舞台の上には、ジャンベを鳴らすパーカッショニスト / スティーヴ・エトウの姿が。ジャンベとドラムによるリズムセッションを挟み、楽曲が心騒がせる陽気なリズムを叩き出すのに合わせ、オルケスタ・デ・ラ・ルスのメンバー / NORA、JIN、ブラス・セクション、そして當間ローズを加えた演奏陣が舞台へ。ここからは、陽気なラテン楽団たちと、手拍子をする観客たちとの楽しいセッションがスタート。華やかな宴の音へ呼ばれるように、着替えを終えた大黒摩季がふたたび舞台へ。彼女は、オルケスタ・デラ・ルスのメンバーたちをパートナーに迎え、冒頭から情熱に満ちた姿で 「ほら♪ 踊りましょう」と『太陽のサルサ☀ ~¡Salsa del sol!~』を歌いだした。大黒摩季には、身体中から沸き立つパッションを思いきりダイレクトにぶつけるサルサなどのラテン系の楽曲がとても似合う。彼女は南半球の国のカルナバルを彩るシンガーに気持ちを染めあげ、心の底から沸き立つ情熱のリズムに合わせて「ほら♪ 踊りましょう」「ほら♪ 解き放って」と、オルケスタ・デ・ラ・ルスのメンバーたちと一緒に歌っていた。いつしか場内中の人たちも、陽気な祭り人に気持ちが染まっていたのも最高じゃないか!
『太陽のサルサ』が連れてきた夏気分をもっともっと楽しもうと、大黒摩季は『夏が来る』を熱唱。より強烈なラテンナンバーに進化した楽曲が、魂が奮える熱情した香りを次々と振りかける。サビで「夏が来る」と歌うたびに、場内中からも青い波のような光が舞台へ向かって押し寄せていた。途中には、メンバー同士の熱情したセッション演奏も登場。気付いたらこの場は、楽しさと幸せに導く陽気なカルナバルの園へと染め上がっていた。ひと足早い夏景色はとてもとても情熱的だ。その勢いをさらに増幅するように、大黒摩季が歌ったのが『Lie, Lie, Lie,』。情熱に情熱を重ねながら、その中へさりげなく闇の表情も覗かせることで、メリハリを持った演奏がさらに気持ちを熱く騒がせる。楽しい空気へより楽しい風を吹かせてゆくのは、心の奥に隠された闇を巻き込んだ熱風が吹いてゆくからだ。
演奏陣の形態を変えながらも、楽曲は止まることなく突き進む。『いちばん近くにいてね』でも、身体を騒がせるトロピカルなラテンのビートへさらに輝くリズムを降り注ぎ、大黒摩季は秘めた情熱も零しながら、でも、熱々とした感情で「いちばん近くにいてね」と高らかに歌っていた。フロア中の人たちも、太陽の輝きのようなオレンジのペンライトを左右に大きく振りながら、大黒摩季と一緒に、まるで恋や夏をハンティングするような気分ではしゃいでいた。
「次はヤバい、ヤバい」の大黒摩季の声を受けて現れたのが、DJ KOO from TRF。彼の熱い煽りとナビゲートへ導かれて流れだした大黒摩季ナンバーの数々。DJ KOOが、この空間を巨大なダンスホールへ塗りかえる。大勢のダンサーたちのはしゃぐ姿に合わせ、ガーデンシアターが本当に大きなダンスホールと化していた。何千もの人たちが、一斉にタオルやペンライト、拳を振りまわしてFEVERしてゆく様が壮観だ。 次々とアゲアゲな大黒摩季ナンバーを繰り出しフロアを騒がせる。そんなDJ KOOが繫いだのが…。
「まだまだ熱くなりたいかぁ!!」と叫ぶ声。この空間を、今まで以上に猛烈な暑さで包み込むように、大黒摩季はパッション漲る歌声で『熱くなれ』を熱唱。彼女はDJ KOO、BLACK STARZたちや演奏陣と熱く絡みながら、もっともっと熱くなろうと、この空間を夏の熱帯夜へ染めあげていった。真っ赤なペンライトを振り上げる観客たちの腕の動きも、これまで以上に激しく情熱的だ。誰もが感情のストッパーを壊し、魂が燃え立つままに踊り騒いでいた。
ライブも終盤へ。「心を女子高生へ戻しましょう」の声を合図に、楽曲は『恋はメリーゴーランド』へ。恋に恋していたあの頃の純粋がゆえの無敵な情熱を身にまとった大黒摩季とメンバーらが、曲に合わせて一緒にはしゃいでいた。でも、パワフルな声を張り上げる彼女の姿からは、やはり酸いも甘いも知り尽くした妖艶な香りが漂い、それがフレッシュな歌に深みを与えていた。
打楽器のセッションを合図に、大黒摩季は高ぶる気持ちを進撃旗のように掲げながら、もっともっとパワフルに、誇り高く凛々しく突き進もうと『アイデンティティ』を熱唱。自ら「燃えろ」と歌いながら、沸き立つ情熱をガンガンにぶつけていた。いつしかこの会場は、拳が雄々しく突き上がるロックな会場に塗り変わっていた。大黒摩季の歌声を先頭に共に突き進みたい。大黒摩季の歌声を力に新しい時代の動きを作りたい。二階の舞台上からみんなを先導するように歌う雄々しい彼女の姿は、まるでフロンティアへと導く先導者のようだった。
楽曲はさらに速度を上げ、華やかに騒ぎだした。大黒摩季はスピーディーなパーティー系のスカパンクナンバー『Anything Goes!』に乗せ、気持ちを熱く騒がせるように歌っていた。お立ち台に右足を乗せ、スタンドマイクを巧みに操り、今にも客席へ飛び下りんばかりの勢いと姿勢で熱くけしかける姿が胸熱だ。客席中から突き上がった拳は、けっして下りることはなかった。それくらい、誰もが夢中になってはしゃいでいた。
