2019.8.31&9.1@福岡ヤフオク!ドーム
史上最強の移動遊園地 ”DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2019”
ライブレポート
DREAMS COME TRUEの強さを感じた『WONDERLAND 2019』
スペシャルイヤーだからこそ、特大級の愛と決意を
昭和から平成へと移りゆく1989年、DREAMS COME TRUEはデビューした。 新しい時代のなかで、集客数拡大戦略である『渋谷公園通りの坂上がり』を決行。 1991年には『史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 1991』を開催し、戦略を完遂するとともに日本のライヴエンターテイメントを封切った。
そして、令和が動き出す2019年。DREAMS COME TRUEは、デビュー30周年と4年に一度の〈WONDERLAND〉が重なるスペシャルイヤーを迎えた。 いつもはファンの人気投票と吉田美和のさじ加減で選ばれる〈WONDERLAND〉のセットリストも、この年ばかりはドリカムが“いま届けたい曲”をコンセプトに選曲。 2015年に開催された同イベントが、1曲を除きファンのリクエスト40位以内の曲で構成されたのは、伏線だったかもしれないと感じるほど、ふたりの主張を強く反映した楽曲が出揃った。 いうならば“平成を駆け抜けたドリカムの統括と原点回帰”だろうか。“はだかになって もう一度 生まれよう”という彼らの決意を魅せつけたのだ。
8月31日、福岡ヤフオク!ドームにて『DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2019』福岡公演が開催。 会場に集結した年代・性別問わない顔ぶれには、世代を超えてDREAMS COME TRUEが愛されていることを感じずにはいられなかった。
照明が落ちるとにぎやかな歓声が煌めき、月夜のシーンがLEDビジョンに映し出される。現れたのは『THE DREAM QUEST』十二音使徒のシェフバックだ。 彼に導かれるまま、場面は天空の宮殿へ。 宮廷音楽隊に扮したパフォーマーが『A theme of the WONDERLAND』のファンファーレと共にステージを彩ると、月のゴンドラに乗ってドリカムのふたりが登場。さあ、夢のWONDERLANDの幕開けだ。
今回の〈WONDERLAND〉は大きく分けて、4つのセクションで構成されている。 ひとつめは、踊れる吉田美和を魅せる“月の舞踏会”だ。『MERRY-LIFE-GOES-ROUND』を歌いながらワルツを踊る姿は可憐で、まさに月から降りてきたお妃様。くるっと回るたびスカートがふわっとひらめき、ステージに赤い花を咲かせた。『あなたとトゥラッタッタ♪』では、パフォーマーと手を取りポルカを披露。 活発にステップを踏みながらも歌がぶれない吉田に驚かされたが、彼女の本気はこんなものではない。
ステージで高くジャンプをし、ドレスからセットアップに一瞬で衣装チェンジ。長尺のダンスパートを華麗に踊りこなしたのは、ディスコチューンの『あなたに会いたくて』だ。パフォーマーとほぼ変わらない振り付けにも関わらず、全くバテる様子を見せない彼女のバイタリティーに圧倒される。その後も『KNOCKKNOCK!』『さよならを待ってる』と歌うだけにとどまらない、踊れる吉田美和を魅せつけた。
元アース・ウィンド・アンド・ファイヤーの2代目ドラマー、ソニー・エモリーとT-SQUAREのドラマー、坂東慧のドラム合戦を経て突入したのは、『世界中からサヨウナラ』。 “さよなら/再見”と歌いながら〈WONDERLAND〉名物の3Dフライトで空を自由に舞う姿は、圧巻の一言だ。
「Album Release History Movie」を受け、“歌のパワーを届ける”第2セクションへ突入。 切ないバラードの『す き』で美しいファルセットを響かせると、会場全体を歌声で包みこんでいく。中村のベースに吉田が寄り添うように歌って見せたのは、『愛してる 愛してた』。 ふたりぼっちになった移動式ステージ、視界に飛びこんでくる情報の少なさがより聴覚を研ぎ澄ます。
ソウルフルな歌声とコンテンポラリーダンスが絡み合う『忘れないで』、軽やかなピアノサウンドが印象的な『THE WAY I DREAM』、クラップが巻き起こる『ねぇ』と歌の力を強く感じる楽曲が展開されていく。 そしてここで、“歌のパワー”に欠かせないスペシャルゲスト、FUNK THE PEANUTSが登場。20年ぶりの新曲である『SPOIL!』を抜群のコンビネーションで歌い上げた。
「歴代WONDERLANDダイジェストムービー」を挟み、ライヴはいよいよ後半戦へ。 3つ目のセクションは、“ポップ&セクシーで魅せる今のドリカム”といったところだろうか。 シングルのカップリングやアルバムに潜んだ名曲だけで組まれたセットリストにより、ディープなDREAMS COME TRUEを魅せていく。
