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それこそが音楽の、RYTHEMの魔法なんだろう。だからみんな、2人と一緒に歌っていたんだ。
折しも、デビュー20周年記念ベストアルバム『RYTHEMの世界』の発売日となった5月21日、 RYTHEMがZepp DiverCity(TOKYO)を舞台に「RYTHEM デビュー20周年記念ライブ「楽しさを運ぶ幸せのリズム便」」を行った。チケットはSold Outを記録。それだけ多くの人たちが、2人との再会を心待ちにしていた。これからも共に歩んでゆく約束を交わそうと、期待を胸に、2人の姿を待っていた。舞台後方には、大きな鳥籠が置かれている。RYTHEMの最新版のアーティスト写真に映し出されていた、あの巨大な鳥籠だ。これから、どんな物語が新たに綴られるのか…。YUI(新津由衣)とYUKA(加藤有加利)、2人が同じリズムを刻みながら、真新しい、真っ白な五線譜の上を駆けだしたとき、そこに、どんな奇跡の音符たちの連なりが生まれるのだろうか…。先に触れておくと、この日はアンコールを含めて20曲を披露。そこも、20周年にかけてのことだと思いたい。
暗くなった場内に響きだしたのは、螺子を巻く音。流れだしたオルゴールの音色に乗せ、2人が登場。舞台に現れたYUIとYUKAはまっすぐ前を見つめ、SEの中で2人の語りが響く。
「世界中にウタのタネを蒔きました…あの日の続きをあなたと…」
「Talala… talala…」と綺麗なハーモニーを描きながら、ゆったりと物語が幕開けた。冒頭を飾ったのが、『一人旅シャラルラン』。YUIの歌声へYUKAが思い(歌声)を重ねれば、YUKAの歌声へ、今度はYUIが思い(歌声)を重ねあう。さらに2人で描いた綺麗なハーモニーを美しい歌声の風に乗せ、場内を埋めつくした一人一人の心の中へわた毛のような歌の種を飛ばし、そっと植えつけてゆく。2人は「いつもつながってるんだよ」と歌っていた。12年ぶりに2人が飛ばした歌の種は、一人一人の心の中で芽吹き、互いに発する思いの熱を感じあいながら、少しずつ、少しずつ。でも、着実に芽吹いた芽を太陽(2人)に向けて伸ばし始めていた。
「ねぇ 聞こえますか?」と、2人のハーモニーが響き渡る。RYTHEMのデビュー曲『ハルモニア』だ。ピアノを弾きながら歌うYUIと、アコギを爪弾き歌うYUKA。互いの気持ちを調和するように歌い奏でながら、2人はこの場に、光に包まれた開放的な景色を描きだす。美しい2人の歌声が、この空間に淡い輝きが降り注ぐように広がっていく。心が晴れ渡る、この感覚が気持ちいい。
ふたたび2人は舞台中央に立ち、優しく歌声を重ねだす。『風船雲』でも軽やかに歌声を弾ませながら、そよぐ歌の風で、場内中の人たちの身体を優しく揺らしだす。曲が進むごとに風は勢いを強め、いつしかハーモニーという上昇気流に乗せて舞い上がり、共に大空を羽ばたく心地よさを感じていた。そして…。
互いの存在を確かめあうように、お互いに顔を見合わせ、温かい歌声で、「あたりまえに 名前呼んだら」と『てんきゅっ(ニューサマー便)』を歌いだす。2人の歌声に気持ちを踊らせた演奏陣が、心地よく跳ねた演奏を奏でだす。その音色に合わせて、フロア中から手拍子が起き出した。『ハルモニア』のときにも感じていたが、『てんきゅっ』に触れ、20年前…まではいかずとも、あの頃の自分が心の中から顔を覗かせていた人たちも多かっただろう。2人は寄り添いながら、ときに掲げた手を大きく左右に振りながら歌っていた。もちろんフロア中の人たちも、2人と同じ動きをしながら、この場に一体化した熱を生み出していた。2人と満員の観客たちが、歌を通して互いに心を引き寄せ合えば、何時しか気持ちを踊らせていた。この関係が素敵じゃないか。ほんと、てんきゅっ!!だよ。
