その後も、“単純に思春期だった まだ10代の私は”と過去を回想する『FAR』、車谷の爆音ドラムがビシビシくる激しいアレンジでアッパーに駆け抜けた『JOURNEY』を織り交ぜ、自身のこれまでとこれからを交差させるようなライブが続く。熱いシャウトで始まった『カルカテレパシー』以降はギターを置いてハンドマイクで歌うシーンが多くなり、ステージを練り歩きながら、観客に視線を送ったり手を振ったりしながら、より伸び伸びと楽しそうに歌う植田。開放的な彼女のエネルギーに引っぱられて、フロアにもジャンプが巻き起こる。

愉快なファンファーレ音とともに各パートがソロ回しを決めたメンバー紹介タイムを経て、ライブは後半へ。「もっと自由に行きましょうー!」と放たれたのは、『Euphoria』のアナログ盤に“additional track”として収録された『愛の交差点でファンファーレ』で、アルバムのオープニングを担うことを考えていたナンバーまでもがチャーミングに飛び出す。こうなると場内のボルテージがますます上がり、『ロマンティカ』はオーディエンスがワイパーで応える最高のテンションを生んだ。植田もロックボーカリスト然とした躍動を見せつつ、『プロペラを買ったんだ最近』ではMVで着用していたゴーグル付きのパイロット帽子を被ってリズミカルな歌を聴かせ、空中飛行をしているかのようにパフォーマンス。

「みんなに好きになってもらえるかわからない」という不安も彼女は話していたけれど、懸命に生きている感じとふんわりと力の抜けた感じが交互に訪れるような、植田真梨恵らしい内的世界がありのままに広がるこの空間は、集まったファンにとっても得も言われぬ幸せに浸れる、心が気持ちよく揺さぶられる、まさに“Euphoria”なものであったはずだ。

赤裸々に自己を描いたアルバムのライブだけに、時折「胃が痛い……」と話す植田だったが、そうやって想いをストレートに出せるのも本作のナチュラルな姿勢ゆえだろう。「『Euphoria』が生まれた頃にみなさんをお連れしますね。11年前はララ(植田が飼っていた猫)がいて、お金がなくて、今よりもっと気持ちが不安定でトゲトゲしていて、なんにも足りてなかった。そんなハリネズミみたいな心の日々の歌です」と紹介した『HEDGEHOG SONG』では、廣瀬が口笛で彼女の背中を押したりと、素晴らしいメンバーがあってこその現在の幸せを改めて実感したのか、歌っているうちにどこかカタルシスを得たかのような表情も覗かせていた。

渡邊のノイジーに歪んだギターサウンドをはじめ、タイトなグルーヴで叩きつけるように聴かせた『黎明』を終えると、植田がもう一度アルバムと今の心境について伝える。

大事なアルバムでした。できて嬉しい気持ちと、できちゃったっていう気持ちが半分半分です。日々を生きる中で、歌を作り、音楽にして、ライブを開いて。こうしていっしょの時間が過ごせるのを普通にやれることが、私のEuphoriaだなと思います。目指していたものを疑ったり、不安になったりもしますけど、この道をなんとか歩いていって、死ぬ前に見えるものがもしかしたらあるのかもしれません。まだまだ旅は続いていくので、みんなもがんばってね。今日は本当にありがとうございました!

本編ラストは『エニウェアエニタイム』。“大切なものは あなたが大切にするからちゃんと大切なんだよ”――11年前に作った曲のうちのひとつを、ただここに生きているということをシンプルに綴った等身大の歌を、語りかけるように届け、アルバムの繊細でやさしい世界を締め括った。

「BABY×3 BIG T」に着替え、同じく新グッズの「ユーフォリアな枕カバー」を付けた枕、さらにはポラロイドカメラを持ってアンコールに現れた植田は、リラックスした感じでフロアの景色やステージのバンドメンバーを撮影。自撮りも含めてプリントした写真を観客に手渡しして、会場が和やかな雰囲気に包まれる。

最後は「行くわよー!!」の合図で『I JUST WANNA BE A STAR』になだれ込み、再びハンドマイクで熱唱する。バンドの頼もしい演奏をバックに、ヘドバンを誘う痛快なノリを生み出し、枕を勢いよくフロアに投げたりと、自由奔放な立ち居振る舞いでスパーク! 終演時には植田が「枕返してー!」と懇願&オーディエンスに投げキッスを贈り、メンバー全員にもやってもらうなど、エンディングを大いに盛り上げたのだった。

自分の部屋に招き入れるかのような、彼女本来の姿を描き出したアルバム『Euphoria』を、生演奏でも見事に表現してみせた植田真梨恵。MCで話していたとおり、これから先まだまだ旅は続いていくのだろうけれど、やはりそのキャリアにおける重要なターニングポイントになった作品、ライブであったことは間違いなさそうだ。今後は植田真梨恵と西村広文によるLAZWARD PIANOの10周年アニバーサリーが控えていて、1月18日にはベストアルバム『BEST OF LAZWARD PIANO -青い箱-』を、2月15日にはBlu-ray『LIVE of LAZWARD PIANO “Academic!”』をリリース予定。そして、2月23日にはZepp Hanedaで『LIVE OF LAZWARD PIANO -青い旗-』も開催される。旅の行く末を共に楽しんでいきたい。

取材・文:田山雄士

《SET LIST》
  1. 1.EUPHORIA
  2. 2.最果てへ
  3. 3.“シグナルはノー”
  4. 4.スペクタクル
  5. 5.悪い夢
  6. 6.FRIDAY
  7. 7.ダラダラ
  8. 8.ユートピア
  9. 9.BABY BABY BABY
  10. 10.モアザンミューズ
  11. 11.愛と熱、溶解
  12. 12.FAR
  13. 13.JOURNEY
  14. 14.カルカテレパシー
  15. 15.愛の交差点でファンファーレ
  16. 16.ロマンティカ
  17. 17.プロペラを買ったんだ最近
  18. 18.HEDGEHOG SONG
  19. 19.黎明
  20. 20.エニウェアエニタイム
  21. <ENCORE>
  22. EN1.I JUST WANNA BE A STAR

植田真梨恵使用楽器・機材紹介

植田真梨恵

4th Album 『Euphoria』Now On Sale!!

2011年に構想が生まれ、ずっと温めてきな大切なアルバム。初めて楽曲提供を受けた前作から一転、全作詞作曲 植田真梨恵!アレンジは、弾き語り曲を除く全曲、森良太(Brian the Sun)と植田が共作。植田の頭の中になっている音をこれまでの作品より、忠実に再現。コレクション盤の特典は初めてBlu-rayを採用し[F.A.R. / W.A.H.] TOUR FINAL公演を収録。
2022.9.21 release
コレクション盤
7500 yen (tax out) / GZCA-5314
通常盤
3000 yen (tax out) / GZCA-5315


ESP E-II Horizon Infinite MOGAMI
山野楽器Ginza Guitar Garden Digimart LOVEBITES
Ryoga Snare Weight DRUMSHOW
Dean Martin Ukulele Cannonball
Hofner Orange Valve Tester MkII Heritage
Orange Glenn Hughes MONO