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8人の音楽の天女たちが手招く旋律の誘いに手を伸ばし、飛び交う音を次々と心でキャッチしながら、共に自由を謳歌しようじゃないか。
1stアルバム『THE JAZZ AVENGERS』を手にした全国ツアーも、THE JAZZ AVENGERSの1stライブの地に当たる横浜ビルボードで7月4日に行われた追加ワンマン公演「1st Album Release Tour 2023 追加公演」を持ってファイナルを迎えた。その日の模様を、ここにお届けしたい。
舞台の上にゆっくりと姿を現したメンバーたち。みんな、横浜ビルボードという会場に似合うとてもセシクーな姿だ。今宵は妖しいムード?という雰囲気を醸しながらも、ドラムカウントを合図に飛びだしたのが、とても勇壮な、でも華やかさを持った『Top Me Up!』。フロントを担う4人のSAX陣が、力強く雄々しき音色を響かせ、この空間を、まるでスペクタクルな映画の始まりを生で体感してゆく雰囲気に染めあげる。川口千里のドラムを軸に据えたリズム隊もパワフルな演奏を繰り広げ、この場に気持ちを嬉しく騒がせる絢爛豪華な宴の様を描き出す。舞台の上から、一つ一つの音が臨場感を持って響き渡る。いや、音の羽根を広げ、会場中を自由に飛び交っていた。ここは自由を謳歌する空間。8人の音楽の天女たちが手招く旋律の誘いに手を伸ばし、飛び交う音を次々と心でキャッチしながら、共に自由を満喫しようじゃないか。
心地好くスウィングする『One by One』が飛びだした。メンバー陣の手拍子にあわせ、場内中の人たちも心地好く身体を揺らし、リズミカルに手拍子を繰り出す。五線譜の上を、桃色の羽根を持ったメロディーたちが、軽やかにステップを踏みながら踊りだす。とても華やかな景色が目の前に描き出される。時にムーディーなJAZZ CLUBという景色を描き、時に気持ちを開放した野外で、彼女たちと一緒に跳ねた音楽でスキップしてゆく気分に心を染めあげる。ソロまわしでは、プレイヤー同士で顔を見合せて演奏。互いに音の握手(セッション)を交わしながら、この空間へ、心をニヤついた笑顔にする宴を導いていった。
夜の帳を下ろすように、甘くムーディーな音の香りが少しずつ花開きだす。彼女たちは『Michel Tokyo』を演奏。ねっとりとした妖しさを描きだす雰囲気を見せながらも、そのビタースウィートな音色の数々は、甘い香りに心溺れたいカップルたちの心へ寄り添うような、スタイリッシュでムーディーな音の香りとしても漂っていた。酔いしれる?いや、始まったときから8人の演奏に酔っていたが、この曲を通して、一気に度数の高いカクテルで気持ちを酩酊させられた気分だ。でも、それがとても心地好い。SAX陣が音を交わし合う様は、恋人たちが少し喧嘩ぎみに言葉を投げ合うようにも見えて、とても刺激的だった。喧嘩したり、仲直りしたり、そんな人間模様の見えてくる演奏だ。
1曲ごとに、THE JAZZ AVENGERSは様々な物語を綴りだす。丸みを帯びた芹田珠奈のベース音がハーモニクス音を鳴らしながら、美しくたおやかな旋律を描き出す。甘いソロ演奏を受け、ドラムのカウントが入るのを合図に、楽曲はどっぷりとしたディープなJAZZ FUNKの世界を描き出した。THE JAZZ AVENGERSは『Pain or Pleasure』を通し、刺激的な痛みも携えながら、観客たちを深い快楽覚える宴の場へと導いてゆく。メンバー各々が深みを抱いた音を奏でるごとに、気持ちがどんどん心地よく落ちていく。甘く蕩けるような深みを持ったALC度数の高い演奏が、触れた人たちの身体や心にねっとりと絡みつき、どんどん理性を消し去る。舞台の上から流れ出るディープでドープな音へ絡みつかれるままに落ちてしまえと、彼女たちは迫っていた。この曲ではとくに、ベースの音がトグロをまいて身体へ何度も何度も絡みつき、刺激的な演奏でギュッと締めつけては、どんどん理性を現実から遠ざけていった。でも、こんな音楽のカクテル(この曲にはウィスキーの方がぴったりだろうか?)なら、いくら度数が高かろうと、とことん深みにはまって味わいたい。
優しくスウィングするドラムビートへ、ゆったりとムーディーな音色を絡めてゆくSAX陣の音色。続く『All The Way』では、ふたたび甘くLOVERな音色を響かせ、この場にいる一人一人へ、8人は誘いの手を伸ばしていた。その音にギュッと抱きしめられたら、身動きを取れないまま心が落ちてしまいそう。いや、先程から何度も落ちているが、この曲で、彼女たちに優しい音色の腕でそっと抱きしめられるたび、まるで少年や少女へ戻ったかのように、抵抗することもなく、ただただ受け身のままに彼女たちの演奏へ身を寄り添えていた。甘さの中へピリッとスパイスを効かせた川口千里のドラムのソロプレイは、刺激的な大人の女性の導きにも思えた。
