11年前に『Euphoria』というアルバムを作りたいと思い立ったけど、その頃はまだ完成度の高いものはできないだろうなって。でも、自分がいちばん欲しい音楽を、素のまんまの私でいられる歌を、いつか形にして届けたかった……やっとそんなアルバムができました。20、21歳くらいの私の部屋とか生活とか匂いとか、死ぬまで歌えるような変わらない気持ちを詰めた歌たちなので、みんなに好きになってもらえるかわからないですが、大事にやっていきます

11年越しに完成した念願のアルバムについて、あふれる想いをこぼさないように語る植田真梨恵。彼女の頭の中で鳴っている音が忠実に再現された、自身の好きな要素がピュアに凝縮された、ネイキッドかつ濃厚な楽曲の数々は、時に激しかったり、時に切なかったり。あるいは、寂しかったり、力強かったりと、人肌感の豊かさがとても愛らしく、ライブにおいては聴き手をより深いインナートリップへと誘ってくれた。

東名阪福の4ヵ所を回る植田真梨恵の4thアルバム『Euphoria』リリースツアーより、2本目となった東京・渋谷CLUB QUATTRO公演の模様をレポートする。

クアトロ内に入ると、グッズショップの近くにはアナログレコードプレイヤーやキャンドルで彩られたフォトスポットが。さらに、フロアへ続く階段前には本人の手作りによる門(ゲート)もデコレートされており、早くもこちらの気持ちを高めてくれる。

やがて、青の照明とともに“深海と宇宙”を思わせるひんやりとしたSEが流れ、老若男女さまざまな客層で埋まったハコに、渡邊剣太(Gu)、麻井寛史(Ba)、車谷啓介(Dr)、廣瀬武雄(Key)からなるバンドメンバー、そしてアシッドブルーの「NO SIGNAL ロングスリーブT」にフリルを付け、白のショートパンツ、ベージュのロングブーツというフェミニンな装いでまとめた植田真梨恵(Vo&Gu)が登場。

麻井のベースから始まるアルバムのタイトル曲『EUPHORIA』でライブは幕を開けた。ステージには一転して赤のライティングが鮮烈に降り注ぎ、“ハカセ”の愛称で親しまれる渡邊の轟音ギターや廣瀬のトイピアノなどが絶妙に溶け合う、ディストピア的な不穏さと箱庭的なかわいらしさが同居するアンサンブルの中、アコギを手に凛としたオーラを纏って植田は歌い出す。意味があるかどうかなんて関係なく、自分の好きを大切にまっすぐな表現をしていきたい。そんな宣誓と取れるオープニングに続いては、車谷が軸となってゆるやかなビートを紡ぐ『最果てへ』『“シグナルはノー”』。シンガーソングライターらしい気ままな佇まい、透き通ったボーカルもじわじわと浮き上がらせながら、『Euphoria』の世界がノスタルジーをもって丁寧に構築されていく。

ギターをテレキャスターデラックスに持ち替えた『スペクタクル』では、ステージが一段と明るく照らされ、今度はパワフルな歌声を存分に響かせる植田。しばらくジッと聴き入っていたオーディエンスからも拳が突き上がり、賑々しいハンドクラップが5人を強く後押しする。緊張が取れてきたのか『悪い夢』以降は彼女も笑顔になり、オルタナフォーク的な味わいの『FRIDAY』まで、序盤の6曲をまずはノンストップで届けてみせた。

みなさん、こんばんはー! 元気ですかー? 本日はお越しいただき、ありがとうございます。平日によく来たね。お仕事お疲れ様です! 名古屋から始まって、今日は2日目の東京。最後まで楽しんでいってください」と挨拶し、先に記したアルバムへの想いを熱く語ったあとは、再びアコギを携えて、『Euphoria』の曲たちの皮切りとなった、メジャーデビューのタイミングでもそばで守ってくれていたというラブソング『ダラダラ』を披露。曲に漂うアンニュイなムードとインドア感、無理なく自然体で歌う彼女の声がクアトロ全体に染みわたり、なんとも心地よい時間が流れる。スティールパンのように鳴る明るい鍵盤や意表を突くヴィブラスラップで廣瀬が色付けした『ユートピア』、小さな生きものの幼気な命を想起させる愛おしい手触りの『BABY BABY BABY』と、植田の思い描いていたイメージが具現化されていくさま、その世界で嬉しそうに舞う姿にもグッとくるばかり。

ここで“街の音”が流れて、渡邊、麻井、車谷、廣瀬がいったんステージを捌ける。中盤の『モアザンミューズ』は植田がアコギの弾き語りでしっとりと演奏。“いつも隣にいるようだ”の歌詞どおり、すぐそばで歌っているみたいな、いっそうプライベートな距離感と温かみで観客を魅了してくれた。そして、アウトロの“lan lalalalalala”がもう一度こだまのように挿し込まれ、バンドメンバーが戻ってくる。そこから『愛と熱、溶解』へスムーズに繋ぐなど、ライブならではのインタールードによって、『Euphoria』のストーリーがさらに美しく豊かなものに昇華されていた点も素晴らしかったと思う。

植田真梨恵

4th Album 『Euphoria』Now On Sale!!

2011年に構想が生まれ、ずっと温めてきな大切なアルバム。初めて楽曲提供を受けた前作から一転、全作詞作曲 植田真梨恵!アレンジは、弾き語り曲を除く全曲、森良太(Brian the Sun)と植田が共作。植田の頭の中になっている音をこれまでの作品より、忠実に再現。コレクション盤の特典は初めてBlu-rayを採用し[F.A.R. / W.A.H.] TOUR FINAL公演を収録。
2022.9.21 release
コレクション盤
7500 yen (tax out) / GZCA-5314
通常盤
3000 yen (tax out) / GZCA-5315


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