープニングはフレイムメイプルの杢目が美しいPRS Private Stockモデルを使用。

おどろおどろしくも荘厳なSEに乗せて、メンバーらが舞台へ。演奏が始まるや、荒々しく躍動するドラムビートにあわせ、オリアンティのギターが炸裂。彼女は冒頭に『Light It Up』をぶち噛まし、その雄々しき歌声と歪みを上げたギターの音を通し、フロア中の人たちの視線を集めだす。豪快なダンスロックの衝撃にあわせ、身体を揺らす人たち。オリアンティ自身は、ステージのフロントにドシッと身構え、PRSギターの音とシンクロするように身体を揺さぶり、胸の内から沸き立つ衝動を煽るような声に乗せて響かせていた。

ベーシストのJustin AndresはShabat Guitars Panther P Bassをプレイ。

演奏はさらに重厚さとブルーズな音を塗り重ね、迫りくる。言葉の一言一言を掃き捨てるように、オリアンティは『Never Make Your Move Too Soon』を歌いだす。彼女の歌声とブルーズなギターのフレーズが交錯しながら、この空間にドープな音の衝撃を落とし続ける。さぁ身体をゆったりと、でも深く深く揺さぶりながら、腹の奥底にズンと響くブルーズロックの衝撃に身を任せようか。終盤には、長めのギターソロが炸裂。気持ちが動くままに、ギターの旋律も声を放つように表情豊かな音を奏でていた。

ここからはメタリックなパープルカラーのPRS Custom 24 Orianthiを使用。

重厚なドラムビートへ絡むように演奏。オリアンティは低音域の効いた歌声を魅力に、言葉を突きつけるが如く『You Don’t Wanna Know』を歌唱。ギターを掻き鳴らしながら、言葉の一言一言を突きつけるように歌うたびに、身体に熱いブルーズな衝撃がのめり込む。この空間を飲み込むようなスケール大きなギターの演奏と芯の太い歌声で、彼女は観客たちの身体を揺さぶり続ける。

演奏は一気に荒々しい感情を剥き出しに襲いかかってきた。オリアンティは『What’s It Gonna Be』を通して、ハードエッジなロックンロールナンバーをぶち噛まし、これまで以上に観客たちの感情と身体を揺らしだす。さぁ、もっともっと音の衝撃を喰らい続けろとでも言うように、刺激的な音の弾丸を彼女は次々と叩きつけていった。

ハード&ブルーズなセッションを始めるように演奏がスタート。『First Time Blues』を通してオリアンティは、荒々しく唸る音の渦の中へ観客たちを飲み込んでゆく。胸の奥で沸き立つ思いを、彼女は歌声とギターの上へダイレクトに投影。間奏では、揺れ動く感情にあわせてギターの音どころかギター自体を揺さぶり、沸き立つ感情を、ブルーズな演奏の中へ溶け込ませ、この場にどっぷりとした心地よいウネリを作りあげる。バーボンをストレートで一気に飲み干したようなぶっ飛んだ感覚に身体が落ちてゆく。そんな酩酊へと導く心地よさが堪らなく気持ちいい。

アンプはオリアンティ、ギタリストのNeil SwansonともにOrangeを使用。ベーシストJustinの使用アンプはAguilarだ。

Heaven In This Hell』でオリアンティは、観客たちを黒いロックンロールの衝撃に乗せて、ディープでドープな世界へ落としてゆく。オリアンティの歌声へ連れだされるままに、ハード&ブルーズな音の唸る空間の中へ身を落とし、どっぷり浸り続ければいい。後半には嘆いた表情も提示。それもまた恍惚への階段だ。

次に届けたのが、マイケル・ジャクソンのカバー曲の『Black Or White』。シャキシャキっとしたリズミカルなギターのカッティング音が、気持ちを一気に天へと連れ出す。ちょっとブルーズなノリを持った、いなたい歌声で迫るオリアンティ。マイケル・ジャクソンとは異なる、オリアンティだからこそのルーズでブルーズな歌声と音の衝撃で、観ている人たちの身体を揺らしていた。終盤には、彼女らしいブルーズなセッションプレイも登場。自身の色を持って曲を染め上げていったところも、オリアンティらしさだ。

ステージ後方からのショットではアンプの裏にバックアップ用のOrange Rockerverb 100 MkIIIヘッドが用意されているのが分かる。

オリアンティは、ここでサンタナの『Europa』を奏でだした。とても哀愁を帯びた。いや、原曲以上にどっぷりとしたディープで艶めいた演奏だ。一つ一つのフレーズが、吐息のように迫れば、彼女にゆったりと抱きしめられてゆくような感覚さえ覚える。なんて色気を持ったギターの旋律だ。彼女の艶めいた心の揺れが、6本の弦の音を通して紡がれる。

その演奏が、次第に躍動するのにあわせ、楽曲はハード&ロックンロールな『Soul Sacrifice』へ。流れるような心地よい展開だ。荒ぶる演奏にあわせ、身体や、気持ちがどんどん躍動してゆく。途中にドラムソロを挟み、楽曲はさらに荒ぶる音を唸らせ、駆け続けていった。

アコースティックセットではGibson Orianthi SJ-200 Acoustic Custom in Cherryをプレイ。

ここからは、<Acoustic Set>へ。ギブソンのアコギに持ち替えたオリアンティは、ギターの出音を確かめるようにアコギを爪弾き続ける。歌声とアコギの演奏をシンクロするように、オリアンティは哀愁味を帯びた歌声をはべらせ、自ら酔いしれるように歌い奏でだした。2本のアコギのみのシンプルな演奏だからこそ、感情的に揺れ動くオリアンティの歌声の息吹が、目の前に迫ってきた。

