2019.2.23@品川クラブeX “STAND ALONE Vol.8”

仲井戸“CHABO”麗市 & 和田唱(TRICERATOPS)

 2019年2月23日、品川クラブeXにてぴあによるライブ・シリーズ「STAND ALONE」の公演が行われた。このライブ・シリーズは、“ロック・シーンで活躍するアーティストたちが、たった一人でステージに立ち、声と楽器のみで勝負するという普段のステージではなかなか観ることのできないスペシャルなライブ”と銘打たれた特別なイベント。第8回となる今回はTRICERATOPSの和田唱と、古井戸そしてRCサクセションのギタリストとしてシーンを牽引し続けてきた仲井戸“CHABO”麗市の2人によるライブ。 2人の互いにリスペクトし合う特別な関係と、周囲をぐるりと客席に囲まれた特別な会場も相まってまさにプレミアムな一夜となった。

 開演時刻に差し掛かると、司会に促されてまず登場したのは和田唱。花柄のシャツの上にピンストライプのジャケットを小粋に着こなした和田は、余裕ある大人の雰囲気のままエレクトリック・ピアノの前に座り、弾きはじめたのはTRICERATOPSの『虹色のレコード』。 原曲でもフィーチャーされている柔らかなエレピの音色に導かれ、和田の優しくも力強い歌声が日常に寄り添う歌詞を纏い一気に楽曲の世界に引き込まれる。 楽曲が進むにつれ、ときに飛び跳ねるように体全体でリズムを取りながら熱唱。 歌い終わり、アコースティックギターを手に取ると、「Come’on! Clap Your Hands!」と観客のクラップを促す。 タイトなリズムのカッティングではじまったのはこちらもTRICERATOPSの楽曲『Shout!』。 会場もクラップだけではなくシングアロングで応え一気にノリノリに。 さらに間奏ではハーモニーパートも観客に歌わせ、会場全体で楽曲を作り上げた。 ライブタイトル「STAND ALONE」の通りステージ上には和田一人だが、あたかも会場みんなで合奏しているかのような雰囲気に和田も楽しそうに笑顔で応える。 続いてメランコリックなギターのアルペジオが心地良い『シラフの月』を披露。 MCでは今回仲井戸と共演することになった経緯を、このイベントのオファーを貰って誰と一緒にやりたいかと聞かれ、瞬時に『CHABOさんがいいです!』と即答したと話す。 8年前の「CHABOの恩返し」のときの感覚をもう一度味わいたいと。

 そんな中、「チャボさんと一緒になったらやっぱりブルージーに行こうかとも思ったけど、それは全然敵わないからやめようと思った」「僕はテクノロジーを使います」と諧謔を弄しながらループペダルを使用した『アクマノスミカ』へ。ギターのリフにボディを叩く音、クラップ、そして4声のコーラスをループで重ねていく。ループを重ねるごとにまるで目の前に巨大な建造物が建ち上がってくるかのような様子に会場全体がどんどん惹き込まれていくのが伝わってくる。

「チャボさんはシンガーソングライターとしての世界観を確立していながら、ギターヒーロとしてのイメージも確立している。両方あるのがすごいところで、そこに憧れている。おれも将来的にそこを目指せばいいんだと思った。シンガーソングライターとしてもギタリストとしても自分の世界観をちゃんと表現できるようになっていかなきゃいけないと最近思う」と大きなリスペクトを込めて話すと、「次の曲のタイトルは俺の生まれた年なんですが、この『1975』はチャボさんが結婚した年です」と笑いを誘い、ソロアルバム『地球 東京 僕の部屋』収録の『1975』をプレイ。 こちらもループペダルを使用し、今度は自身だけではなく観客の歌うシングアロングのハーモニーまでもループさせる。推進力を感じる爽やかなメロディ、広がりのあるサビが印象的なポジティブな楽曲を汗を滴らせながら熱演した。 360度囲まれたこのステージだからこそ、その中央にいる和田の優しい人柄が滲み出て広がり、会場全体を包み込むようであった。

 最後にギターを置き、再びピアノの前に戻るとソロアルバムの最後を飾る曲『Home』を熱唱。MCをはじめ観客と積極的にコミュニケーションをとりながらの熱演に、パーソナルな歌詞世界も相まって非常に親密な空気で包まれた。セットリストの最初と最後に日常に寄り添うような歌詞の楽曲をピアノ1本で歌うことでこのライブ全体がひとつの小さな物語のように美しくパッケージされたライブに感じられた。

 10分間の休憩を挟み、再び登場した司会者に呼び込まれ、The Beatles『Good Day Sunshine』と大きな歓声に乗って姿を表したのは仲井戸“CHABO”麗市。 ドット柄のシャツにキャスケットを被り、一度出てきかけた花道を戻るなどおどけながら登場。 ギターを手に取ると早速ブルージーなリックを決め、軽妙なトークで笑いを取りながらもどんどんその世界に引き込んでいく。そのままの流れで「挨拶代わりに」と『Final Carve~よーこそ~』を披露。 自然体なトークと地続きで繰り出される楽曲は観客との距離の近さを感じさせながらも圧倒的なカリスマを感じさせる。

