GLAYのGLAYたる所以が、どの瞬間にも清々しくあふれていた。

メジャーデビュー30周年グランドフィナーレシリーズの東京ドーム公演2日目。奇跡のような光景がいくつも生まれた理由は、そこに尽きるのではないかと思う。

オープニング映像が流れる。自然に囲まれた森で焚き火をするTAKURO(Gt)、ジムでストイックな筋トレに勤しむJIRO(Ba)、悪そうな仲間に見送られて車を発進させるHISASHI(Gt)、バイクで滑走路を飛ばしヘリに乗り込むTERU(Vo)……メンバーそれぞれがドームに向かう直前の様子を演じた内容となっており、早くもGLAYらしいエンタメ精神が炸裂。

完全なフィクションかと思いきや、HISASHIはなんと自らの愛車を運転して会場に現れ、TERUはダイブする映像からまさかのワイヤーアクションで降り立つなど、5万人のオーディエンスを大いに驚かせてくれる。

Gibson Korina Explorer 1958
1958年に発表され翌年には製造中止となってしまった為、現存する個体が極めて少ない博物館級のレアモデル。『口唇』『嫉妬』『SOUL LOVE』で使用された。

サポートのTOSHI(Dr)と村山☆潤(Key)とともに“30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025”の文字が燦然と輝くステージに4人が揃い、ライブは特効の爆発に合わせて『口唇』から勢いよくスタート。間髪を容れず火柱が噴き上がったり、真紅のイメージで重なる『嫉妬』も連作のように聴かせたりと、国民的バンドのド派手な演出は痛快に続いていく。

いつもいっしょにいてくれて、30年経ってもこんなに素敵な光景を見せてくれて、本当にありがとうございます。今日はね、みんな一人ひとりがこれからも幸せでありますようにと、感謝の気持ちをたくさんたくさん詰め込んで曲をお届けします。しっかりと受け止めてください!

アニバーサリーを噛み締めるTERUのまっすぐなMC、銀テープ発射の『生きてく強さ』で祝祭感はいっそう増す。矢印型の花道を歩き、センターステージで演奏する4人。アリーナ席のBuddy(GLAYファンの愛称)と近距離でコミュニケーションを取りながら、ブレイクのきっかけとなった『グロリアス』含め、青春の血潮が滾る、この場にいるみんなの思い出と結びついた約30年前の煌びやかなナンバーを、屈託のない笑顔で分かち合う姿がなんとも楽しげだ。

Gibson Les Paul Standard 1959 w/Bigsby
『生きてく強さ』『グロリアス』『誘惑』『BEAUTIFUL DREAMER』で使用された本器は、ファクトリー・オリジナルビグスビーを搭載した稀少な個体。一時期はメタリカのカーク・ハメットが所有していたという。

メインステージに戻って「単独は10年ぶりとなる東京ドーム。この10年間いろいろあったでしょうけど、会場を出る頃には心がスッキリしているような、今日のGLAYがこれまででいちばんよかったと思ってもらえるようなライブにします!」と意気込みつつ、一転「歌ってほしいときはマイクを向けます。マイクを向けてないときは静かに聴いてください」と明るく呼びかけて爆笑を誘うTERU。

Top Dog JRO-01
ボディ材にスワンプ・アッシュが採用された初号機と同じ型番を持つ「メイプル2号」の本器は、今回最も多くの楽曲で使用された。シリアルナンバー:000005

ジョークのようで実は観覧マナーを考慮した発言に彼の優しさが垣間見え、場内はますますポジティブなムードに。そんなTERUのハイトーンボイスが映える真骨頂のミディアム曲『シキナ』『STREET LIFE』『Missing You』『都忘れ』『MIRROR』を繋いだメドレーも、ファン投票で選曲された今年4月リリースのベストアルバム『DRIVE 1993~2009 -GLAY complete BEST』『DRIVE 2010~2026 -GLAY complete BEST』を軸にしたセットリストも、集まってくれたすべての人に気持ちよく楽しんでもらいたいという誠実さで満ちている。