本編最後を彩ったのが、盟友、坂井泉水との約束のもと制作された『君に届け』。遠くにいる愛しい君へ届けるように、そして、ここにいるみんなの心にもこの想いが届き、心の中で芽吹くようにと、晴れた心模様で大黒摩季は歌っていた。歌っているその顔には、とても幸せに満ちた優しい表情が浮かんでいた。終盤には、大黒摩季の動きに合わせ、フロア中の人たちも掲げた手を左右に大きく振りながら一緒に声を張り上げていた。その想い、きっと盟友にもしっかり届いていただろう。
アンコールは、大黒摩季が「ハッ!!」と声を張り上げ、500kgもあるという大太鼓を叩く姿からスタート。いつしか舞台の上には太鼓ドラマー・ヒダノ修一を先頭に、尺八の石垣征山、三味線の小山豊が登場。その編成で大黒摩季が優しい声を響かせて歌い出したのが、『東京 Only Peace』。とても開放的な、心を晴れた景色へ導く楽曲だ。この曲は、東京オリンピックの時期に誕生。大黒摩季なりの“おもてなし”の心と、日本人だからこそ伝えられる平和を願う思いや相手を思いやる豊かな心模様を曲に込めている。世界中が悲しみに暮れる今の時代だからこそ、改めて平和を願う思いを、この曲を通して分かち合おうと歌っていた。中盤には、ふたたび大黒摩季が大太鼓を叩き、満員の観客たちと熱いコール&レスポンスをしていく姿も登場。終盤には、この日の出演者たちも舞台へ迎え入れ、共にこの歌に込めた希望と平和と愛と夢などの願いをみんなで分かち合っていた。大黒摩季は『東京 Only Peace』に日本人の心の侘び寂びを詰め込みながら、平和への祈りも込めつつ、ここを華やかな宴の場へと染め上げていた。
「こんなわたしを30年も愛してくださり、ありがとうございます。いつも躓いてばかり、いつも傷だらけ。そんなアーティストを30年歌わせてくれてありがとう。わたしに最後の居場所を与えてくれてありがとう。みなさんが愛してくれるから、一人の男に愛されなくても心強いです。そしてまた、恋するんだもんねぇ。みんな、ついてくるか、熱くなりたいか!」
最後のブロックは、今回のツアーに参加した全サポートメンバーが舞台上へ集結。歌ったのが、『ら・ら・ら』。場内中の人たちが優しく手拍子をしながら、「ら・ら・ら らーらー」と大きく左右に手を振りながら大黒摩季と一緒に歌っていた。とてもとても温かい雰囲気だ。一人一人が、みんなが心を一つにしながら『ら・ら・ら』を歌うその景色は、とても幸せに満ちていた。途中から大黒摩季は客席に降りて、車椅子席へと向かう。自身を支えてくれる仲間たちと声の手でハイタッチをしながらフロア中に出来た数多くの手のアーチを潜りながら、大きく左右に手を振る仲間たちと、この時間を分かち合うように歌っていた。途中では、無伴奏の合唱として「ら・ら・ら ららーららーらー やっぱり 今日も明日もあなたに逢えない」と歌いながら、心を一つに声を重ねてゆく場面も登場。澄み渡るその美しいハーモニーが、みんなで心を一つにしたその歌声が、音を止めて合唱だけで歌う声が、未来を照らす平和の声としてどこまでも響き渡っていた。
最後の最後に大黒摩季がぶつけたのが、その熱い生き様を歌にした『ROCKs』だ。「まだまだ止まらないでいくよー、ついてこい!」の言葉を合図に、会場中の人たちの気持ちを歓喜の声と熱い魂の叫びで塗りつぶすように、大黒摩季は高らかに『ROCKs』を歌っていた。大黒摩季の歌に合わせて突き上がる無数の拳と熱い声。この熱さがたまらない。この刺激を、ずっとずっと求めていたい。熱情した魂が気持ちを熱く騒がせる。熱情した炎を受け取った大勢の人たちが、共に「おーおーおー」と声を張り上げ、大黒摩季からロックの魂を受け継いでいった。
この続きを味わえるのは何時!?そんな風に、誰もが大黒摩季と同じように“NEXT”の景色を見つめながら、高く拳を突きあげ、声を張り上げ、魂を熱く染め上げていた。まだまだ人生はこれからだ!!
Photo:MASA、達川範一(B ZONE)
TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 1.Sing
- 2.SPARKLE
- 3.あなただけ見つめてる
- 4.DA・KA・RA
- 5.チョット
- 6.Harlem Night
- 7.別れましょう私から 消えましょうあなたから
- 8.永遠の夢に向かって
- 9.あぁ
- 10.空
- 11.夢の続き
- 12.Come To Me, Once Again
- 13.太陽のサルサ☀ ~ ¡Salsa del sol! ~
- 14.夏が来る
- 15.Lie, Lie, Lie,
- 16.いちばん近くにいてね
- 17.熱くなれ
- 18.恋はメリーゴーランド
- 19.アイデンティティ
- 20.Anything Goes!
- 21.君に届け
- <ENCORE>
- EN1.東京 Only Peace
- EN2.ら・ら・ら
- EN3.ROCKs