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華やかなCiONには、ジャズの衣装(スタイル)がとてもお似合いだ。
「ゴージャス・ラグジュアリー・ロイヤル、3拍子揃った景気の良いアイドル」をキャッチフレーズに活動中の CiON(シーオン)。 メンバーは、栞音(Vo)・愛佳(Vo)・佳子(Sax)・聖奈(Euph&B.Tp)・杏実(Pf)の5人。2人のヴォーカリストと、管楽器を軸に据えた3人の演奏陣が織りなす、アイドル性も抱いたその華やかなライブパフォーマンスから、「(ブラス×アイドル=)ブラドル」とも呼ばれている。
このたび、CiONがCOTTON CLUBを舞台に「CiON 1man LIVE at COTTON CLUB “JAZZ SESCiON vol.3”」を6月9日と10日の2日間にかけて3公演行った。その中から10日のDAY2公演の模様をピックアップ。サポートミュージシャンに、橋本孝太(G)、HIDEYAN(B)、田中匠郎(Ds)、柏原康介(Tb)、大泊久栄(Tp)、西崎ゴウシ(音楽監修)が参加。ゲストに、米澤美玖(Tenor Sax)、寺地美穂(Alto Sax)、中園亜美(Soprano Sax)を迎えて行った公演の模様をここにお伝えしたい。
ステージの上にスタンバイした演奏陣が、心地好くスウィングするビートを刻みだす。軽やかなその音色へ誘われるように、CiONの聖奈(Euph&B.Tp)と杏実(Pf)が、フロアを通り、ステージに登場。各々が、スタンバイしたところで、杏実が演奏陣を見渡して合図を送る。そして…。

杏実の奏でるピアノが、チャイムのような優しい音色を弾むように鳴らしだす。フロア中に響き渡った気持ち弾むイントロのメロディーは、ジャズの名スタンダード曲『A列車で行こう(Take the ‘A’ Train)』だ。杏実の音へ誘われるように、大きなユーフォニアムを抱えた聖奈が、低音の利いた、でも心地好くまろやかな音色を通して、軽やかに走るようにお馴染みのメロディーを吹く。軽快に回る滑車のような演奏陣が奏でるビートに合わせて、2人は心を揺らす旋律を次々と奏で、COTTON CLUBという列車に乗り込んだ満員の観客たちを、これから始まる胸弾む素敵な物語へ連れ出した。椅子に座っているのがもどかしいくらい、身体が疼きだす。今宵の旅の道すがら、どんな景色を味わえるのか、早くも期待に胸が踊りだした。

軽やかなドラムロールを合図に始まったステージ上のメンバーたちの演奏に誘われ、まずは佳子(Sax)がステージへ。彼女もスウィングした演奏陣の仲間へ加わり、テナーサックスの音色を奏でだす。その華やかな宴のような演奏に誘われ、今度は栞音(Vo)と愛佳(Vo)がステージへ。一人一人の姿を見るたびに、衣装の華やかさに目を惹かれていたが、5人揃ったその姿は、満開の桜以上に愛でたくなる華やかさだ。そして…。
楽器陣が息を一つに重ね、風を切って駆けだすようにクールでスリリングな演奏を奏でだす。夜の帳を降ろすように、この空間を妖艶な世界に彩ったのが『月逢夜』。艶めいた大人の女性らしい香りを振りまきながら、見ている人たちを誘いかけるように力強く歌う栞音と愛佳の姿に視線と心が引き寄せられる。曲が進むにつれ、次第に艶めきを増す演奏。その音の上で2人の歌い手が、心を惑わすように迫る。終盤には、華やかな夜の宴の様が広がっていた。夜の音色が深みを増すごとに、心が騒ぐのも嬉しい。

栞音と愛佳の甘い誘いへ導かれるように、管楽器隊の吹く音が華やかに鳴り響く。CiONは『しましょ』を通して、さらに夜の香りへ艶めきを与えてきた。2人の歌い手が、まるで言葉を交わすよう交互に歌う姿も印象的だ。曲が進むごとに、この場が情熱的に彩られる。恋にときめく感情を、強気に、情熱的に歌う2人の声を、楽器陣が背中を押すように力強く演奏。間奏では、聖奈と佳子がスウィングしたソロプレイを見せ、その演奏を合図に始まった後半からは、華やかさと情熱が入り交じる様へとこの場が彩られてゆく。2人が「しましょしましょならしましょ」と歌うたびに、華やかな演奏の花が咲き誇るようにも感じていた。
MCでは、1年ぶり3回目のJAZZ SESCiON LIVEを開催できた喜びを語っていた。