Top Dog JRO-01 初号機
JIROの代名詞とも言えるTop Dog JB Type の初号機。同形状のモデルを複数所有しているが、メイプルネック&アルダーボディの組み合わせは本器のみ。この日は『BLACK MONEY』『SOUL LOVE』『BELOVED』で使用された。シリアルナンバー:なし
Jackson Pro Series RRMG Rhoads
ランディVとも呼ばれるジャクソンを代表するオリジナルモデル。スルーネック構造でEMGピックアップがダイレクト・マウントにて搭載されている。この日は『BLACK MONEY』『彼女の“Modern…”』『疾走れ!ミライ』の3曲で使用された。

さらに、ベスト盤収録曲以外のスペシャルも用意。HISASHIとJIROが歌うパンキッシュな『BLACK MONEY』は、予想外だったことが窺える歓喜のリアクションが目立ち、ポリスキャップやナポレオンジャケットを纏った両者が“vs構図”で躍動するツインボーカル、ギターおよびベースソロの華麗な応酬、クラシックから引用した遊び心のあるフレーズなどによって、レア曲ならではの熱狂を生み出す。

どよめきが残る中、今度はTAKUROがひとりでセンターステージに登場。「これが俺の自慢のGLAYだ!」「TERU、JIRO、HISASHIに心からお礼を言いたい」とメンバーをストレートに称えたほか、氷室京介や小田和正とのコラボ、B’zの松本孝弘とTERUのセッションといった忘れられない出来事を挙げ、「こんなに幸せでいいのかな」と30年をしみじみ振り返るひと幕も。

長い間バンドを守ってくれたBuddyに「今日から全員GLAY!」と感謝を伝え、再び東京ドームに立つことを誓ったTAKUROは、まだデモテープすら作っていないという新曲『NEVER-ENDING LOVE(仮)』をアコギの弾き語りで披露。永遠を信じていなかった彼が、ここに来て永遠の愛を歌っている。その味わい深さ、温かいメロディに涙腺が緩む。同刻、屋外は一時的な豪雨が降っていたらしい。ザーッと聴こえる雨音も、まるで何かを洗い流していたかのようだった。

Journeyman #015改
フェンダーのルックスでギブソンの音がするギターが欲しいというオーダーで当初は2ハム仕様だったが、現在はSSHピックアップレイアウト(フロントはシングルサイズのハムバッカー構造)に変更されている。一般的なストラトキャスターの7/8のボディサイズで、スケールはミディアム、弦をボディ裏から通すハードテイル仕様だ。メドレー1、『軌跡の果て』『BRIGHTEN UP』『HONEY』で使用された。

『NEVER-ENDING LOVE(仮)』のメロディを村山がピアノで受け継ぎ、30年の悲喜こもごもを捉えたライブ映像がドラマティックに流れ出す。やがて決然と示されたメッセージ“死ぬまでGLAYをやらないか”――それを合図にメインステージで届けられたのは、節目にふさわしすぎる『軌跡の果て』。そして、溝口肇の指揮による室屋光一郎ストリングスを加えた『つづれ織り ~so far and yet so close~』(竹上良成のサックスも素晴らしい)と『pure soul』(TERUが渾身のハンドマイク歌唱!)。珠玉のバラードが並んだ本ブロックはとりわけ感動的で、観る側もただただ立ち尽くして浸るのみ。

Zemaitis Metal Front 1994
コイルタップスイッチやGotohマグナムロックペグへの変更など、拘りのカスタムが施されている。最も多くの楽曲で使用されたHISASHIのアイコン的ギター。

GLAYの曲には“戻れない”という歌詞がしばしば散見される。過去を悔やむような“戻れない”、自分の現在地を確かめるような“戻れない”。そういった戻りたくても戻れない人生のあれこれを思い起こしながら聴き入り、GLAYの音楽とともに今を生きているBuddy。さまざまな苦悩も刻みながら不器用にバンド活動を進め、30周年でより幸せにライブがやれている4人。互いに戻れない道を意識し、作用し合ってきた濃密な関係性だけに、「これからもずっといっしょにいようぜ!」と叫ぶTERUの願いはなおさら胸を打つ。

世界はいろんな争いがあって、日本も大変なことがたくさんあります。でも、愛を持ってみんなと未来を見つけて歩んでいきたいです!

