Jake Shimabukuroがウクレレの演奏を通して見せた、音楽の魔法!
Jake Shimabukuro(ジェイク・シマブクロ)が、「ASIA TOUR 2025」の一環として10月より日本ツアーを開催。ここでは、ベースプレイヤーにJacksonを迎えて10月17日にEX THEATER ROPPONGIで行った公演の模様をお伝えしたい。
ジェイク・シマブクロ(以下、ジェイク)のライブは、ピンスポットが照らす淡いオレンジの光を身体に受けながら、手にしたウクレレは自身のモデル、KAMAKA HF-3 D4I JAKE BLUE EDITION(2018年発売)。

まずは『Ave Maria』をしっとりと。優しい音色を一つ一つ紡ぐように奏でて始まった。まるで祈るような、彼自身の心を映し出すような演奏だ。観客たちの誰もが、温かい音を奏でるジェイクの姿と、その音色に心が引き寄せられてゆく。
表情は、一変。ジェイクは軽やかに身体を揺らし、ときにステップを踏み、優しい笑みを浮かべながら『Over The Rainbow』を演奏。彼の気持ちが弾むのに合わせて、演奏も軽やかに弾みだす。ジェイクの感情と演奏が一つに結びあっているのが、踊る音色を通して伝わってきた。

K-POPナンバーの『Golden』ではルーパー(ループペダル)を使って、その場でどんどんフレーズを重ね合わせ、少しずつ輪郭を成してゆく演奏を披露。フレットの上で優しく指を滑らせ軽やかな音を奏でては、それを積み重ねてゆく。ベースとなるサウンドを作りあげた上で、ジェイクは踊りたくなるような心弾む旋律を次々と演奏。気づいたら観客たちも演奏を魅入りながらも身体を小刻みに揺らし、奏でる華やかな音色の数々に心踊る感情を重ね合わせていた。

ここから、ベースプレイヤーとして盟友のJackson Waldhoff(ジャクソン・ヴァルドホフ)が参加。さらに、玉川学園ウクレレチームに所属する6人の生徒たちを招いてジャスティン・ティンバーレイクの『Can’t Stop the Feeling!』をセッション。この曲では、6人の生徒たちの歌とウクレレの演奏をメインに据え、ジェイクとジャクソンは、彼ら彼女たちへ寄り添う演奏に終始してゆく。とはいえ、表情の豊かな演奏を持ち味にしているジェイクらしく、6人を立てながらも、しっかりと自身の色を押し出しつつ、8人で軽やかな、でも心地好いアンサンブルを作り上げていった。


『143』では、ウクレレを切れ味鋭くストロークする演奏に刺激を受けた観客たちが、手拍子を重ねだす。軽やかに始まった演奏は、やがて力強く駆けだす様を見せてゆく。心地好い緊張感も覚えつつ、躍動する強さを胸に感じながら、2人の演奏に身を寄り添わせていた。
ジョージ・ハリスンの『While My Guitar Gently Weeps』では哀愁を帯び、とても情緒豊かな演奏を披露。原曲の魅力を生かそうと、ジェイクは歌うようにウクレレを演奏。その音色にずっと哀愁を覚えていた。終盤には、ベースのジャクソンとジャムセッションのようなプレイを交わす場面も登場。原曲の持つ良さを極力引き出しつつ、ライブらしいアレンジや遊び心を加えてきたところも嬉しかった。

次にジェイクが奏でたのが、ジェフ・ベックの『Cause We’ve Ended As Lovers』。日本では、『哀しみの恋人達』の邦題で述べたほうが伝わりやすいだろうか。この曲でも彼は、哀愁を帯びた旋律の一つ一つを粒立つように演奏。ジェイクはルーパーを用い、身や心をどっぷりと浸らせるベースとなるサウンドを作りあげ、その上に速弾き演奏を巧みに組み込み、感情豊かな楽曲を作り出していった。まるで、ジェフ・ベックが目の前でギターを弾いているような様を、彼はウクレレの演奏を通して作りあげていた。本当に、酔いしれる演奏だった。

『Kula Blues』でジェイクがジャクソンと一緒に作り出したのが、ブルース/ロックンロールなセッション風の演奏。明るく、しかもノリよく弾むビートを作り出す2人の演奏に刺激を受け、場内からも自然に手拍子が生まれていた。いわゆる渋めのブルースではなく、その後ロックンロールへと繋がる、気持ちを弾ませる表情を見せてくれたところに、彼自身の陽気な人柄を垣間見たように感じられた。
ジェイクが大好きな日本語のことわざの一つである「一期一会」。『Ichigo Ichie』を通して彼は、歌うように次々と旋律を奏でる。一期一会の関係が永遠に続くようにと願いを込めながら奏でるジェイクの演奏に、同じような想いを抱きながらずっと寄り添っていたかった。その演奏に浸っていたら、一つ一つの音色が心の涙腺を刺激し、涙を誘うような気分にもなっていた。