MCでは、「ようやく会えましたね」と、2年前にRYTHEMの復活を告げてから、その言葉通り、12年ぶりにライブという場を通して再会できた喜びを、2人は口にしていた。
ふたたび、楽器を手にした2人。YUIのピアノの弾き語りから歌がスタート。そこへYUKAの歌声が重なれば、さらにバンド演奏も彩りを添えてゆく。2人は、今でも側に寄り添いたい願いを胸に、大切な人への思いが届くようにと『願い』を歌っていた。切々とした2つの歌声が、淡い想いの景色を映し出す。いつしか背景が月夜に変わっていたことも、胸をキュッと締めつけた理由だったのだろうか…。
淡い星明りが照らす…いや、小さな蛍火が零す明かりの中、2人は夏の終わりの景色の中へ飛び込んでいった。ひと夏の思い出を、線香花火のように儚く散ってしまわないようにと、『蛍火』に乗せ、心のアルバムへしっかりと歌声のピンで張り付けていた。
YUIとYUKAが、大きな鳥籠の前へ。YUIが、「この曲はYUKAへの手紙として書いた歌。今では2人の友情のテーマソングです。今日は20周年を迎えた、RYTHEMとみんなとの関係の歌として届けたいと思います」と語りだした。その言葉を受けて歌ったのが、『アイシカタ』。YUIが歌いだしを担えば、YUKAが歌声を通して想いを重ねてゆく。「どんなに近くにいたとしても 見えないことはたくさんある 大丈夫だと言ってる君の目は なんだか寂しそうだった」と、言いたくても言えず、胸の奥に閉まっていた想いを引き出しては、今だからこそ素直に想いを届けるようにYUIが歌えば、その思いを抱きしめるように歌うYUKA。2人は、これからも一緒に、ずっと側で寄り添いながら同じ夢を見ていこうと、ここに集まった仲間たちへ歌いかけながら、互いの心のリズムをしっかりと重ね合わせていた。
ここからは、しばし、YUIのピアノとYUKAのアコギ、2人だけの演奏によるコーナーへ。2人きりだからしっとりと歌い奏でる…と思っていたら、予測を嬉しく裏切るように、2人は満員の観客たちへ手拍子を呼びかけた。観客たちの手拍子が作り出す明るく弾むリズムの上で、2人は歌声をリードに、そこへアコギやピアノの音色を寄り添えながら『車輪の下』を歌いだす。歌詞へ記した「ピアノとギター鳴らし Music of Life どこでも行くよ」の一節のように、場内中の人たちが、2人の歌声と演奏へ手拍子と気持ちを一緒に寄り添え、軽やかに心を弾ませながら、「楽しい」という気持ちを大きく膨らませていた。
続く『Song for you』では、歌声や曲調の色をガラッと変え、「君が泣いたとき僕がいるよ 僕が泣いたとき君を呼ぶよ」と、ときにハーモニーを作りながら、互いの淋しい気持ちへ寄り添い、支えあうように歌っていた。シンプルな演奏を背にしているからこそ、2人の抑揚した歌声の魅力をしっかりと感じられたのも嬉しい。
木漏れ日のような、美しくも聡明な2人のハーモニーからスタート。YUIの奏でるローズの音色に乗せ、2人は澄み渡る歌声を夏空へ響かせるように『小麦色のラブソング』を歌っていた。ふたたび、心が軽やかに弾みだす。この曲では、YUIの演奏を軸に据えながら、途中でYUKAがピアニカを吹き、爽やかな景色の中へ少しノスタルジックな彩りも描き加えていた。
ふたたび2人は、大きな鳥籠の前へ。YUIが「いつか聞いたことがある」と歌いだせば、その声を受けて、YUKAが「命の終わりの吐息を」と想いを膨らませてゆく。『無題』を歌っている間中、2人はずっと互いを見つめ合い、顔を近づけながら、「愛する」気持ちの本質を確かめあうように歌っていた。歌が進むごとに、2人のハーモニーが色を濃くするごとに、深まる想い。ピアノのみというとてもシンプルな演奏を背景に歌ったことで、2人の声の絵筆は、触れている一人一人の心に、いろんな想いの色を優しく塗っていた。