もはやWONDERLANDの定番となった、ドリー・ザ・ブートキャンプでのパフォーマンスとなったのは『うれしい!たのしい!大好き!』だ。 指を器用に使ったカエルダンスが、ヤフオク!ドームを埋め尽くす。キャッチーな踊りで一体感を生み出したかと思えば、ステージにはラートが出現。 巨大な輪を指輪に見立てた演出だそうで、吉田は「だって、やってみたかったんだもん!」と無邪気に笑った。 移動式ステージの階段でパフォーマーが舞い踊る『行きたいのはMOUNTAIN MOUNTAIN』、2人のパフォーマーが織姫と彦星に扮して魅了する『7月7日、晴れ』とポップステージを展開する。
中村が「ここからの移動遊園地、とても危険になります。ベルトをしっかり締めてお楽しみください」と告げ、ベリーデンジャラス&セクシーコーナーへ。 奏でられたのは妖艶なギターと攻撃的なホーン隊が映える、ロックナンバーの『I WAS BORN READY!!』。吉田のハリある歌声がドームの後方まで反響するさまは爽快だ。その後も『かくされた狂気』『ウソにきまってる』といった、大人になった今だからこそ深さを増したナンバーが続く。締めくくりになったのは、ゴスペル調の『MEDICINE』。 デビュー年である1989年にリリースされた作品ということで、30年分の厚みが音楽から伝わってきた。若かりし頃では描けなかった情景を描けるようになるのだから、“時間はとても不思議”である。
“いま届けたい曲”をコンセプトに選曲された〈WONDERLAND〉4つ目のセクションは“愛と感謝をこめたキラーチューン”。ラフなスタイルで『朝がまた来る』を歌う吉田はハツラツとしていて、言葉がまっすぐに飛んでくる。『さぁ鐘を鳴らせ』に導かれ、ライヴの勢いはクライマックスへ向けてさらに加速。『何度でも』では頂点に達したかのように、特大のシンガロンが巻き起こった。 “きみを思い出すよ”という歌詩は、ファンを思うドリカム、ドリカムを思うベイビーズと重なりより力強く響く。一方通行ではない、双方向で音楽を作りあげてきたからこそDREAMS COME TRUEは愛されてきたのだ。勢い止まぬまま、関西弁が可愛らしい『大阪LOVER』でラストスパートをかける。 『決戦は金曜日』では、ドリカムのふたりが虹色の自転車に乗って空を飛んだ。自転車にぶら下げられた横断幕には「祝 デビュー30年! みなさまホントにホントにありがとう!!!」という感謝の言葉。シングル初のミリオンセラーを達成した曲で、この演出をしてしまうのだから、ホントにドリカムは隅に置けないバンドである。ラストは最大限の感謝をこめて『サンキュ.』をパフォーマンスし、本編を締めくくった。
ステージからふたりが去ったあとも拍手は鳴りやまず、アンコールへとなだれこむ。『あなたのように』ではひとり一人に思いを届けるように歌いかけ、『あの夏の花火』では屋内にも関わらず鮮やかな花火を打ちあげた。吉田が「この1曲には、こめきれない感謝をこめます」と告げ始まったのは『未来予想図Ⅱ』。色褪せぬ名曲の登場に、自然とサイリウムの穂が揺れる。全31曲、夢のような時間を作りあげ〈WONDERLAND〉を閉園したのだった。
活動して30年も経てば、いくらでも手を抜くことはできるだろう。「これくらいできっと満足する」、そんな妥協点だって知らないはずはない。それでもDREAMS COME TRUEが手を抜かないのは、根底に“血沸き肉踊るライヴをする”という思いがあるからに他ならない。 だからこそ、歌やダンスで惹きつけることもできれば、ディープな曲でもキラーチューンでも魅了することができるのだ。『DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2019』は、そんな彼らの強さを再確認する公演となった。
次に周年とWONDERLANDの開催が被るのは、20年後の50周年らしい。普通のバンドだと無理だろうと一蹴してしまうが、ドリカムだったら実現できてしまうような気がするのだ。未来予想図は、思ったとおりに かなえられてくのだから。
取材・文:坂井彩花
ライブ撮影:中河原理英、岸田哲平
機材撮影:小野寺将也
《SET LIST》
- A theme of the WONDERLAND
- 1.MERRY-LIFE-GOES-ROUND
- 2.あなたとトゥラッタッタ♪
- 3.あなたに会いたくて
- 4.KNOCKKNOCK!
- 5.ONE LAST DANCE, STILL IN A TRANCE
- 6.さよならを待ってる
- 7.世界中からサヨウナラ
- 8.す き
- 9.愛してる 愛してた
- 10.忘れないで
- 11.THE WAY I DREAM
- 12.ねぇ
- 13.SPOIL!
- 14.うれしい!たのしい!大好き!
- 15.薬指の決心
- 16.行きたいのは MOUNTAIN MOUNTAIN
- 17.7月7日、晴れ
- 18.I WAS BORN READY!!
- 19.かくされた狂気
- 20.ウソにきまってる
- 21.HIDE AND SEEK
- 22.MEDICINE
- 23.朝がまた来る
- 24.さぁ鐘を鳴らせ
- 25.何度でも
- 26.大阪LOVER
- 27.決戦は金曜日
- 28.サンキュ.
- EN1.あなたのように
- EN2.あの夏の花火
- EN3.未来予想図II
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