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バイオリニストの牧山純子が、東京・丸の内にあるCOTTON CLUBで2部制のワンマンライブを開催。本稿では、夜に行なわれた2nd.showの模様をレポートする。
6月5日にリリースとなったニューアルバム『Classical Trio 2』の発売を記念した約1年4ヵ月ぶりのCOTTON CLUB公演は、自身のオリジナル曲『スロベニア組曲 風』からスタート。ビビッドなブルーのドレスを纏った牧山純子(Vn)が奏で始める荘厳なソロに、Classical Trioのメンバーである原田達也(P)と中林成爾(Vc)に加えて海沼正利(Perc&Dr)が、呼吸を合わせるようにそれぞれの音を寄り添わせていく。優雅で洗練された味わいも湛えつつ、徐々に熱を帯び出す4人のグルーヴがなんとも心地よい。
集まったいっぱいのオーディエンスが拍手喝采を送る中、COTTON CLUBに戻ってこられたことを報告し、この日の衣装については「大谷(翔平)くんが赤から青にユニフォームを変えたので、あやかろうと思いました」と笑顔で話す牧山。メンバー紹介とともに、Classical Trioの3人が同級生である点も改めて伝えられた。
「『Classical Trio 2』はみなさんが絶対に知っている曲を、絶対に聴いたことがないであろうアレンジで収録したアルバムです。その中から選りすぐった曲をお届けしていきたいと思ってます」という原田の言葉に続いては、モーツァルトのナンバーを2曲披露。
牧山が幼稚園のときに初めて人前で演奏した思い出の曲だという『きらきら星』では、子供にも馴染みのあるかわいらしいメロディと、新たに加えられたスウィングのリズムによって、場内が明るい雰囲気に包まれる。ピアノソナタの第3楽章『トルコ行進曲』では、海沼のトライバルなビートを中心に、ノリのいいラテンアレンジで4人が大いに躍動。バイオリンの情熱的な弾きっぷりも際立つ。
お次はラヴェルのバレエ曲『ボレロ』。スネアの軽打に乗せてゆったりと聴かせる序盤を経て、映画『ミッション:インポッシブル』、もといドラマ『スパイ大作戦』のテーマとなったあのインパクト抜群な5拍子を中林が差し込み、ジャズ変拍子の代表作『Take Five』の旋律までが奔放に重ねられると、一転して曲の印象はアッパーに。さらに、海沼のワイルドなパーカッションソロ投下で客席からは割れんばかりの大歓声が湧き、そのプレイに「何やってるかわかんないけどカッコいい!」という牧山の絶賛コメントも飛び出す。
ここからの3曲は、Classical Trioのメンバーのみで演奏。大切な人たちが旅立ってしまうことが多かったけれど、音楽を通して繋がっていたい。そんな近年の想いを映したオリジナルバラード『Bridging the Skies ~天空にかける橋~』では、ピアノの穏やかな伴奏、バイオリンの慈愛に満ちた調べ、チェロの奥ゆかしい響きが、三位一体となってしっとり溶け合う見事なハーモニーで、深い余韻と温かみを感じさせてくれる。
ブラームスの『ハンガリー舞曲 第5番』にも魅了された。曲調が再びガラッと変化し、原田のピアノが不穏なリフをオスティナートするスリリングなロックアレンジのもと、牧山のバイオリンが起伏に富んだフレーズを麗しく奏で、中林のチェロが低音部を揺るぎなく支える。フジコ・ヘミングの十八番としても知られるリストの『ラ・カンパネラ』(オリジナルはパガニーニ)になれば、同級生トリオのアンサンブルはますます冴えわたり、美しさと退廃、両立しないムードの双方が表情豊かに伝わってくるかのよう。
「ピアノ、チェロ、バイオリンの編成だと、やはりクラシック要素が強くなるんですけども、今回のアルバムはジャズのグルーヴ感、ドラム&パーカッションを録音に入れました。クラシックが再現音楽であるのに対し、ジャズは本当に自由です。演奏者によって違う息吹が込められたり、盛り上がってきたらテンポを速めにしたり、そういうのがすごく面白くて。しかも、1stと2nd.showでお客様が変わると、ステージの空気もぜんぜん違うんですよね。私たちはそれを糧にして、即興音楽をやっております。ラグジュアリーなCOTTON CLUBに、これだけのみなさんに集まっていただけたことがとても嬉しいです!」
Classical Trioというプロジェクトで得られるかけがえのない喜び、そしてあふれる感謝の気持ちを牧山がしみじみと語り、本編最後は今年で生誕150年となるホルストの『ジュピター』。海沼を入れた形態に戻し、爽やかなバイオリンの音色を軸に、この日ならではの交歓をめいっぱいアグレッシブに楽しんだほか、オーディエンスの手拍子や「ラララ♪」のシンガロングも華々しく味方につけ、4人は大盛況のうちにステージを降りたのだった。
アンコールはフルメンバーで、ヴィットリオ・モンティの『チャルダッシュ』。写真撮影OKというシチュエーションの中、牧山がスローでエレガントな展開から、BPMをグッと上げたハイパーな速弾きまで、自由なフィーリングで情感たっぷりに表現し、COTTON CLUBでのレコ発ライブは最高のエンディングを迎えた。クラシックとジャズの融合をさらに深めてみせたアルバム『Classical Trio 2』だが、ぜひ第3弾の制作も期待したい。
取材・文:田山雄士
PHOTO:松尾 淳一郎
《SET LIST》
- 1.スロベニア組曲 風/牧山純子
- 2.きらきら星/モーツァルト
- 3.トルコ行進曲/モーツァルト
- 4.ボレロ/ラヴェル
- 5.Bridging the Skies ~天空にかける橋~/牧山純子
- 6.ハンガリー舞曲 第5番/ブラームス
- 7.ラ・カンパネラ/リスト
- 8.ジュピター/ホルスト
- <ENCORE>
- EN1.チャルダッシュ/ヴィットリオ・モンティ
牧山純子
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「ジャズ×クラ融合 ここに極まる!!」
メンバー
Violin 牧山純子
Piano 原田達也
Cello 中林成爾
Drums,Percussion 岡本健太(M-2,3,4,7,9)
2024年6月5日発売
¥3,500~(税込)
HDI-80024/CD
HDI-50032/Hi-Res