そんな想いを込めたとTERUが語る2つ目のメドレーも、豪華なストリングス隊を従えてプレイ。『BE WITH YOU』『ここではない、どこかへ』『とまどい』『SPECIAL THANKS』『春を愛する人』とメガヒット曲を贅沢に解き放ち、TAKUROがキーボードを奏でる場面もあったりと、とにかく出し惜しみはしない。“あなたに会えた事…幸せの後先”“君といた日々は宝物そのもの”など、歌詞にも今までの感謝が表れている。それにしても、ミディアムの畳みかけでこんなに聴き手を魅了できるのは改めて凄まじいこと。ポップスでもロックでもない、GLAY独自のメロディアスな音楽だからこそ為せる業なのか。

今日はすごくスペシャルなメニューで、僕らがやりたいことを詰め込んでいます。メドレーは2つともHISASHIが考えてくれたんですけど、Buddyのみなさんをいちばんよくわかっているんじゃないかというくらいの選曲でした」と話すTERU。スタンド、バルコニー、アリーナと、全エリアのオーディエンスに声をかけ、ライブはいよいよ後半へ。

ストリングス隊が捌け、ギラつく照明とアップチューンに切り換わる。最新オリジナルアルバム『Back To The Pops』からの『BRIGHTEN UP』以降は、TERUがマイクを客席に向ける時間も再び増え、胸熱な英語詞コーラス部分“For 30 years we’ve been looking for little thing little thing”(訳:30年間小さなものを探していたんだ)などをいっしょに歌うことでグングン高まっていく一体感が心地よい。

TERUが右手人差し指を掲げてタイトルコールした『彼女の“Modern・・・”』では、メンバーそれぞれがステージを駆け回り、3塁側から1塁側の端まで、さらに花道へと移動しながら演奏。パワフルな歌とサウンドで果敢に攻め、東京ドームを激しく揺らしてみせる。TAKUROのストロークで幕を開けた『疾走れ!ミライ』も、光が降り注ぐような爽快さのもと、活気あるシンガロングを巻き起こす。

これが幸せっていうんだね。いつも最上級の幸せをありがとう! これ以上を見つけるの難しいよ(笑)。みなさんのおかげでここに立たせてもらっています。でも、またやりたいね。10年後とかじゃなく、3年後とかにさ

充実感が滲むTERUの言葉を経て、本編ラストは新しい日々の始まりを彩る『SOUL LOVE』。センターステージに集まった4人の最高な笑顔、たくさんの紙吹雪がキラキラと舞う光景、そして5万人での待ちわびた大合唱……すべてが来場者の記憶に深く刻まれたに違いない。コロナ禍でやむなく中止となった25周年のドームツアーだが、“いつかドームでこの曲をいっしょに歌おう!”という約束を、GLAYはまるでヒーローのごとく見事に果たしたのだった。

アンコールにおいても驚愕のサプライズが。『誘惑』で突如メインステージに召喚されたのは、なんとL’Arc~en~CielのHYDE。まさかのシークレットゲスト(前日公演はYUKIが登場)に対し、オーディエンスは地鳴りのような大歓声を送る。

白のファージャケットやユニオンジャックのインナーが美しいHYDEの出で立ち、随所でハモり合うTERUとHYDEのアグレッシブな歌唱。理解がまったく追いつかない情報量で、辺りはたちまち狂乱の渦に。

すごい歓声!」と思わず笑ってしまったTERUは、ここぞとばかりに初打ち合わせ前の粗相を謝り出す。HYDEも「ただごとじゃないんですよ、みなさん」と口を開き、「日時だけ先に決めて“場所はのちほど”と言ってたのに、当日になっても連絡がない。ギリギリまで待って“そろそろ教えてもらっていいですか?”と聞いたら、“もう始まるよ”みたいな返事が来て!」と、勝手に予定が早まっていたことを暴露。

