ライブレポート

菅田将暉

バンドマンとしての、菅田将暉。
ファーストツアーで知る、役者が音楽を作りライブをする理由。

 2017年、人気のCMシリーズからドラマ、映画、バラエティ番組まで、誰もがその姿を見ない日はないほどの活躍を見せ続けてきた役者の菅田将暉。 傍目に見ても現状スケジュールに1ミリも空白の無さそうな彼が、なんとシングル『見たこともない景色』でデビューしたのは、誰もが驚いたことだろう。 そんな彼が、2018年3月にはアルバム『PLAY』をリリースすることになり(一体いつ制作していたのだろう)直前の2月に東名阪合計4公演のライブツアーを行った。 ツアータイトルの通りまさに“プレミアム”な時間に、彼は役者とは異なる手法で、一体何を作り、伝えたかったのか。 今回は、渋谷クラブクアトロでのファイナルの模様をお届けする。

 ビートルズの『Day Tripper』をSEにバンドメンバーと菅田将暉がステージ上に登場するやいなや、前方にどっと詰めかけるオーディエンス。アコースティックギターを抱え、自身もストリートミュージシャン役として出演しているドラマ作品の主題歌『さよならエレジー』を弾き始めた時点で早くも会場はこの日の最高沸点に達していた。 続けて菅田がリスペクトしてやまないバンドのひとつである、忘れらんねえよの『新・俺よ届け』のカバーも披露。 今回のバンドメンバーは、映画『何者』の中で菅田将暉とバンド演奏のシーンで共演した元・カラスは真っ白のメンバーたちががっちりと固めていることもあり、この作中で菅田がバンドマンを演じた時点から今日までが地続きになっているような嬉しさを、ファンは感じたに違いない。

「(前に人が詰まり過ぎている状況を察し)皆さん、ちょっと下がりますか!……いや、もう何も言う必要無いわ。1時間半はあっという間ですよ、一緒に時間を作りましょう!」

という菅田の第一声に熱く応じる会場。ライブとは一方的に何かを披露する場でなく、観衆とともに作る空間であることを彼はもう十分に掴み切っているようだ。 身体にグルーヴを取り入れ会場からパワーをもらい、同時に自分からも惜しみなく与え、バンドメンバーとは目配せして笑い合い……というライブ空間が持つ全ての美しい化学反応を誰よりも目一杯楽しんでいる様子の菅田は、はっきり言って、既に“バンドマン”以外の何者でもなかった。 そうか、彼は“歌手デビューした”というより“バンドを組んだ”のか、と冒頭から膝を打つような発見をもらう。

 自然と家で自分ひとりカラオケ用にギターを覚えてから今日までの日々も振り返りつつ、自身の父親が大好きだったという吉田拓郎の『今日までそして明日から』もカバーした。

「本当にライブツアーをやってよかった。初めて“この時間だけは信じられる”と思ったし、僕は本当に楽しいことをしたいです。そして、仕事じゃなく楽しい時間を作りたい、そう思ってやっています。(この時間が)終わってほしくないし、必ずまたやります」

MCでそう話し、自身が初めて作詞をした2ndシングル『呼吸』を歌った後、会場にも一緒に歌いますか、と語りかけ今度はBRAHMAN『今夜』のカバーも。 これは2017年度の各映画賞で主演男優賞をほぼ総ナメすることになった彼の主演作『あゝ、荒野』の主題歌であり、是非歌ってほしいとボーカルのTOSHI-LOWから直々にお達しを受けていた1曲でもあった。「ああ今夜 終わらないで」という歌詞に、終わらないでほしいこのライブの夜への思いも乗せ、歌い上げる菅田。

 『今夜』や、毛皮のマリーズによる『コミック・ジェネレイション』(これも自身が主演を務めた映画『溺れるナイフ』で主題歌だ)など、自らに所縁の深い楽曲のカバーを歌う時は至極楽しそうな一方、自分で作詞をした曲などは繊細だったり臆病な彼の一面がちらつくという対称性もなかなか興味深かった。