『ブルースでぶっ飛ばせ』では観客との掛け合いを楽しみながら、ギターソロではアコースティックギターにも関わらずチョーキングを交えたフレーズがかっこいい!「王!長嶋!」というチャーミングなコールアンドレスポンスの後は「Rock’N’Roll!!」の掛け声から再びギターソロへ。 アリーナクラスのステージを感じさせるようなロックスター然としたアクションを交えた白熱のプレイに会場は大盛り上がりに。 MCでは和田唱との出会いやエピソードを振り返りつつ「愛があれば歳の差なんて。ギターがあれば、ロックンロールがあれば!」と盛り上げ、以前和田がカバーした古井戸の『ポスターカラー』へ。「唱がこれを選んだのはなんとなく分かったよ。これ(この曲)ね、ポール・マッカートニーのコード進行を一生懸命真似したんだよ。和田くんはマイケル(・ジャクソン)とポールにはうるさいから、そんなんでキャッチしてくれたんじゃないかな」と裏話も交えながら、コーラスのかかったギターサウンドで叙情的な歌詞を熱唱した。 これには観客も大歓声。

 続いては和田唱のソロアルバムから『夜の雲』をリーディングで披露。和田本人もまだライブで歌唱したことの無いというこの曲をハーモニクスやディレイ、効果音的なプレイも交えた幻想的なギターの音色に乗せて切々と語り上げた。

「じゃあRCサクセション一曲やらせてくれよ!」そう言ってはじめたのは『君が僕を知ってる』。「RCサクセションの曲でR&Bタッチの曲でとても気に入ってる一曲」だというこの曲では、ギター一本だけとは思えない程のグルーヴィーでリズミカルなプレイを披露。首でリズムを取るさまも堂に入っておりかっこいい。曲終わりには「君は僕を知ってる」と言いながら頭上を指さし手を振った。

 続いてビートルズの『The Long & Winding Road』を日本語詞で披露。さらに「珍しく機嫌がいいからおまけやってやろう。グリコみたいだろ!?」とブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドのギタリストとして知られるニルス・ロフグレンの『Take You to the Movies Tonight』を日本語詞でカバーした『映画に行こう』を続けた。 そして曲終わりの歓声の勢いのまま『歩く』へ。 ストーンズを彷彿とさせるロックンロールリフに自然と観客からは手拍子も巻き起こる。 間奏では『(I Can’t Get No) Satisfaction』のリフも挟むなどユーモアも忘れない。 ラララ...とシングアロングが起こる中「みんなよいお年を!メリークリスマス!!」更には「ブラウン・シュガー!」ともシャウト。 曲の締めにはビートルズ『Day Tripper』のリフを引用するなどサービス精神満点。 声もギターもそれぞれが圧倒的な存在感を放ちながらも常に自然体でユーモアたっぷりに観客と会話するように進んでいったライブは初めて仲井戸のライブを目の当たりにした筆者にとって衝撃的な体験であった。 和田のライブでも感じたことではあるが「STAND ALONE」と銘打たれ、実際にステージ上にはアーティスト1人しかいないライブイベントなのにも関わらず、そこにあったのは「ALONE」では決してない、アーティストを中心に会場全体がひとつになってライブを作り上げている温かな空気であった。

 さらに休憩を挟み、最後はお待ちかねの和田と仲井戸の二人によるセッション・タイム!ジャケットを脱いだ和田とシャツを脱いだ仲井戸が登場すると大きな歓声に包まれた。

 和田がMartinギターでリズムを取り、仲井戸がリードを取る形ではじめたのは仲井戸の『ティーンエイジャー』。 「Wowwow...」と2人でハモったり和田のギターソロを挟んだり、仲井戸の「She Loves You!」「Please Please Me!」というコールが入ったりとまるで2人のギター少年が楽しそうに戯れているようでもありながら、そこにはキャリアを重ねたミュージシャン2人ならではの確固たる世界観がある。 こんなに見ていて楽しいライブもそうそう無い!

 そして、「チャボさんの前で封印してたけど、やっぱりブルージー我慢できない!」(和田) 「唱は若い頃のエリック・クラプトンみたい」(仲井戸)というMCからCreamのバージョンの『Crossroads』へ! ここでは先程の“ギター少年”2人が更に白熱し、互いにギターソロバトルを見せる。 そんな中でもやはり仲井戸のギタリストとしての包容力の大きさ、一見シンプルなラン奏法の繰り返しだけで観客を湧かせる力強さが印象的であった。 ギター少年であり、達人であり、それが同時に2人に重なって見える。 親密でありながら圧倒的な空気感のこのライブ全体に感じた“同時に感じる2面性”をさらに強く感じた瞬間であった。

 続いて披露されたのはRCサクセションの名曲『スローバラード』。2人の熱唱とエモーショナルなギターソロによって、たった2人だけで作り上げられているとは俄には信じがたいような濃密な空間であった。