ライブのアンコールではなくオープニングで共演する案もあったそうだが、HYDEは「丁重にお断りしました。みんながそっちに行きかける中、僕はJIROちゃんだけが頼みで(笑)」と顛末を話す。「いっしょにこの時代を駆け抜けられて光栄です。30歳おめでとうございます!」というHYDEの祝辞を、そそくさと横一列に並びニコニコで聞くHISASHI、JIRO、TAKURO、TERUの姿にはほっこり。

共に1994年にメジャーデビューし、日本の音楽シーンを牽引してきた盟友とのコラボは続き、L’Arc~en~Cielの『HONEY』がセンターステージで投下されると、またもや怒涛の盛り上がり。HISASHIの頭を優しく撫で、TERUの頬にキス。HYDEが自由奔放なアクションで焚きつけるさまが観ていて楽しい。

骨太さが立ったJIROのベースやTAKURO×HISASHIのツインギターソロなど、GLAYのサウンドでラルクの曲が堪能できた点も貴重。肩を組んだり、見つめ合ったりしつつ、超ド級の高音ボーカルを轟かせたTERUとHYDEは、鮮やかなジャンプで夢のような時間を締め括った。

HYDEを送り出したあとは『BELOVED』。HISASHIがイントロをミスしてやり直しになったものの、TERUがすぐに「次はみんなの声を聴かせてほしいと思ってます」と何事もなかったかのように同じ曲振りをして場を和ませる。Buddyの熱唱で愛を実感した4人は、少しでも近くでお礼を伝えるため、フロートに乗ってアリーナを一周(BGMは『SAY YOUR DREAM』)。5万人に手を振りながら、フリスビーやタオルを客席へ投げ込む。

写真撮影も済ませ、ラストは「どんなに歳を取っても、夢見て行こうぜー!」というTERUのシャウトから『BEAUTIFUL DREAMER』。30周年の先に東京ドームでライブをやる。新たな約束を交わしたGLAYは、再びストリングスのアンサンブルとともに並々ならぬ気概でパフォーマンスし、メモリアルな公演を華々しく終えた。エンディングでスクリーンに映された回答(↓)、本当にいいバンドだなと思う。

永遠にGLAYをやりたいです

TERU HISASHI JIRO TAKURO

取材・文:田山雄士
PHOTO:田辺佳子、岡田裕介

《SET LIST》
  1. 1.口唇
  2. 2.嫉妬
  3. 3.生きてく強さ
  4. 4.グロリアス
  5. 5.メドレー1:シキナ~STREET LIFE~Missing You~都忘れ~MIRROR
  6. 6.BLACK MONEY
  7. 7.NEVER-ENDING LOVE(仮)
  8. 8.軌跡の果て
  9. 9.つづれ織り ~so far and yet so close~
  10. 10.pure soul
  11. 11.メドレー2:BE WITH YOU~ここではない、どこかへ~とまどい~SPECIAL THANKS~春を愛する人
  12. 12.BRIGHTEN UP
  13. 13.彼女の“Modern・・・”
  14. 14.疾走れ!ミライ
  15. 15.SOUL LOVE
  16. <ENCORE>
  17. EN1.誘惑
  18. EN2.HONEY
  19. EN3.BELOVED
  20. EN4.BEAUTIFUL DREAMER
GLAY

GLAY 30周年記念ベストアルバム 4/23 2枚同時リリース!

DRIVE 1993~2009 -GLAY complete BEST
通常盤
CD ONLY(2CD) 3,850円(税込) / PCCN-00067
CD+DVD(2CD+DVD)アナログサイズ特殊ジャケット 7,150円(税込) / PCCN-00066
CD+Blu-ray(2CD+Blu-ray)アナログサイズ特殊ジャケット 7,150円(税込) / PCCN-00065

DRIVE 2010~2026 -GLAY complete BEST
通常盤
CD ONLY(2CD) 3,850円(税込) / PCCN-00070
CD+DVD(2CD+DVD)アナログサイズ特殊ジャケット 7,150円(税込) / PCCN-00069
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