ふたたびバンド演奏へ。ウッドベースなども用いたアコースティック寄りのスタイルの元、続く『Circulate』でもYUIとYUKAは、大きな鳥籠の中で顔を見合わせ、2人だからこそ作りあげられる空気の中、お互いのマイクを交わしながら優しいハーモニーを作っていた。互いの気持ちを確かめあうような声に触れた歌は、次第に淡い光を放ち出すようにも感じられた。2人の信頼が深まるほどに、その歌声は温かな光を放つようにも見えていた。
「いつも強く願う「心がのぞければいい」と」と、YUIが力強く歌いだす。その歌声へ寄り添いながらも、強さや深みを与えていくYUKAの歌声。『万華鏡キラキラ』だ。温かな光を放つ想いが、どんどん輝きを増してゆくようだ。万華鏡の中に広がるきらびやかな世界のように、2人も、相手を思いやる気持ちを増すごとに、穏やかに広がるハーモニーにも様々なキラキラとした想いの色を深めてゆく。2人の温かい歌声に、このままずっと包まれていたい。
ライブも、後半戦へ。さぁ、ここからはもっと弾けようか。彩り豊かで鮮やかな音符たちが、演奏陣の楽器を通して踊りだす。その音色へ導かれ、フロア中から起きた跳ねたクラップ。YUIが「何かひとつの偶然ずれたら」と『Life Tree』を歌いだす姿を、YUKAも優しい表情で見つめながらクラップをしていた。それは、逆も然り。2人の歌声は、演奏や、観客たちの鳴らす手のリズムを力にどんどん華やいでゆく。みんなの楽しむ心が一つに溶け合うほどに、気持ちがカラフルさを増してゆくようだ。2人が掲げた手を大きく左右に振るたびに、場内中の人たちも心を重ねあうように大きく手を振っていた。その景色が素敵じゃないか。
胸をくすぐるキャッチーな『あかりのありか』でも、YUIとYUKAが優しいハーモニーを描きながら、この会場を微笑みで満たしてゆく。この曲でも、場内中の人たちが、2人に向かって手や、手にしたカラフルなペンライトを振りながら、揺れる光の波をこの空間に作りあげていた。気持ちがウキウキしてゆく。心が、どんどん晴れ渡る。メロディーが輝きを放つ。そして…。
2人のハモる歌声が、軽やかに踊りだす。少しスキップをするような気持ちで、2人は、青空のもとを散歩するように『メロディ』を歌っていた。ときどき「Fu~!!」と上げる声に合わせ、満員の観客たちも、心の中で軽やかに足を踏み出し、共に「Fu~!!」と声を上げてスキップをしていた。顔がニヤけるのは、2人とピクニックをしているような気分を味わえていたからだろうか? 楽しい。楽しさが、どんどん膨らんでゆく。
MCでは、中学生のときに出会った2人が、歌声を重ねながら、互いの心の波長も一つに深め合っていったこと。互いの信頼を魅力に、RYTHEMとして大海(メジャー)へ漕ぎだしてゆく中、いつしか心のピッチが擦れだし、歌声を重ねあうことから遠ざかったこと。でも、それぞれが、自分の心の声に耳をそばだて続けた10年という歳月の中で、ふたたび2つの声を重ねあう喜びへ惹かれあい、今へ繋がったことを述べていた。