栞音の歌声を合図に、愛佳がその思いを受け継ぐように歌いだす。そこへ、スリリングなホーンの音色が響き渡るのを合図に『等身大ガール』へ。とても、心を騒がせる楽曲だ。疾走しながらも跳ね続ける心地好い緊張感を持った演奏の上で、2人は次第に感情を露にしながら、力強く歌っていた。スタイリッシュながらも、挑発するようにも感じる刺激的な歌と演奏に触れて、気持ちが踊りだす。凛々しい歌声と躍動した音色の数々に、心がずっと嬉しくざわついていた。
楽器陣全員の音が一つになり、一気に爆発。演奏は、クールでスリリングな様と華やかでムーディーな空気を巧みに掛け合わせて進んでゆく。心地好い緩さと気持ちを引き締める緊張感が交錯すると言えば良いだろうか。スウィングしたジャジーな美しさとロックの持つ熱いエナジーが混じりあうような演奏を、彼女たちは『My yard』を通して見せていった。刺激的な歌や演奏の中に、胸踊るいろんなドラマを彼女たちは描きだす。だから、グラデーションを描くように、1曲の中で感情の色を巧みに変えてゆく歌と演奏に夢中になっていた。

愛佳が、言葉の一つ一つに揺れ動く心模様を映しながら、エモく、表情豊かに歌いあげる。そこへ、寄り添うように歌声を重ねる栞音。そのうえで「忘れて」と2人の歌声がハモったとき、胸がドキッとした。甘く妖艶な香りを抱いた『曖昧≠Libido』では、力強くもねっとり絡みつく愛佳と、甘く艶かしい栞音、それぞれの歌声の魅力をたっぷりと味わっていた。2人の歌声が、この曲をいろんな心の色に染め上げる。その歌声を妖しく彩るように、楽器陣も2人の声に音を寄り添える。胸の内に秘めたもどかしい恋心を、2人が語り部となって歌えば、その物語に、楽器陣がいろんな景色を彩り続ける。この曲を歌い演奏している間、乱れ、揺れ動く心の物語にどっぷりと浸り続けていた。

ここからは、ゲストプレイヤーを招いてのセッションコーナーへ。この回のゲストに呼び入れたのが、 現在は活動休止中のTHE JAZZ AVENGERSのメンバーでもある寺地美穂(A.Sax)・中園亜美(S.Sax)・米澤美玖(T.Sax)の3人。同じSAXプレイヤーの佳子は、セッション前から少し緊張気味!? ライブは、『Inst Session』という名のもと、4本のSAXの音色が一つに重なり、一気に走りだすのを合図にスタート。4管の作りだす絶妙なハーモニーが気持ちを激しく踊らせる。なんて華やかで、しかもゴージャスな音の饗宴だ。ときに顔を見合わせ、楽曲を色づけてゆく様に見惚れる。曲の途中には、何度かSAX同士のソロ回しが登場。中園亜美のソプラノが高く華やかに音を鳴らせば、寺地美穂のアルトが激しく嘶(いなな)くような音を響かせる。同じく米澤美玖もテナーの音を唸らせ、激しくスウィングしながら、観客たちの気持ちを熱く揺さぶっていた。そこへ佳子も肩を並べ、テナーの音を奮い立てながらも、彼女らしい華やかさを描き加えてゆく。途中には、佳子と中園亜美が演奏をハモらせる場面も登場。4人のSAX奏者を中心に据えた11人の楽器陣によるセッション演奏は、とにかく華やかで、華麗で、豪華で、刺激的。座って見ているのが本当にもどかしいくらいだった。


