KEYTALKが魅せた、変わらずに進化した4人の姿。
画面越しなんか関係ない、ライブバンドとしての実力
2007年9月、realとして出発したバンドは瞬く間に人気バンドへと成長した。「2011年には下北沢SHELTER(キャパ:250人)でライブをしていたんだよ」「2016年は新宿LOFTでライブが見られたんだよ」なんて、誰が信じてくれるだろうか。今やKEYTALKは、押しも押されぬ中堅バンドである。フェスに出演すれば1番大きなステージを任され、ワンマンをするとなれば横浜アリーナだって埋めてしまう。
じゃあ、彼らは“あの頃”と変わってしまったのか。答えは「NO」だろう。下北沢のライブハウスに立っていたときから、KEYTALKはずっとライブバンドだし、ずっと誰かにとってのヒーローだし、ずっといい奴なのである。9月26日、オンラインで開催された『4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い蜜のよう~2010-2014』は、そんなことを強く実感させた。
KEYTALKのメンバーが、会場に入る映像からライブはスタート。2020年からドンドン時代は遡り、たどり着いたのは2010年だ。黒い背景の前に佇むと、『FREEDOM』で甘い時間を封切った。四角いステージに立ち、近い距離で演奏する彼らの姿は、ライブハウスに立っていた“あの頃”を彷彿させる。そのまま『night focus』に繋いでいくのだから、本当にズルい。コメントの言葉を借りるならば、まさしく「古株泣かせ」の選曲なのだ。過剰に整えられ過ぎていない生々しい音質も、ライブハウスのヒリヒリした感覚を呼び起こす。そこに『フォーマルハウト』のギターイントロが注入されるんだから、エモが溢れだしてしょうがないじゃないか。首藤義勝(Vo.&Ba.)の優しい歌声に、巨匠(寺中友将/Vo.&Gt.)の伸びやかなハイトーンも重なり、すでに感情は大渋滞。たった3曲で彼らは、まんまと時計の針を戻して見せた。
今回のライブは曲間に「THE 自粛生活」という、メンバーの自粛生活の様子を挟みながら展開。「case 1:武正の場合」では“#わしつなぎ”をする小野武正(Gt.)の様子が映し出された。ほのぼのと画面を眺めていると、『PASSION』でステージは一変。一気に後ろのスクリーンが色づき、4人を彩り始めたのだ。『orange and cool sounds』でクールなKEYTALKを見せつけ、『サイクル』では八木優樹(Dr.)お得意の祭りビートでオーディエンスを沸かせる。「ああ、やっぱり変わってないな」と、思わずにはいられない。2013年、メジャーデビューしたタイミングで、彼らは変わった“ように見えた”。髪色も派手にしちゃって、リードも思いっきりキャッチーになって、フェスで盛り上がる曲も増えて。好きだったKEYTALKが、どこかへ行ってしまったように感じた覚えがある。でも、きっと彼らの真髄は何も変わっていなかった。目につきやすい部分がちょっと変わっただけで、いつだって誰かの見方でいてくれるライブヒーロー。2010-2014の曲を堂々と演奏する彼らの姿は、その事実を再び思い出させたのだ。
「THE 自粛生活 case 2:八木の場合」では、パワプロをプレイする八木の姿が。キュートな彼に癒されていると、色気むんむんの『MURASAKI』へ。メロディックなギターが高揚感を煽り、疾走感を連れて落ちサビに駆けていく。簡潔に言ってしまえば、変哲のない王道ギターロックかもしれない。しかし、実力のある4人だからこそ、逃げのない王道がかっこいいし、素材の強さがよくわかる。根底に流れるマインドを変えることなく、技術面では間違いなく進化を重ねてきたのだ。ハイハットが4カウントを刻むと、色気から瞬時に爽やかムードへとチェンジ、スカッとしたサビが『マキシマム ザ シリカ』で抜けていく。音を重ねながら回していく間奏は、息がぴったりなんてものじゃない。しっかりと噛みあった音楽は絶妙なグルーブを生み出し、曲のなかで呼吸が生まれていた。そして繋がれる、『fiction escape』。23歳も26歳も超えてきて、あの頃の自分を振り返る余裕が出てきた今の彼らだからこそ出せる音楽が鳴っていた。