2人の心が、ふたたび一つに調和したときに生まれたのが、今の自分たちの心模様を歌にした最新曲の『再愛』だった。2人は「重なった2つの歪な○(まる)」と、温かい声を重ね合わせて歌っていた。その2つの○は、一つに重なり合い大きな一つの丸になっているわけではない。互いの心が大きく育ち、ふたたび互いの丸が距離を縮め、2人の丸の重なり合う色が、より深みを増す輝きを放ちだした。その光の深みに心惹かれた2人が、時を戻すように、大人の心を持ったまま、出会った13歳のYUIとYUKAへと気持ちを戻し、ふたたび、あの頃のキラキラとした自分たちになっていた。重なり合った2つの丸が、これからどんな風に大きさを変えてゆくのかはわからない。でも、重なり合う歪な形の丸が、互いにとって掛け替えのないものだと確信を得ているからこそ、2つの音符は、RYTHEMという五線譜の歩みの中を自由に行き交いながら、これからもいろんな彩りを持ったハーモニー(物語)を綴れ織ってゆくに違いない。
本編最後に歌った『ホウキ雲』では、重なり合った2つの丸に、たくさんの人たちが心の丸を重ねていた。YUIとYUKAと一緒に、優しい声で『ホウキ雲』を口ずさみながら、温かな眼差しを、舞台の上で輝く2つの輝きへ向けていた。いや、みんなの心が一つに重なり、調和した大きな一つの輝きを、この場に作り上げていた。
アンコールでは、ふたたびバンド演奏に乗せ、少年や少女の頃の自分に戻り、一緒に胸をときめかせながら『三日月ラプソディー』に耳を傾けていた。この曲に触れている間、ドキドキしながら気持ちが弾めば、ニヤニヤとした顔のまま落ち着くことがなかった。だけど、それこそが音楽の、RYTHEMの魔法なんだと思う。だからみんな、2人と一緒に「La la la la」と歌っていたんだ。
最後の最後に、改めて始まりの地へと立つように、それぞれの指先が紡ぐ音符のせせらぎの上で、2人が心の波長を当たり前のように重ね合わせながら、優しい声で『自由詩』を歌っていた。その“よろこびのウタ”は、ここから新たに切り拓いてゆく道筋をしっかりと照らし出していた。その光の筋の先へと踏み出した2人を、たくさんの人たちが温かい表情で見つめていた。
一度閉じた物語が、ふたたび新しいページをめくり、そこへ輝いた2つの歌声のペンでRYTHEMは新たな物語を綴りだした。その物語の行く先を、これからも共に読み進めたい。
TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 1.一人旅シャラルラン
- 2.ハルモニア
- 3.風船雲
- 4.てんきゅっ(ニューサマー便)
- 5.願い
- 6.蛍火
- 7.アイシカタ
- 8.車輪の下
- 9.Song for you
- 10.小麦色のラブソング
- 11.無題
- 12.Circulate
- 13.万華鏡キラキラ
- 14.Life Tree
- 15.あかりのありか
- 16.メロディ
- 17.再愛
- 18.ホウキ雲
- <ENCORE>
- EN1.三日月ラプソディー
- EN2.自由詩
RYTHEM
結成20周年を迎えた"楽しさを運ぶ幸せのリズム便" RYTHEMがビルボードライブ横浜に初登場
RYTHEM ビルボードライブ横浜
2023/9/6(水)
1stステージ 開場16:30 開演17:30
2ndステージ 開場19:30 開演20:30
【出演】
RYTHEM
武部聡志(p)
福原将宜(g)
【リズムの森FC先行】
06/02(金)22:00~06/11(日)23:59
https://www.rythem.jp/rythemnomori-towa
【Club BBL会員先行】
2023/7/6(木)12:00正午より
http://www.billboard-live.com/membersarea/webres_yokohama.html
【一般予約受付開始】
2023/7/13(木)12:00正午より
チケット詳細はRYTHEM official HP infoへ
https://www.rythem.jp