「次は8年も空けずにやりましょう」「来週どう?(笑)」などと相変わらずの冗談を交えながら、「『スローバラード』で終わろうと言ったんですけどチャボさんが、駄目だそうはいかないと言って選んでくれました」との和田のMCからTRICERATOPSの『NEW WORLD』へ。 この曲は「CHABOの恩返し」で仲井戸がカバーした楽曲。2人は背中を合わせたり並んで弾いたり終始楽しくて堪らない様を溢れさせながら熱演。 観客からは手拍子も巻き起こり大盛り上がり。 「手を振って旅立とう きっとまた会えるよ 僕らが運命なら」という歌詞がこの素晴らしいライブの最後に相応しく、ポジティブなメロディーと相まって、我々もきっとまたこの2人に会いたいと思わせてくれた。

 歌い終わると360°を取り囲んだ観客はスタンディングオベーションでこの夜の素晴らしさを讃え、ステージ上の2人もお互いを讃え合いながら観客に丁寧に別れを告げ『STAND ALONE Vol.8』は幕を閉じた。

 “STAND ALONE”だが1人ではない。シンガーであり、ギタリストである。ギター少年であり熟練の達人でもある。親密だが圧倒的なカリスマもある。そんな一見相反するような2つの要素が同時に並び立つ様をいくつも見せてくれた、まさにスペシャルな一夜であった。

取材・文:稲葉悠二
ライブ撮影:三浦麻旅子
機材撮影:小野寺将也

和田唱《SET LIST》
  1. 1.虹色のレコード
  2. 2.Shout!
  3. 3.シラフの月
  4. 4.アクマノスミカ
  5. 5.1975
  6. 6.Home
仲井戸“CHABO”麗市
《SET LIST》
  1. 0.Final Carve~よーこそ~
  2. 1.春よ来い(Short Version)
  3. 2.ブルースでぶっ飛ばせ
  4. 3.ポスターカラー
  5. 4.夜の雲(Reading)
  6. 5.君が僕を知ってる
  7. 6.The Long & Winding Road
  8. 7.映画に行こう
  9. 8.歩く
SESSION《SET LIST》
  1. 1.ティーンエイジャー
  2. 2.CROSSROADS
  3. 3.スローバラード
  4. 4.NEW WORLD
仲井戸“CHABO”麗市

仲井戸”CHABO”麗市 2019 TOUR 「CHABO Route69」開催!

2019年12月20日(金)札幌・KRAPS HALL OPEN 18:00 / START 19:00
全席指定 前売¥6,900(税込) ※当日別途ドリンク代¥600 ※未就学児童入場不可
問:WESS Tel,011-614-9999 http://www.wess.jp
<一般PG発売> 2019年10月20日(日)
・ローソンチケット(Lコード 11653) ・チケットぴあ(Pコード 165-105) ・イープラス  ・LINEチケット

今年10月、遂に69歳を迎えるCHABOによる、ロックな(笑)TOUR!
2019年9月27日(金) 大阪 Music Club JANUS【SOLD OUT】
2019年10月3日(木) 名古屋 DIAMOND HALL
2019年10月5日(土) 東京 EX THEATER ROPPONGI
2019年10月18日(金) いわき club SONIC iwaki
2019年10月19日(土) 仙台 誰も知らない劇場
2019年10月21日(月) 秋田 THE CAT WALK
2019年10月22日(火・祝) 青森 Quarter
2019年11月7日(木) 浜松 Live House 浜松 窓枠
2019年11月9日(土) 奈良 ビバリーヒルズ【SOLD OUT】
2019年11月10日(日) 和歌山 OLDTIME
2019年11月12日(火) 姫路 Beta
2019年11月14日(木) 広島 クラブクアトロ
2019年11月29日(金) 新潟 ジョイアミーア
2019年12月14日(土) 沖縄 桜坂劇場<ホールB>
公演詳細・チケット詳細は仲井戸”CHABO”麗市オフィシャルサイトまで

和田唱(TRICERATOPS)

和田唱ソロツアー第2弾 2019年秋開催!
たった一人で幾多の楽器をPLAYし、各地SOLDOUTを続出させた昨年に続き、待望の和田唱のソロツアー第二弾、2019年秋開催決定!お見逃しなく!!
和田唱 一人宇宙旅行 ~アイ ココロ 経由編~
2019年10月13日(日) 浜松 窓枠 open_16:30/start_17:00(発売中)
2019年10月20日(日) 札幌 cubegarden open_16:30/start_17:00(発売中)
2019年10月27日(日) 品川 インターシティホール open_16:15/start_17:00(SOLD OUT)
2019年11月2日(土) 仙台 Rensa open_17:15/start_18:00(発売中)
2019年11月16日(土) 名古屋 BOTTOM LINE open_17:30/start_18:00(発売中)
2019年11月29日(金) 横浜 ランドマークホール open_18:30/start_19:00(発売中)
2019年12月7日(土) 福岡 IMSホール open_17:30/start_18:00(発売中)
2019年12月8日(日) 大阪 BIGCAT open_16:15/start_17:00(一般券売日9/28土予定)
公演詳細・チケット詳細はTRICERATOPS/和田唱オフィシャルサイトまで


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