ギタリストのNeilはGibson Hummingbirdを使用していた。

続いてアコースティックなスタイルで演奏したのが、カントリーミュージック。彼女の持つ音楽性の懐の深さや、表現力の卓越さを味わえるのが嬉しい。力強く弦を弾く音にあわせ、彼女の力強くも艶めいた歌声が羽を持ってフロア中に飛び交っていた。2本のアコギでセッションしてゆく様も嬉しく胸を騒がせる要素になっていた。心地よく、軽やかに。でも、しっかりとした存在感を与えながら演奏は続いていった。

再びエレキギターに持ち替えたオリアンティは、荒々しく躍動した演奏の上で、切っ先鋭い歌声を突きさすように『Contagious』を歌いだした。曲が進むごとに、オリアンティ自身の気持ちが高ぶるのにあわせ、彼女の歌声や演奏がエッジ鋭い衝撃を持って身体を直撃。どんどん熱を上げていく演奏に刺激を受け、身体も熱を蓄えだす。畳みかけるような歌の衝撃が、気持ちを揺さぶる。

高ぶる気持ちをさらにアゲるように、フロア中に豪快なロックンロールナンバーをオリアンティはぶち噛ました。彼女は、『Think Like A Man』を吐き捨てるように歌いながら、ブルーズでハードエッジなロックの衝撃を叩きつけていった。フロント陣3人が顔を見合わせて演奏する場面も強烈なインパクトだ。何より、豪傑なロックンロールに乗せて感情を吐き捨てるように歌うオリアンティの姿に、視線も心もずっと釘付けになっていた。

切れ味鋭い音をカッティングするオリアンティ。歯切れの良い音を背景に、彼女は胸の内から沸き立つ思いを少し艶めかせながら『Damn Fool』を歌唱。比較的シンプルな音に乗せて歌うことで、オリアンティの歌声の中から、妖艶な感情の揺れも明瞭に伝わる。ここでも彼女は、酩酊へと導く度数の高いブルーズなギターソロを披露。オリアンティのさりげなくても濃い誘いに乗りながら、心地よく身体を揺らしていたい。どの曲でもそうだが、感情の動くままに音を躍らせる彼女のギターソロは、気持ちを酔わせる良質な音のドラッグだ。タイム感を変えながら、終わることなく続くセッションに振れているのも、いい感じだ。

叩きつけたのが、これまでの中でも一番ヘヴィな衝撃を備えた『Sinner’s Hymn』。砲丸のような野太い音を、オリアンティは雄叫びも交え、舞台の上から次々と投げつける。重厚な音が胸へドスンと落ちるたびに、その衝撃をみんな心の両手でガシッと受け止めていた。大きな音のうねりに飲み込まれながらも、誰もが身体を心地よく揺らし続けていた。

ライブも佳境へ。ゆったりと、でも、一音一音に深みをもたせながらオリアンティがブルーズな旋律を奏でだす。彼女の歌声が連れてきたのは、『How Do You Sleep』。ここで、泣きのバラード系の楽曲を奏でるとは。胸の奥から込みあがる気持ちを歌う際には、ギターを弾くのを止め、朗々と歌いあげる様も時折見せていた。感情的な歌声に溺れる。いや、飲み込まれる。でも、どっぷりと浸れるそのひとときが、余計な意識や感情を取っ払ってゆく。だから、身体を前のめりにしながら、歌い奏でるその姿を追いかけていた。どんどん落ちてゆく、その感覚が堪らない。

最後にオリアンティは、みんなで一緒に歌おうと誘いかけるように『According To You』を演奏。彼女自身の気持ちが高ぶり、感情が天に向かって飛び立つように歌い奏でるのにあわせ、フロア中の人たちも、これまでよりも大きく身体を揺らし、一緒に高みへ高みへと気持ちを上げ続けていた。どっぷりとした世界を描き続けながら、最後に魂を開放してゆく。その振り幅を持ってオリアンティは、観客たちを魅了していった。

Jim Dunlop EVH-95:Eddie Van Halen Signatureワウペダルを踏む様子も。

アンコールでオリアンティが叩きつけたのが、ジミ・ヘンドリックスの『Voodoo Child』。感情を掃き捨てるように。いや、気持ちが動くままに自由に歌声とギターの旋律をオリアンティは解き放っていた。途中、床に膝をつき、ギターを演奏する場面も。この瞬間、彼女の身体にジミ・ヘンドリックスが憑依していたような様も披露。それくらいどっぷりと音の唸りの中へ身を投じ、彼女は野太い音の衝撃を持って観客たちを酔わせていった。メンバーそれぞれのソロプレイやセッション演奏も含め、オリアンティは最後の最後までどっぷりとしたブルーズなロックの衝撃を与え続けていった。 

PHOTO:Takumi Nakajima
TEXT:長澤智典

《SET LIST》
  1. 1.Light It Up
  2. 2.Never Make Your Move Too Soon
  3. 3.You Don’t Wanna Know
  4. 4.What’s It Gonna Be
  5. 5.First Time Blues
  6. 6.Heaven In This Hell
  7. 7.Black Or White
  8. 8.Europa ~ Soul Sacrifice
  9. 〈Acoustic Set〉
  10. 9.Contagious
  11. 10.Think Like A Man
  12. 11.Damn Fool
  13. 12.Sinner’s Hymn
  14. 13.How Do You Sleep
  15. 14.According To You
  16. -ENCORE-
  17. EN.Voodoo Child

Orianthi(Guitar/Vocal)使用楽器・機材紹介


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