ギターの瀬川千鶴いわく、「横浜の大桟橋の綺麗な景色」をイメージしながら演奏したのが『Mima Mounds』。お洒落な横浜という街の、とくに夜景の似合う海辺の景色が見えてくる、ムードたっぷりの演奏だ。何時しかメンバーらと一緒に、淡いライトが道を照らす埠頭を、互いに寄り添いながら歩いている気持ちに染まっていた。けっして大胆にではない、互いにどこか遠慮がちな距離感を覚えながらも、ときどき指先を触れ合わせていた。照れた気持ちから少しずつ大胆になり、指先だけを繋ぎあう。そんな、大人になって、改めて覚え立ての恋の気分を味わうような淡い演奏に気持ちを浸していた。曲が進むにつれ、次第に音が迫力を増していたのは、大胆になっていく気持ちを現してのことなのかも知れない。演奏が暮れかかる頃には、2人が埠頭のベンチで寄り添いながら、遠くで眩く輝く桟橋の景色を見つめていたことも伝えておきたい。あくまでも、そんな妄想を生み出す演奏だったということだが…。最後に、SAX陣の4人が互いに身を寄せて演奏する場面も印象的だった。
雷鳴の如く高鳴るドラムの音。荒ぶる感情を叩きつける川口千里の演奏を受け、勇壮な音が響きだす。THE JAZZ AVENGERSは『Raise Your Flag』という音の旗を高く掲げ、自らこの空間を巨大な船へと変え、先頭に立って大海原へ雄々しく漕ぎだした。ギターとシンセのバトルなどメンバーそれぞれがセッションを行うたびに、8人はその演奏を前へと突き動かす推進力に変え、勇ましい気持ちを胸に、この場にいる人たちを冒険へと連れだしていった。とても勇ましい演奏の数々だ。そこへ、彼女たちが心に抱いた野生の闘志を感じる。ドラムとSAX陣の掛け合いも、かなりスリリングで刺激的だった。
最後にTHE JAZZ AVENGERSが奏でたのが、『Buena Vista』。この曲では、動画や写真の撮影がOK。SNSをチェックしたら、当日の映像が見られるかもしれないので、試しに検索してみてほしい。この曲で彼女たちは、この空間をトロピカルな楽園へと染めあげ、4本のSAXの音色も華やかなダンスパーティーへと観客たちを誘い込んでいった。気持ちが軽やかに弾みすぎてジッとなどしていられない。踊るJAZZ、その真骨頂を、彼女たちは『Buena Vista』を通して見せていた。メンバー同士が顔を見合わせ、音を華やかに踊らせることを楽しんでゆく。心地好くスウィングする演奏に身を任せ、このまま快楽に溺れてしまいたい。彼女たちが最後に届けた音楽のカクテルは、スカッと晴れた気分へ連れだす最高にパンチの効いた味だった。この味に触れ、落ちて…いや、溺れてしまう人たちが出るのも納得だ。
この曲で、THE JAZZ AVENGERSと出会った方々も多いだろうか、アンコールで彼女たちは『Unite』を披露。演奏が始まるのと同時に、じっとしていられなくなった観客たちが一斉に立ち上がり、大きく手拍子をし、軽快に駆けだした演奏へ導かれるようにみんなでパレードを繰り広げだした。実際に歩むことは出来ないが、彼女たちが力強く進み続ける演奏へ導かれるように、みんなも手拍子という打楽器でこのパレードに参加。ときにメンバーらとセッションを交わす気持ちも胸に行進してゆくのを、満面の笑顔で楽しんでいた。ベースやギターのソロプレイなど、各自のソロ演奏にあわせ、いつの間にか観客たちが声を張り上げてはしゃいでいた。楽しい。そう、何時しかここは、ただただ「楽しい」に包まれたカルナバルの場に染め上げられていた。
この楽しさ、次は10月11日のSHIBUYA PLEASURE PLEASUREでのライブを楽しみにしたい。
TEXT:長澤智典
- THE JAZZ AVENGERS
- 川口 千里 (Drums)
- 瀬川 千鶴 (Guitar)
- 竹田 麻里絵 (Keyboard)
- 芹田 珠奈 (Bass)
- 米澤 美玖 (Tenor Saxophone)
- 寺地 美穂 (Alto Saxophone)
- WaKaNa (Alto Saxophone)
- 中園 亜美 (Soprano Saxophone)
《SET LIST》
- 1.Top Me Up!
- 2.One by One
- 3.Michel Tokyo
- 4.Pain or Pleasure
- 5.All The Way
- 6.Mima Mounds
- 7.Raise Your Flag
- 8.Buena Vista
- -ENCORE-
- EN.Unite