筋トレする巨匠の姿を映した「THE 自粛生活 case 3:巨匠の場合」を経て、ライブはどんどん熱を増していく。終盤に差し掛かってきたところで『トラベリング』『sympathy』『a picture book』と、MVを交えたステージ構成を作ってくるところも本当に憎い。こんなの、昂ぶらないわけがないじゃないか。全力でいい曲を作って、全力でかっこいいライブをして、全力で遊ぶときは遊ぶ。彼らはそうやって時を重ねてきたのだと、MVとクロスするライブは提示しているようだった。忍者修行をする義勝の様子を描いた「THE 自粛生活 case 4:義勝の場合」を挟み、ラストスパートに突入していく。
前方のスクリーンも使い『バミューダアンドロメダ』のスペーシーな世界観を存分に描ききると、『blue moon night』と宙を繋ぐ。近しいテーマであったとしても、違う景色を描き、新たな世界を魅せていく。KEYTALKが実は超楽曲派であることを、感じずにはいられない。勢い冷めやらぬまま『コースター』へ突っこみ、余力残さぬフルパワーの演奏を披露した。MCなしで進んでいたライブの最後、ようやく巨匠が口を開くと「ラスト1曲、踊りましょう!」と一言。導かれたのはKEYTALKきってのキラーチューンである『MONSTER DANCE』だ。ノリノリなメンバーの様子は、目の前にファンの顔が見えているよう。ライブハウスでライブをするときと何ら変わらぬ、激熱パフォーマンスを繰り広げ本編を締めくくったのだ。
ライブ終了後は、ファンも参加できるトークコーナーへと突入。八木の「にゃいっ!」も飛び出し、和気あいあいとしたライブMCの空気が流れる。武正に対して「ぺーいっ!」とつくコメントも、なんら普段のライブと変わらない。気持ちを送った分、気持ちが返ってくる。KEYTALKのオフラインライブで流れる時間が、オンラインライブにも存在していた。この日は、新曲となる『流線ノスタルジック』のMVも初披露。トークパートあり、ZOOMでのファンとの交流あり、新作MV公開ありと盛りだくさんなアフタートークとなった。
武正はアフタートークで「オンラインライブって繋がれるんだね」と話していたが、「KEYTALKだからできたんだよ」と返したい。オフラインのライブでも、しっかりとオーディエンスと向き合ってきた彼らだから、オンラインでも気持ちを届けることができたのだと。2020年になったとしても、バンド結成当初の熱い気持ちを忘れない4人だからできたのだと。
10月31日は、無観客オンラインワンマンライブ『4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い蜜のよう~2015-2020』の開催も決定している。画面越しなど感じさせない眩いばかりのエネルギーを、ぜひこのライブで感じてほしい。
取材・文:坂井彩花
《SET LIST》
- 1.FREEDOM
- 2.night focus
- 3.フォーマルハウト
- 4.PASSION
- 5.orange and cool sounds
- 6.サイクル
- 7.MURASAKI
- 8.マキシマム ザ シリカ
- 9.fiction escape
- 10.トラベリング
- 11.sympathy
- 12.a picture book
- 13.バミューダアンドロメダ
- 14.blue moon light
- 15.コースター
- 16.MONSTER DANCE
KEYTALK
KEYTALKオンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い蜜のよう~」2015-2020 開催決定!
オンラインライブ開催決定!
オンラインワンマンライブ第2弾もスペシャルな内容でお届けいたします!
開催日:2020.10.31(土)
「4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い蜜のよう~2015-2020」
OPEN 19:30 / START 20:00
視聴チケット:¥3,000
▼配信視聴チケットご購入はこちら
https://keytalk.spwn.jp/events/201031-4mitsu