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「あのときを取り返しにいこう」。SKE48の卒業時期には声出しNGの環境だったことから、本人にとっても大切な曲たちを声出しライブで再現しようと、ここからはSKE48ナンバーを立て続けに歌唱。

『愛してるとか、愛してたとか』が流れるやいなや、フロア中から野太い声が響き渡れば、熱い「奈和ちゃん」コールが飛び交う。クールでスリリングな楽曲の上で、影を持った声を魅力に古畑奈和は歌っていた。少し荒ぶる感情で思いをぶつけるように。でも、多彩な表情を見せながらも、甘えたスウィートヴォイスも大きな魅力になっていた。そのミステリアスでメロウな姿に魅了されつつ、終始フロア中から熱い声が飛び交っていた。

「騒げ」の煽りにあわせ、「Hey!」とフロア中から飛び交う熱い声。『FRUSTRATION』の登場にあわせ、フロア中の人たちが「アイシテルゼ」と叫べば、「躍れ」の声に「オラオラ」と熱い声をぶつけ、この空間を熱情一体化したロックな風の巻き起こる会場に染め上げていった。観客たちもみんなで何度も「飛べよ！」「オラオラ」と叫ぶなど、みんながいい感じでバカになりながら「騒げ！」と声を張り上げ、熱狂という温度を上げる一つ一つの熱源になっていた。

『アイシテラブル！』の登場に、フロア中から「アイ・ラブ・ユー」「アイ・シテ・ル」の声が飛び交えば、軽やかに、いや、熱を上げてはしゃぐ古畑奈和に向けて、フロア中から熱い口上が飛び交いだす。「熱くなれ！」の歌詞の一節ではないが、ここにいて熱くならずにいられない。「叫べ！」の煽り声を受け、「アイ・ラブ・ユー」「アイ・シテ・ル」と熱くなって叫びながら、この空間を、気持ちの上では巨大なアリーナ会場に生まれた一体感を持った景色に染め上げていった。

シンフォニックでハードロマンな表情を持った『MESSIAH』では、この場を現代から夢幻の都広がる空間へトリップ。凛々しく、ときに雄々しい声を張り上げ、この場を現実から切り離したファンタジックかつアグレッシブでエネルギッシュな空間へ塗り上げ、雄々しい声の飛び交う一体化した景色に染め上げた。まるでアニメのOP曲が似合いそう。それくらい、高ぶる熱を抑えられない楽曲だ。熱情した彼女の歌声は、魂を高揚へと導くドラマを描いていった。

「わたしのために会いにきてくれることがとても嬉しいので、もっと奈和ちゃんを補充したい人がいれば、また楽しんでいきましょう」。最後に古畑奈和は、自身も大切に育み続けてきたバラード調の『観覧車』をしっとりと歌唱。言葉のひと言ひと言を大切に紡ぐように歌う姿から、ずっと目を逸らしたくなかった。フロアにいる人たちも、ゆったりと身体や手にしたペンライトを揺らしながらも、心はずっと、遠くを見つめて歌う古畑奈和の姿に引き寄せられていた。 最後に語った「みんなのわたしを見つめる瞳がとっても大好きです。これからも、その瞳を独り占めさせてください」の言葉が、嬉しく瞼を濡らしてくれた。

アンコールで『本性』が流れた途端、フロア中から野太い声が飛び交いだす。舞台の上に姿を現した古畑奈和も、ときに声を唸らせ、観客たちを煽るように歌っていた。攻め入る姿に刺激を受けた観客たちも、負けずと声を張り上げる。互いに沸きたい感情を剥き出しながら、高ぶる気持ちをぶつけあう。そこで生まれる高揚した空気が、肌にとても心地よい。巧みに抜いた表情も織りまぜながら終始攻めに徹した姿で観客たちを凛々しく煽る様も、瞼に熱く焼きついた。

「この先のことは予想がつかないけど、こうやって定期的にみんなに「生きてるぜ」を伝えていきたいと思ってる。ステージに立っている限りは、みんなと楽しい時間をいっぱい過ごしていくから」と、最後に宣言した言葉も嬉しい。

最後の最後に古畑奈和は、彼女自身がファンたちのことを思って作詞し、この日のライブでも冒頭を飾った『Moonlight parade』をふたたび熱唱。フロア中から鳴り響く性急なクラップや熱いコールも楽曲に加え、古畑奈和は、観客たちを未来に広がる素敵な景色の中へ連れ出そうと声を張り上げていた。その声が熱い生を抱いている限り、その歌と共に歩み続けていきたい。そして、その先で明けてゆく景色へ一緒に消したくない色を塗り重ね、終わりの来ないドラマを何話も何話も重ね続けていきたい。

Photo：小野寺将也
TEXT：長澤智典

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