続く『Now or Never』の演奏には、栞音と愛佳も参加。スウィングするリズムの上で、この場を晴れた景色へ染め上げるように中園亜美のソプラノが高音域の音色を響かせて駆けだした。そのバトンを、アルトの寺地美穂、テナーの米澤美玖が受け継ぎながら巧みに色を変えつつ、最後に佳子へと演奏のバトンを手渡した。佳子も、3人に負けない勢いで攻めた演奏を繰り出す。一人一人の音色も強い存在感を放つが、4管の音色が一つに重なり合ったとき、そこにはオーケストラのような力強くも華やかな景色が浮かび上がる。栞音と愛佳の歌声へ4人のSAX隊が寄り添いながらも、ときには同等の立場で歌声と演奏を交わしあっていたこともこの曲の魅力だ。その様は、6つの主旋律を成す声や音色が絡み合っているようにも見えていた。ときにムーディーな面も見せれば、熱情した様も描くなど、やはりこの曲でも、4本のSAXの音色が様々なドラマを描きだす。中でも4人が、嘶くような勇ましいソロを次々と繰り出す様へ触れたときには、気持ちがずっと奮い立っていた。4管のSAXの音の饗宴は、ヤバすぎるくらい刺激的で、気持ちを激しくスウィングしていった。
跳ねたジャジーなビートに乗せて始まった後半戦は、『MagiC!on…』からスタート。軽やかに、しかも、身体をシェイクする心地好いビートに乗せて、2人の歌い手が色気たっぷりに攻めてきた。スウィングする演奏の上で、妖艶な歌声がこの場を彩る。ジャジーでムーディーなその香りに触れていると、身体が自然と揺れる。ジャズスタイルに彩った曲の数々は、どんな表情を見せようと、必ず心騒ぐ刺激を与えてゆく。


アップテンポのビートも印象的。続く『S;ckkkkk』では、低音域を生かしたスリリングでジャジーな演奏からスタート。パワフルに攻める楽器陣の音色の上で、2人の歌い手も凛々しい声の魅力で観客たちの感情を刺激してゆく。その中に、さりげなくピアノ、SAX、ユーフォニアムと続くソロ回しも加えつつ、彼女たちはこの空間を、気持ちを騒がせる情熱的な宴の場に塗り上げる。2人の歌声も、ずっと跳ねるようにはしゃいでいたのも印象的だった。
続いて演奏をした『微熱』は、音源化されてない、CiONのJAZZ SESCiON LIVEでのみ演奏してきた楽曲。ビッグバンド風に華やかにスウィングした演奏が時代をタイムスリップさせ、在りし日の賑わうJAZZ CLUBのムードを作りだす。栞音と愛佳は、昭和歌謡な香りも漂わせる歌声を、華やかに歌う演奏の上で踊らせていた。COTTON CLUBの持つ彩られた場の雰囲気に、とても似合う楽曲だ。巧みにソロ回しも入れながら、歌声や演奏がはしゃぐようにスウィングするたびに心が踊る。ときに、妖艶な香りを持つムーディーな雰囲気を作りあげ、2人の歌い手がうっとりと声を響かせれば、ふたたびきらびやかな宴の場を描くなど、気持ちを踊らせる素敵なドラマをCiONは描きだしていった。

最後もCiONは、この会場をクライマックスに相応しい華やかな宴の場に塗り上げようと『Last Order』を演奏。この曲でもメンバーたちは、1曲の中に色々な表情を目まぐるしく映し出す。演奏陣が音で会話すれば、2人の歌い手も凛々しい声を交わしあう。ときに、どっぷりとしたリズムに浸るディープな様も見せれば、華やかにスウィングもしてゆく。フロア中の人たちも、目まぐるしく表情を塗り替える演奏に、ときに手拍子を加えて参加。途中、演奏メンバーの紹介コーナーも登場。その後、杏実の跳ねたピアノの演奏を合図に、後半戦へ。こちらでも、ビートにゆったり酔いしれる妖しくムーディーなパフォーマンスを見せたかと思えば、愛佳のシャウトした歌声を合図に、この場を華やぐダンスホールへ一気に染め上げる。彼女たちの演奏に興奮し、力強く手拍子をする観客たちも加え、思いきり心をスウィングしながら、いつも以上に大人びた、でも、いつものように心を踊らせ、身体を揺さぶる華やかなライブ姿で、CiONは観客たちの現実を消し去り、ずっと気持ちを虜にしたライブを見せていった。

TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 1.A列車で行こう -Opening-
- 2.月逢夜
- 3.しましょ
- 4.等身大ガール
- 5.My yard
- 6.曖昧≠Libido
- 7.Inst Session Guest:寺地美穂、中園亜美、米澤美玖
- 8.Now or Never Guest:寺地美穂、中園亜美、米澤美玖
- 9.MagiC!on…
- 10.S;ckkkkk
- 11.微熱
- 12.Last Order
CiON
CiON ONE MAN LIVE『are you ready??』2025.8.16 at KT Zepp Yokohama

CiON ONE MAN LIVE『are you ready??』
会場:KT Zepp Yokohama
(〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい4-3-6)
open17:00 / start18:00
詳細:https://con-music.jp/3686/