ちょっと前の自分だったらこんな強気にはなれへんかったけど、ここ2年でいろいろ心境の変化がありました。“このままじゃダメかも”“もっともっと強くなって、みんなを引っぱっていける人になりたい!”って。そう思えるようになったのは、やっぱり私が差し出した手をみんなが握り返してくれたからです

背景にあったこの強い意志が、竹内アンナのライブパフォーマンスをこれまでにも増して頼もしく、魅力的なものに昇華させていたのだと思う。

竹内アンナの全国ツアー「TOUR 2022 -TICKETS-」が、7月2日(土)の恵比寿LIQUIDROOMでファイナルを迎えた。

3月から開催されてきた2ndアルバム『TICKETS』のリリースツアー全16公演の最終日には、老若男女を問わず幅広い層のお客さんが詰めかけた。約1年前のLIQUIDROOMワンマンとは違って、フロアにパイプ椅子が並べられることはなく、今回は純粋なスタンディング形式。マスクこそまだ必要な状況とはいえ、座席のない環境に戻ったおかげで景色がずいぶんと変わって見える。

この日はバンドスタイルで臨んだ竹内アンナ(Vo&Gu)。Shu Inui(Gu)、森光奏太(Ba/Spice rhythm)、神田リョウ(Dr)、舩本泰斗(Key&Mnp)をサポートに従えた5人編成で登場すると、代表曲のひとつ『Love Your Love』からライブが始まった。清々しいサウンドの中、集まったオーディエンスに向けて早速“そんなあなたが僕は好きだ”と放たれる、肯定感たっぷりな最高のオープニングだ。

SUNKISSed GIRL』『GOOD FOR ME』と続くにつれて、Shuと舩本の華麗なソロフレーズ、森光のスラップ弾き、神田のしなやかなビートなど、メンバーが今までと大きく変わったバンドの演奏も耳を惹き、各プレイヤーのキャラクターがじわじわと見えてくる。何より、その中心でキレのあるラップやスウィンギーなアコギを交えて歌う竹内の泰然自若ぶりが素晴らしい。ライブの入り方が以前に比べてずいぶんと安定した印象で、熱くなりすぎずスロースターターでもない理想的なテンションを感じさせた。

ツアーファイナルです! 今日は恵比寿LIQUIDROOMに集まってくれたみんなといっしょに特別な時間を作っていけたらなと思ってます。私も揺れたり踊ったりするので、ぜひ好き勝手に踊っちゃってください!!

とびきりキュートな世界観を振りまいた夏のラブソング『ICE CREAM.』以降は、バンドのグルーヴがよりいっそう研ぎ澄まされていく。ワンマンライブのいいアクセントとして機能する『TOKYO NITE』では、心奪われるアーバンメロウな曲調に加え、ラップ部分で入る思いがけないブレイクにドキッとさせられたり。“CRAZY 上等でしょう”と怒りの感情さえもストレートに歌った『我愛me』では、いよいよアルバム『TICKETS』で発揮した大胆不敵さがきりりと顕在化。そのまま『一世一遇Feeling』へと繋げば、自由なタイム感が冴えわたる彼女のボーカルとメンバー全員で重ねるコーラス、ソウル/ファンクの痛快なリズムも相まって、場内に広がる歓喜の渦はなお大きくなる。

めっちゃ暑ない!? 会場もそうですけど、来るときも暑かったやろ? こうやってしゃべってる最中とか、しっかり水分補給してくださいね。もし周りに体調が悪そうな人がいたら、助け合ってほしいなと思います」と観客を気遣う竹内。また、今年の夏にやりたいこととして「私はこれまでやったことがない一人旅に出たいです。昔の文豪さんがお宿に籠って執筆作業をしたみたいな感じで、パソコンとマイクだけを持って素敵なところに泊まって制作をしたい」と話す時間も。

そんな和気あいあいとしたトークを挟み、「私は夏の夜がとても好きです。なんてことない瞬間も特別なものに変えてくれる魔法があるので」と届けられたのは、ライブ当日にリリースされたばかりの最新曲『泡沫SUMMER』。暗がりから心地よい暑さがふわっと匂い立つような、まさしくあの甘く儚い時間帯を思い出させるサマーチューンで、80年代のシティポップをベースにした歌いっぷりと懐かしいサウンドが愛おしくてたまらなかった。“あなたがいなくても世界は回る それでもいたいよ”という歌詞には、逆に今っぽいリアリティが見えて、この粋なバランス感覚が竹内アンナならでは!