 「もう終わっちゃいますよ!」と自分に言い聞かせるかのように客席にも語りかけた本編ラスト、テレキャスターを下げて歌われたデビュー曲を聴きながら、このライブツアーで最もタイトル通りの“見たこともない景色”を見られたのは菅田将暉自身だったのではないか?と思わされた。

 アンコールでは「僕の人生が変わった曲でもあり、これまで最も家で弾き語った曲。家にいたら突然歌い始めたな、くらいの感じで聴いてください」と、フジファブリックの名曲『茜色の夕日』をアコースティックギター1本で歌う。 そして自身が作詞をし柴田隆浩(忘れらんねえよ)とともに作った『ピンクのアフロにカザールかけて』にある“自由にやらせてよ 僕の人生 僕のものだ”という言葉にこれでもかと魂を込め、バンドのボーカル菅田将暉は、ステージを後にした。

誰がどう見ても音楽と遊ぶ彼は本当に楽しそうで、自身のマネージャーからも「菅田くんにはこういう時間が必要だったんだね」と言われたと話しながら、その理解を得られたことにガッツポーズを示している姿が清々しかった。

 仲間とともに見つけた、とっておきの放課後の遊び場で、無邪気に音と戯れながら惜しみなく自らを解放しきったアンコールまで含めての全16曲。「まだ下手クソだし、できないこともたくさんある。音楽1年目の身としてはいろいろハードルが高すぎた」と話す彼だが、あの思い切り音楽で遊ぶ姿は、ファンは勿論のこと、“売れっ子タレント”の彼しか知らない人も含め、誰の胸をも打つに違い無い。

取材・文:鈴木絵美里
ライブ撮影:HAJIME KAMIIISAKA
機材撮影:小野寺将也

《SET LIST》
  1. 1.さよならエレジー
  2. 2.新・俺よ届け(Original:忘れらんねえよ)
  3. 3.ばかになっちゃったのかな
  4. 4.雨が上がる頃に
  5. 5.今日までそして明日から(Original:吉田拓郎)
  6. 6.呼吸
  7. 7.今夜(Original:BRAHMAN)
  8. 8.コミック・ジェネレイション(Original:毛皮のマリーズ)
  9. 9.浅草キッド(Original:ビートたけし)
  10. 10.いいんだよ、きっと
  11. 11.台詞
  12. 12.風になってゆく
  13. 13.見たこともない景色
  14. EN1.茜色の夕日(Acoustic ver.) (Original:フジファブリック)
  15. EN2.ゆらゆら
  16. EN3.ピンクのアフロにカザールかけて
菅田将暉

『SUDA MASAKI LIVE@LIQUIDROOM 2018.11.15』Blu-ray/DVD 2019.03.06 Release!! 菅田将暉が2018年11月15日(木)に恵比寿のLIQUIDROOMで開催した一夜限りのプレミアム・ワンマンライブ『SUDA MASAKI LIVE@LIQUIDROOM』が、映像作品集として2019年3月6日に発売されることが決定!
LIVE Blu-rayとDVDには、2018年11月15日(木)に恵比寿のLIQUIDROOMで開催した一夜限りのプレミアム・ワンマンライブで演奏された全曲を収録。 音楽ストリーミングサービス「LINE MUSIC」の「2018年間ランキング」で総合1位を獲得した「さよならエレジー」や、デビューシングル「見たこともない景色」、最新シングル「ロングホープ・フィリア」に加え、菅田将暉と親交のあるアーティスト、石崎ひゅーい「ピリオド」、米津玄師(+菅田将暉)「灰色と青」、あいみょん「ふたりの世界」などのカバーも収録。更に、アンコールで披露し現時点では発売未定の新曲「クローバー」を、弾き語りでそのまま収録されます。初回盤は三方背BOXの特別仕様。


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