2019.9.5@Zepp DiverCity TOKYO 菅田将暉 LIVE TOUR 2019“LOVE”

『LIVE TOUR 2019“LOVE”』ライブレポート

見る者を惹きつける、音楽に注がれた純粋な愛

 多くの人は、何者かになりたくて音楽をする。有名になりたい、ヒットメーカーになりたい、広いステージに立ちたいと、その思いは様々だ。一方で菅田将暉は、何者かになることを手放したくてミュージシャンになった人物だ。虚構と現実が混ざり合う役者という職業に身を置くなかで、自分自身を失わないために手を伸ばしたものが音楽だったのである。だからなのか、彼の表現に薄っぺらいかっこよさは存在しない。溢れ出ているのは、ただ美しいものを作りたい、音楽を全身で楽しみたいという純粋な思いだ。

9月5日、Zepp DiverCityにて開催された「LIVE TOUR 2019“LOVE”」も、菅田の持つピュアな煌めきが存分に発揮された一夜となった。

 暗転を経て真っ赤なライトがステージを照らすと、バックバンドのKNEEKIDSが登場。それを追いかけるように菅田将暉が現れると、華やかな歓声が会場に響き渡った。菅田自身が作詞を手掛けた『ソフトビニールフィギア』から、ライブはスタート。1曲目にも関わらず左右に揺れる手でフロアは埋め尽くされ、すでに終盤のような一体感が会場を包み込む。これが菅田の持つ“周りを本気にさせる力”ということなのか。白のノースリーブにベルボトムを合わせたファッションも往年のロックスターを彷彿させ、“時代が動く瞬間を見れるのではないか”とより一層胸を高鳴らせた。ジャンプで封切ったのは『ロングホープ・フィリア』。歌詞一つひとつを丁寧にマイクへ誘う様は、秋田ひろむ(amazarashi)の言葉を漏らすことなく伝えようという意志を強く感じる。なかでも“それを敗北とは言わない”というフレーズは色濃く表現され、ヒーローが夢追う者を励ますようにも夢追う者が自分自身を鼓舞するようにも響いた。

 真っ黒なGibson J-45で紡がれたのは、石崎ひゅーいとの思い出の曲である『クローバー』。空気をたくさん含んだ穏やかな声は柔らかいのに熱っぽく、一歩でもコントロールを間違うとその身を焦がしてしまいそうなほど。必死に平静を保っているようにすら見える不器用な温度感は、若き日の尾崎豊を想起させた。

『あいつとその子』では自らの言葉で語りかけ、『りびんぐでっど』では仮面ライダーのような決めポーズで悪役めいた笑みを浮かべる。いずれの場面でも興味深かったのは、菅田のステージングはアイドルともバンドマンとも違うということだ。例をあげるとするならば、彼は観客に堂々と背を向ける。これは俳優として“後ろ姿でも魅せる”ということを体得しているがゆえの行動なのではないだろうか。肉体からつま先、頭のてっぺんまで気を配った表現が身についているからこそ、臆することなく振り返ったままで演奏ができるのだ。

 深くブレスを吸うと、たちまち菅田は『まちがいさがし』の世界へ潜っていった。初めて誰かのために歌ったという1曲は、エネルギーにのぼせそうになるくらい言葉のパワーが強い。“間違いか正解かだなんて どうでもよかった”というリリックには、世の中の正しさだけに左右されず己の信ずるものを追い求める彼自身の意志が滲む。

 MVの世界に迷いこんだような演出で観客を引きこんだのは、あいみょんとフィーチャリングを果たした『キスだけで feat.あいみょん』。本来であれば彼女とパートを二分して歌う楽曲なのだが、今回はどちらも菅田が歌いあげた。とある男女の様子を、声のトーンや「?」の有無、間の取り方などで鮮明に描いてみせる。ディティールまで配慮の行き届いた表現には、俳優・菅田将暉の息吹が隅々まで宿っていた。

