藤原さくら
灼熱の炎天下から夜の帳へ
藤原さくらによるスペシャルな真夏の夜の野外音楽会
一年で最も日の長い頃である7月の中旬、開演を待つ会場内には、夕刻に差し掛かろうとする頃になってもまだまだ真夏の太陽がジリジリと降り注ぐ。 2018年7月の日本列島は強烈な猛暑が続いたことも記憶に新しいが、この日も無論、その例外ではなかったのだ。 とはいえ、藤原さくら本人もかねてよりの念願だったという初めての日比谷野音での記念すべきワンマンライブ。 この日は一夜限りのスペシャルな編成で様々な企画が用意されていた。
バンドメンバーには、ドラム mabanua、ベース Shingo Suzuki(ともにOvall)、そしてキーボードは別所和洋(ex.Yasei Collective)という藤原にとってはもはや“ホーム”ともいうべきメンバーを迎え、さらには今回初タッグとなるギターの村中慧慈(wacci)そして、Megもコーラスで参加。 5人のメンバーの生演奏SEともいえるジャムセッションの中に登場した藤原は、MCでの開口一番「暑かったでしょう?!暑いし、休み休み行きましょう。みんなも水飲んで。今日は楽しんで行ってください」と、野音に集まったオーディエンスに呼びかけた。 「こんにちは、なのかな。こんばんわ、なのかな」と藤原も少し迷い、笑いながら、自身の夢だった日比谷野音でのワンマンが実現したことの喜びを口にし、会場へと挨拶。 こうしてまさに昼と夜の狭間、夕暮れ時から特別な音楽会がスタートした。
外がまだ明るいうちは日比谷公園の元気なセミ達が大合唱。その自然音と藤原の歌声、そしてバンドのオーガニックな味わいに満ちた芳醇な演奏がシンクロして野音に響き渡り、またとない共鳴を生み出す。 加えてこの日はステージセットも緑が基調となっており、まさに6月に発売されたばかりの彼女のEP『green』の世界観そのものが現実となったかのよう。 都心の楽園ともいえるこの公園の中で、さらに特別なミュージックガーデンを開き、待ち望んでいたリスナーとの時間を慈しんでいるかのようだ。
お馴染みの曲を6曲ほど演奏した後、「こんなふうにセミが鳴いているような夏の日に、好きな人と一緒にコンビニに行って、アイスをねだるような、そんな夏の恋の歌を作りました」という藤原の曲紹介でミディアムナンバー『赤』が披露される。 続けてスケール感のある『Just one girl』そして新曲のひとつである『グルグル』の演奏が終わるやいなや、ファンにはお馴染みともいえる藤原節で「休憩〜!」と会場に号令が。 笑いとともにざわつく会場内だったが、そう、この日のライブは二部構成になっていたのだ。 そうして、藤原さくらの世界に浸っていたオーディエンスはハッと目を覚ましたかのようにめいめい“休憩”をとり、約20分後、後半がスタートした。
あたりも徐々に夕闇が濃くなってきた後半では、アコースティックステージを展開。まずはmabanuaと藤原のふたりだけで登場し、藤原はなんとウクレレにて『Soup』を! 恐らくこの曲で彼女の歌声を知った人がとても多いであろう自身の代表曲を、この日のために新しいバージョンに仕上げて披露した彼女の心意気にファンは湧く。
「ここからどんどん仲間が増えていきますよ!」というMCを合図に、『1995』ではShingo Suzukiが加わり、『Ellie』でMegが、『BABY』で別所と村中も参加し、1曲ずつメンバーが増えていく構成が用意されていた。 曲が進むにつれ、極上のピースフルな空気で会場が包まれていく。「ギュッと集まってやりたいね」という藤原の計画により実現したというスペシャルなアコースティックパートはこうして大団円を迎えた。
しかし、この日のスペシャル企画はこれだけでは終わらなかった。なんと藤原がこの春まで出演していたテレビ番組『ポンキッキーズ』から、ともにレギュラーメンバーを務めた落語家・春風亭昇々と、おなじみのキャラクターPちゃんまでもが野音へとやってきたのだ!これには会場のキッズ達も大喜び。 番組のテーマソングだった『Someday』を皆で歌い上げた。
思いもよらぬスペシャルゲストにひとしきり盛り上がった後、藤原は9月に新しいEP『red』が発売されることを発表。 そこから新曲『NEW DAY』もさっそく披露した。 後半戦も佳境、『かわいい』では会場が手拍子に包まれた。
本編ラストは彼女のインディーズ時代からの大切な1曲である『お月さま』。 空を見上げると、まだ三日月にも満たない二日目のうっすらとした美しく細い月が西のほうに暮れていくところで、反対側には東京タワーも光を放っていた。
あんなに明るく暑かった野音が、いつのまにかすっかり夜になり、静かな中でのしっとりとしたアンコールでは、『The Moon』そして『bye bye』の2曲を演奏。 「また会おうね、と言って別れられる“バイバイ”が好きです」という彼女の言葉の通り、楽しい気持ちはそのままに、藤原さくらによる真夏の夜の音楽会は幕を閉じた。
ツアー『yellow』も9月からスタートし、11月にかけて全国へと藤原は出向いていく。 “green” “red” “yellow” と続く彼女の自由で彩り豊かな世界、この先もどんな色が加わっていくのか、目も耳も離せない。
取材・文: 鈴木絵美里
ライブ撮影: 羽田誠
《SET LIST》
- 1.Opening Jam
- 2.Dance
- 3.Walking on the clouds
- 4.Sunny Day
- 5.I wanna go out
- 6.maybe maybe
- 7.How do I look?
- 8.赤
- 9.Just one girl
- 10.グルグル
- 11.Soup
- 12.1995
- 13.Ellie
- 14.BABY
- 15.Someday
- 16.NEW DAY
- 17.We are You are
- 18.「かわいい」
- 19.お月さま
- EN1.The Moon
- EN2.bye bye
藤原さくら
Live Blu-ray&DVD『「野外音楽会2018」Live at 日比谷野外大音楽堂 20180715』2019.01.16 Release!!
2018年7月15日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂で開催された、藤原さくらワンマンライブ「野外音楽会2018」。
チケット即完売・約3,000人のオーディエンスで埋め尽くされた自身初の野外ワンマンライブの模様がBlu-ray / DVDパッケージとして発売。
大ヒット曲「Soup (Acoustic)」をはじめ、メジャーデビュー曲「Walking on the clouds」から最新曲「NEW DAY」まで、人気楽曲を網羅したセットリストをキャリア初となる待望の映像商品化。
特典映像には、リハーサルおよびライブ当日のオフショット映像に加え、パッケージ初収録となる「The Moon」「Sunny Day」「また明日」のMusic Videoを収録。