新曲でさらにいいムードになったところで投下された『Now For Ever』も最高。なんとAFRO PARKERとコラボした原曲とは異なる超アッパーなライブアレンジに変わっていて、ハンドマイクでステージを動き回りながら自分以外のパートまでノリノリで歌いまくる竹内、そして彼女と同い年の森光が小気味よく合いの手を入れるなど、ロック色の強いアプローチにフロアからはいっぱいの拳が突き上がった。

RIDE ON WEEKEND』までを颯爽と駆け抜けたあとは、小休止するかのように照明が落ち着き、しっとりと聴かせる『いいよ。』へ。抑制の効いたアンサンブルの中で、ピンスポットが当たった竹内が“今日くらいいいんじゃない 頑張らなくたって”とやさしく歌いかける。その対話にも似た親密さ、余白に満ちたチル感、アコギの音色が沁みて、彼女とオーディエンスの距離がまたグッと近づく。

最っ高に楽しいです、ありがとう!」と充実の表情を浮かべた終盤のMCでは、今回の新作『TICKETS』について、リスナーをいろんな場所、時間に連れていきたいと願って仕上げたことを伝え、1stアルバム『MATOUSIC』(2020年3月発表)リリース以降の2年を「たくさん泣いたし、たくさん笑ったし、たくさん寄り道をしてしまったかもしれないけど、ちゃんと前に進んできました」と回想する。

その上で「誰かとどうしてもわかり合えないことは私にもあるんだけど、それが誰かの大切なものを否定する理由になっちゃいけないなと思っていて、日々のニュースとかを見ていてもそう感じます。わかり合えないことがあっても、私は私、あなたはあなたやし、それでいいやんって。“誰かに私の個性を決められてたまるか!”“私の幸せは私が選ぶんだ!”っていう強い気持ちがね、この2年を通してすごく出てきました」と、本稿の冒頭に書いた言葉とともに現在の心情を打ち明けた。

続く『TICKETS』を象徴するナンバー『手のひら重ねれば』で、竹内のそんな想いがまっすぐに表れる。“解かり合えないことがあっても 分け合うことはできるはずでしょう”と、広い視点を持つこと、相手の価値観を重んじることの大切さが歌われ、そのメッセージに導かれて息の合ったハンドクラップがあふれる美しい光景、“愛”と呼ぶにふさわしい一体感が生まれるさまは圧巻だった。この曲が新たな代表曲へと成長したことも、本ツアーの大きな収穫と言えよう。

温かい空間に酔いしれるうちに、気づけばライブはクライマックス。「心の中で歌って!」とフロアに呼びかけた『YOU+ME=』、ストロボの演出と合わせて竹内がますますファンキーに躍動した『Free! Free! Free!』、全員のテクニカルなソロ回しも炸裂してオーディエンスが手を左右に振って熱く応えた『I My Me Myself』と畳みかけ、本編ラストは聴き手を引き連れていくドライヴ感が光る『No no no (It’s about you)』。これまでの自分を更新するかのような、一段とアグレッシブで楽しいパフォーマンスを披露し、デビュー4年にして訪れている進化のほどを存分に窺わせてくれた。

1人で再登場したアンコールでは、新曲『泡沫SUMMER』のサビをあらためて聴かせたほか、映画『SING/シング:ネクストステージ』にウサギ役で歌唱出演したり、J-WAVE「TOKIO HOT 100」で『手のひら重ねれば』が2位に輝いたり、タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」のポスターに起用されたりと、アルバムのリリースやツアー以外にもいろいろあった濃厚な2022年の上半期を振り返った竹内。

そして、「まだまだ突っ走っていきたいと思いますので、下半期もついてきてください。今日はありがとうございました!」と力強く告げ、最後はデビュー曲『ALRIGHT』を、再び原点に立ち返るように自身の軸である歌とアコギで弾き語って、『TICKETS』ツアーを無事に完走した。

10月からは昨年に引き続き、重要文化財や現代建築、劇場などを回る『弾き語り TOUR 2022 atELIER -アトリエ-』も決定している。竹内アンナの音楽の旅はまだまだ終わらない。

Photo by Kazushi Hamano
取材・文:田山雄士

《SET LIST》
  1. 1. Love Your Love
  2. 2. SUNKISSed GIRL
  3. 3. GOOD FOR ME
  4. 4. ICE CREAM.
  5. 5. TOKYO NITE
  6. 6. 我愛me
  7. 7. 一世一遇Feeling
  8. 8. 泡沫SUMMER
  9. 9. Now For Ever with AFRO PARKER
  10. 10. RIDE ON WEEKEND
  11. 11. いいよ。
  12. 12. 手のひら重ねれば
  13. 13. YOU+ME=
  14. 14. Free! Free! Free!
  15. 15. I My Me Myself
  16. 16. No no no (It’s about you)
  17. EN. ALRIGHT

竹内アンナ 使用楽器・機材紹介

竹内アンナ

初のビルボードライブツアーが決定!

デビュー5周年を迎えた竹内アンナが自身初のビルボードライブツアーが決定!
東京、大阪、横浜の3ヵ所を巡るこのツアー、バックバンドはネオソウルやジャズをルーツとしたインターナショナルなグループ「パジャマで海なんかいかない」ことPAJAUMIが務めます。

<竹内アンナ Billboard Live Tour 2024>
2024/3/1(金) ビルボードライブ東京
2024/3/8(金) ビルボードライブ大阪
2024/3/20(水・祝) ビルボードライブ横浜

チケット情報等詳細はこちら
https://takeuchianna.com/news/#104709


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