 アルコ&ピース平子らと作り上げたコメディータッチの幕間映像を挟み、ライブはいよいよ後半戦へ。デビューシングルである『見たこともない景色』が奏でられると、拳が一斉に掲げられた。ラスサビでは盛大なシンガロングも巻き起こり、会場のボルテージは追い風に煽られ上がり続ける。その後も荒げるような歌い方でロックを叫ぶ『風になってゆく』、音の波にゆらりと身を任せる『いいんだよ、きっと』と続く。

 Martin D-35で音を編んだのは、ノスタルジックな空気が漂う『つもる話』だ。フォーキーなサウンドは普遍的な美しさを纏い、普通っぽいのに凛とした佇まいの菅田によく馴染む。かつて彼は「本気で戦ってる人は、しゃべらなくても“さま”でわかる」と発言していたが、まさしく“それ”だ。丁寧に楽曲と向き合い全力で楽しんでいることが、ミュージシャン菅田将暉の“さま”にはよく表れている。俳優業の片手間ではなく命を賭して音楽をしているからこそ、彼が音楽をするさまは精悍で見る者を惹きつけるのだ。

 内包した熱を『7.1oz』でさらに煮詰め、とどまらぬ勢いを『スプリンター』でさらに加速。『TONE BENDER LOVE』では、“I LOVE YOUって言って”とコール&レスポンスが巻き起こり、ピースフルな空気が会場を抱きしめた。舞台上で無邪気に振る舞う菅田の姿が、観客の“ライブを楽しむ”という概念を解き放したのだろう。手を掲げたっていい、口ずさんでもいい、なんとなく音に揺れたっていい。各々で自由に音楽を楽しむ空間が作りあげられていった。全力で『ドラス』をかき鳴らし、ライブはいよいよラストへ向かう。

 トリの1曲となったのは、『さよならエレジー』だ。菅田将暉という人は、大切な人が絡むと一段とすごいパワーを発揮する人物だが、この曲もそれを象徴するナンバー。盟友・山崎賢人との日々を想うように、伝えたい思いを人々の心に刻むように、楽曲を色濃く描きあげる。この日に関わる全ての人が自然と本気になってしまう大熱狂の一夜を作りあげ、菅田とKNEEKIDSはステージを後にした。

 アンコールにより呼び戻されると、菅田は俳優としての10年間を振り返る。10年は通過点でしかないこと、音楽の時間で自分を知れたこと、自分がついに父親役をやるようになったこと。そして、その全てを慈しむように『ベイビィ』を歌い上げた。足を組まず律儀に足台使うところは、なんとも彼らしく微笑ましい。草の葉から雫を一滴ずつ落とすように音を零す姿は、慎重でなおかつ優しかった。

 橙色の照明を一身に受け、披露したのはフジファブリック『茜色の夕日』のカバー。音楽により人生が動いたあの日をも思い出すかのように、言葉の一つひとつを大切に伝えきる。盛大なひとり言をつぶやくように『ゆらゆら』を歌いきり、多幸感で溢れるなかライブの幕を下ろしたのだった。

 バンドメンバーと音を重ね、無邪気にステージを駆け回る菅田将暉。その様は自由でありながら、誰かを思いやる愛に溢れていた。きっとこれからも最高の嘘(芝居)だけでなく、最高の真実(音楽)で魅了し続けてくれることだろう。たくさんの出会いにより“LOVE”を深めた彼が、次はどのように舵を切るのか今後が楽しみでならない。

取材・文:坂井彩花
ライブ撮影:上飯坂一
機材撮影:小野寺将也

※★の写真は9月6日のライブにて撮影されたものです。

《SET LIST》
  1. 1.ソフトビニールフィギア
  2. 2.ロングホープ・フィリア
  3. 3.クローバー
  4. 4.あいつとその子
  5. 5.りびんぐでっど
  6. 6.まちがいさがし
  7. 7.キスだけで
  8. 8.見たこともない景色
  9. 9.風になってゆく
  10. 10.いいんだよ、きっと
  11. 11.つもる話
  12. 12. 7.1oz
  13. 13.スプリンター
  14. 14.TONE BENDER LOVE
  15. 15.ドラス
  16. 16.さよならエレジー
  17. EN1.ベイビィ
  18. EN2.茜色の夕日(フジファブリックカバー)
  19. EN3.ゆらゆら
菅田将暉

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