表情は一変、ジェイクはとても情熱的な演奏を披露。その熱に刺激を受けた観客たちも、高ぶる想いを手拍子にしてゆく。この曲でもルーパーを使って情熱的な演奏を重ねあわせ、楽曲を彩り豊かに膨らませていった。そのうえで、ジェイクはグレイトフル・デッドの『Friend Of The Devil』を演奏。カントリー&ウェスタンの要素も多分に取り入れた楽曲を通して彼は、速弾きも随所に組み込み、ときにジャクソンとユニゾンしたプレイも見せながら、まるで荒野を駆けるように、いや、カラッとした青空が無限に広がるハイウェイをハーレーに跨がって爆走するような様を目の前に描きだしていった。
1曲ごと、さまざまな音の景観をジェイクは描きだす。続く『Orange World』では、ドラマチックな展開を描き出す映画のストーリーを追いかけるような演奏を見せてくれた。スリリングに見せて、巧みに冒険心を煽る演奏に、気持ちがずっとウキウキしていた。


続く『Dragon』は、ジェイクが大好きなブルース・リーをリスペクトして生まれた曲。「燃えよドラゴン」ではないが、カンフーアクション映画を見ているような展開が気持ちを嬉しく騒がせる。悲しみを背負った主人公が、正義という怒りを抱き、闘いを通して悪を打ち倒す。でも、心に残った悲しみは消えることはない。そのような物語を描きだすように、哀愁を帯びた音色から始まった楽曲は、曲が進むごとに情熱を増し、孤高の戦士の喜怒哀楽すべての感情の揺れが伝わる演奏を見せていった。その展開に、気持ちがずっと惹きつけられていた。

ライブも終盤へ。ここでジェイクが奏でたのがQueenの楽曲たち。圧巻だったのが、『Bohemian Rhapsody』の演奏だ。一切ギミックを使うことなく、みずからの感情が歌うまま、その想いを演奏に投影。あの重厚かつドラマチックなハーモニーや次々と転調してゆく楽曲を、彼は気持ちをダイレクトに投影した演奏で届けてくれた。まるでフレディー・マーキュリーがウクレレの弦の音を介して歌っているようだ。しかもこの曲では、観客たちがジェイクの演奏にあわせて歌う形を取っていた。大勢の人たちが彼の演奏の指揮にあわせて作りあげた合唱も曲の要素に組み込みながら…いや、この場にいるみんなで作り上げた歌声も重ねあわせ、とても温かみのある『Bohemian Rhapsody』をジェイクはこの場に描きだしていった。

立て続けにジェイクは、Queenの『We Will Rock You』を演奏。この曲では観客たちが足で床を鳴らし、両手を膝で打ち鳴らし、「ドンドンパンッ」のリズムを作りだす。そのうえで彼が演奏。この曲でも観客たちが歌を担っていたように、一緒になって楽曲を作りあげていた。ジェイクのライブに大勢の人たちが詰めかけるのは、演奏に浸るのはもちろん、一緒にライブらしい一体感を持ったノリを作っていけるところにもある。

最後にジェイクは、ハワイアン・スティール・ギターの演奏を最初に始めたJoseph Kekukuをリスペクトした『The Legend of Joseph Kekuku』を披露。この曲ではルーパーを用いて音を重ね、土台となる演奏の上に、ボトルネックも用いた演奏で激しくて荒々しい表情を描き重ねていった。ときには、荒ぶる演奏さえ録音して重ねあわせ、より激しくて華々しい演奏を披露。本編最後に相応しい弾けたライブを見せて、舞台は一度、幕を閉じていった。

アンコールでは、最初にジェイクのみで『Touch』を演奏。ゆったりとした優しい演奏が『Hula Girl』に変わった途端、心地好い南国の風を場内中に吹かせ始めた。心踊る演奏に酔いしれていたところへ、『Crazy G』を演奏し、メドレーコーナーを盛り上げていった。

最後にジェイクは、ジャクソンを呼び入れて、『Kawika』演奏。その途端、場内中の人たちが一斉に立ち上がり、手拍子をしながら騒ぎだした。きっと、ずーっとウズウズしていたのだろう。爆発したい気持ちをジェイクは最後の最後に引き出し、この会場を総立ちの熱情した空間に染め上げてライブの幕を閉じていった。
TEXT:長澤智典
Photo:Masashi Yukimoto
《SETLIST》
- 1.Ave Maria
- 2.Over The Rainbow
- 3.Golden
- 4.Can’t Stop the Feeling! Feat. Tamagawa School students
- 5.143
- 6.While My Guitar Gently Weeps
- 7.Cause We’ve Ended As Lovers
- 8.Kula Blues
- 9.Ichigo Ichie
- 10.Friend Of The Devil
- 11.Orange World
- 12.Dragon
- 13.Bohemian Rhapsody
- 14.We Will Rock You
- 15.The Legend of Joseph Kekuku
- -ENCORE-
- EN1.Touch/Hula Girl/Crazy G medley
- EN2. Kawika

STAGE Vol.28 《表紙・巻頭》ジェイク・シマブクロ/トゲナシトゲアリ 












